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万葉恋歌  作者: 舞夢
1209/1385

(家持)更に贈りし歌一首 短歌を併せたり(1)

含弘の徳は、恩を蓬軆に垂れ、不貲の思は、陋心に報へ慰む。

来春を戴荷し、喩ふるに堪ることなし。

但、稚き時に遊藝の庭に渉らざりしを以ちて、横翰の藻は、おのづから彫蟲に乏し。幼き年にいまだ山柿の門に逕らずして、裁謌の趣は、詞を聚林に失ふ。

爰に藤を以ちて錦に續ぐ言を辱くして、更に石を将ちて瓊に間ふる詠を題す。

因より是俗愚をして懐癖にして、黙已をるを能はず。

よりて數行を捧げて、式ちて嗤咲に酬ふ。その詞に曰はく、 


※含弘の徳:万物を包含する広大無辺な徳。

※蓬軆:ヨモギ(雑草)のような、面白くもなんともない身。

※不貲:元々は、漢の時代に微罪の罰金として払った金。ここでは数える、計るの意味になる。

※来春を戴荷し:「来春」は寄せられた恩顧。「戴荷」は重荷を負わされること。

※横翰の藻:筆を思い通りに操る。藻は、文章の譬え。

※彫蟲:「彫蟲」は、虫が葉などを彫り刻むこと、繊細な技巧の意味。

※山柿の門:「山」は山部赤人。「柿」は柿本人麻呂。


貴方様は、その広大な御恩徳を、ヨモギのような賤しい私の身にお与えになり、その測り知れないお気持ちを、賤しい私の心にお応えになり、慰められました。

そのような御心寄せをいただき、私のこの喜びの気持ちは、喩えようがないほどであります。

ただ、私は若い時に詩文の道を、深く学ばなかったので、織りなした文については、自然と技巧に欠けているのです。

幼い時に先人山柿の門に関わることもなく、詠んだ詩歌についても、言葉の選び方も適切ではありません。

さて今、貴方の「藤を以ちて錦に續ぐ」と云う言葉を頂戴して、またしても、そこらの石をもって宝石に交えて貫くかのような歌を作りました。

元より、私は俗に染まった愚かな人であるので、持ち前の我流の癖があり、黙っていることが出来ません。

そこで数行の歌を差し上げて、お笑いぐさではありますが、貴方のお便りに応えます。

その詞に云うには、

※次の詩が長歌なので、今回はここまでの訳とします。


大伴家持は、大伴池主の文に応え、漢文調の題詞を作った。

作った日は3月3日。

病気がほぼ快復したのか、苦しんでいた時より、強めの文になっている。

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