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ふたほがみ 悪しけ人なり あたゆまひ
ふたほがみ 悪しけ人なり あたゆまひ 我がする時に 防人にさす
(巻20-4382)
※ふたほがみ:「ふたほ」は未詳の地名。「がみ」は、その地の長(村長)
※あたゆまひ:急病の意味。「あた」は緊急の意味。「ゆまひ」は病。
右の一首は、那須の郡の上丁大伴部広成。
※那須の郡:栃木県那須郡、大田原市、黒磯市一帯。
ふたほの村長は、悪い人で、大嫌いです。
よりによって私が急病で苦しんでいる時に、防人にするのだから。
出発時ではなく、難波津での歌とするべき。
(出発時に、こんな不満を漏らすことは、絶対に許されなかった。
別れの際に、泣き顔を見せることも厳禁。
しかし、こんな率直な歌は、残っただけでも、ありがたい。
どんな事情で残ったか、それは不明。
とにかく、急病状態で防人のされたのだから、その村長を悪人として、怨みたい。
こんな歌に出会うのも、万葉集の魅力と価値である。
この防人が、健康を取り戻したのか、そんなことまで気になって来る。




