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潮船の 舳越そ白波 にはしくも
潮船の 舳越そ白波 にはしくも 負ふせたまほか 思はへなくに
(巻20-4389)
※にはしくも:突然に、いきなり。にわかに。
右の一首は、印波の郡の丈部直大麻呂。
※印波の郡:千葉県印旛郡、佐倉市、成田市一帯。
※丈部直大麻呂:伝未詳。
潮船に舳先に突然かかる白波と同じで、この防人の仕事を負う帝からの御命令も、実に思いがけない突然のことだったのです。
防人は徴発から出発まで、「およそ一両日」の期間しかなかった、と言う説がある。
説は説として、突然の徴発と出発らしいことは、他の防人歌からも、把握が可能。
いきなり徴発されて、生きて帰ることが出来るかできないか不明の旅。
防人の悲惨さ、当時の政治の非情さが、よくわかる歌である。




