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ま幸くと 言ひてしものを 白雲に
ま幸くと 言ひてしものを 白雲に 立ちなびくとは 聞けば悲しも
(巻17-3958)
かからむと かねて知りせば 越の海の 荒磯の波も 見せましものを
(巻17-3959)
右は、天平十八年の九月二十五日に、越中守大伴宿祢家持の、遥かに弟の喪せしことを聞きて感傷して作りしものなり。
元気でいて欲しいと、言っておいたにも関わらず、白雲となってたなびいている、そんなことを聞くことになろうとは、実に悲しいことだ。
こんなことになると、前々からわかっていたならば、越の海の荒磯を見せてあげたのに。
大伴家持がその弟書持の死を、手紙により知り、詠んだ挽歌になる。
特に二首目、こんなことになるのを前々からわかっていたなら、任地の越中まで連れて来て、大きな海を見せたかった。
奈良には海がないので、その珍しい風景を、喜んだはずと思ったようだ。




