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白波の 寄そる浜辺に 別れなば
白波の 寄そる浜辺に 別れなば いともすべなみ 八たび袖振る。
(巻20-4378)
右の一首は、足利の郡の上丁大舎人部禰麻呂。
※足利の郡:栃木県足利市東南部、佐野市。
※上丁大舎人部禰麻呂:伝未詳。
白浪が寄せる子の浜辺で別れてしまえば、もう、どうにもなりません。
ただ、何度も、いつまでも、袖を振るしかできないのです。
難波津での船出の歌。
彼が袖を振るのは、難波津の人々ではなく、心の中の故郷の人々。
船旅も怖いのかもしれないし、防人であるので。戦になれば戦死も考えられる。
それを思うと、最後の別れを意識するのも、無理はない。




