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天平二十年の春三月二十二日、左大臣橘家の使者、造酒司令史田辺福麻呂~(2)
奈呉の海に 潮のはや干ば あさりしに 出でむと鶴は 今そ鳴くなる
(巻18-4034)
ほととぎす いとふ暇なし あやめ草 かづらにせむ日 こゆ鳴きわたれ
(巻18-4035)
奈呉の海では、潮が引いたら、すぐに餌をあさろうと、鶴が今、しきりに鳴いています。
ホトトギスは、いつ飛んできても、嫌がることはないけれど、あやめ草をかずらに付ける日だけは、忘れずにここを鳴き渡って欲しい。
この二首も、田辺福麻呂の歌。
鳴き渡る鶴は、華やかである(都から来た田辺福麻呂が、越中の土地褒めにした)けれど、望郷をそそる情景でもあるので、都を遠く離れている家持への思いやりも込めている。
また、二首目は、(巻10-1955)と同じ。題詞にも書かれた「古歌を詠う」に該当する。ホトトギス好きの家持への配慮である。




