103/1385
山辺赤人勝鹿の真間の娘子の墓にたたずむ。(2)
我も見つ 人にも告げむ 葛飾の 真間の手児名が 奥つ城処
(巻3-432)
葛飾の 真間の入江に うちなびく 玉藻刈りけむ 手児名し 思ほゆ
(巻3-433)
私も確かに訪れた 他の人にも教えよう 葛飾の真間の手児名の御墓を
葛飾の真間の入江で、なびいている玉藻を刈ったという、手児名のことが心に浮かぶ。
真間の手児名の伝説を歌った長歌の反歌。
多くの男に求婚されて苦しみ、入水自殺を遂げた悲劇の乙女の、ありし日の姿を清らかに詠んでいる。
玉藻を刈っている時の手児名は、まさかここで自殺すると思っていたのだろうか。
そんなことは、思いたくもないし、知るすべもない。
しかし、波間に漂う玉藻と、溺死して浮かび、漂う女性の美しい黒髪。
時に、不吉な印象の重なり合いがある、そんな思いを抱いてしまう。