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衣手の別る今夜ゆ
衣手の 別る今夜ゆ 妹も我も いたく恋ひむな 逢ふよしをなみ
(巻4-508)
私たちの衣の袖がふれあうこともなくなる今夜からは、貴方も私も、心を痛めてお互いを恋することになるでしょう。
逢う手段がなくなってしまうのですから。
別れる理由は、明確ではない。
想像するに、長期の地方赴任の辞令でも賜ったのではないだろうか。
そうなると、辞令に抗することは難しく、今後いつ逢えるかなどは不明。
連れて行くことも、なかなか簡単ではない時代だったようで、遠隔恋愛となる。
遠隔恋愛の、寂しさと、不安は、恋心をいっそう、苦しく、そして強くさせる。




