1277/1385
防人の悲別の心を追ひ痛みて作りし歌(2)
ますらをの 靫取り負ひて 出でて行けば 別れを惜しみ 嘆きけむ妻
(巻20-4332)
※靫取り負ひて:「靫」は矢を入れて背負う具。
鶏が鳴く 東男の 妻別れ 悲しくありけむ 年の緒長み
(巻20-4333)
※鶏が鳴く:東、東国にかかる枕詞。
右は、二月の八日。兵部少輔大伴宿祢家持。
靫を背負って門出をした時には、その別れを惜しみ、彼の愛しい妻は嘆いたことと思う。
東国の若者は、その愛する妻との別れを、どれほど悲しく思ったことでしょうか、離れている年月が本当に長いので。
大伴家持が、防人の辛い気持ちに感じて、詠んだ歌である。
白村江の戦いに負け、当時の政権は、主に東国から筑紫方面に防人を派遣した。
防人に選ばれたら、拒否は絞首刑。
父母や愛する妻と別れ、移動日数とは別に、最低3年間の勤務。
生きて帰って来る保障など、何もない。
出発時の別れが、今生の別れもありうる。
さぞかし寂しくて辛かったであろうと、大伴家持も気持ちを動かされたのだろう。




