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水鳥の 立ちの急ぎに 父母に
水鳥の 立ちの急ぎに 父母に 物言ず来て 今ぞ悔しき
(巻20-4337)
右の一首は上丁有度牛麻呂。
※有度:静岡市(旧清水)
まるで水鳥が一斉に飛び立つような忙しさの中、お父様とお母様には、何も言わず(言えず)出発して来てしまいました。今となっては、それが悔しくて仕方がありません。
防人への徴発は、いきなり言い渡されたらしい。
識者の見解では、「一両日」とある。
やはり、それでは、短過ぎる。
生きて帰れる保証もなく、愛しい父母と、突然別れをしなけらばならない。
「もし、これが自分の身に起こったら」と思うと、実に心に響く歌である。




