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春日野の山辺の道を
石川郎女の歌一首 即ち佐保大伴の大家なり
春日野の 山辺の道を 恐りなく 通ひし君が 見えぬころかも
(巻4-518)
石川郎女の歌一首 大伴安麻呂の妻、石川命婦。大家は婦人の尊称。
春日野の山辺の道を恐れることもなく、通ってこられた貴方が、近ごろはお見えになられません。
通い婚時代の男の心離れなのか、通ってこなくなってしまった。
通う相手が変わったのかのかもしれない。
それとも、体調に変化があったのか。
かつては、人里離れた怖ろしい山辺の道を通って来てくれたのに、と男離れの不安を詠う。
通い婚の時代、待つだけの女は、気苦労が絶えなかったのだと思う。