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国々の 社の神に 幣奉り
国々の 社の神に 幣奉り あがこひすなむ 妹が愛しさ
(巻20-4391)
右の一首は、結城の郡の忍海部五百麻呂。※未詳。
あちこちの国の神の社に幣を捧げ、私を恋しがっているだろう、あの娘はなんと愛しいことか。
奇妙な歌である。
故郷で待つ彼女が、諸国の神社に幣を奉ることは、困難。
作者忍海部五百麻呂自身が、防人として歩む諸国の神社に幣を捧げ、勝手に「故郷の妻は自分を恋しがっている」と、無理やり思い込んだというのが、実態と思われる。
ほぼ、妄想に近いが、そうでもしないと、不安で仕方がなかったのかもしれない。
(防人の長い期間中に、寂しさのあまり、他の男に寝取られる、そのまま、なびいてしまうのは、大いにあり得るのだから)




