洗礼
馬車の中で、テルフェトとソプレアがレヴィトに甘えていると、外から
「3人とも仲良くしているのはいいけど、馬車の中では大人しくしないといけないわよ?」
と女の人の声がした。その後弱々しい声で
「セルフォアの言う通りだぞ、父さんはお前たちが馬車を揺らすせいで酔いそうになっているんだ。」
「五大英雄が一人テルフェラウスが馬車で酔うなんて、面白いわねぇ、あっははは!」
鈴のような笑い声が響く。
「母様、私ね、おっきくなったらヴィン兄に加護をあげれるくらいすごい妖精になる!」
「ぼっ僕も、ヴィン兄に加護をあげられるくらい力を使えるようになりたい。」
セルフォアが
「そうね、しっかり扱えるように頑張るのよ。レヴィトも、その加護をちゃんと考えて使えるように勉強を頑張るのよ。」
と言った。幼い3人は、元気よく返事をした。
しばらくして馬車の外からテルフェラウスが
「ついたぞ、精霊堂だ。」
と言った。
3人が馬車の中から外を見ると、白く力強い、教会のような建物がどっしりと立っていた。
ドアが開き、ソプレアのような綺麗な金色の髪をし、レヴィトのように薄紫の瞳をした女性が
「早く行きましょう、レヴィトに誰が加護を与えるのかしらね。」
と言った。
「母様はヴィン兄に加護をあげないの?」
「そうねぇ、私は雪国に住む人間に加護をたくさんあげてしまったからレヴィトにあげる分の余裕がないのよ。」
と悲しそうに女性、セルフォアが言った。
「でも俺の息子なら、どんな奴にも好かれるから大丈夫だ。」
と先ほどより体調が良くなったテルフェラウスが言うとレヴィトはこわばっていた顔を少し緩めて笑顔で
「ありがとう、父さん。」
と呟いた。
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精霊堂の中に入るとセルフォアが一つの像を指差して
「この像はね、お父さんの、あなたたちのおじいちゃんの像なのよ。ここで問題、おじいちゃんの名前とおじいちゃんの持っていた力はなんでしょう?」
ソプレアが手を上げて、
「はいっ!おじいちゃんの名前はテュレルアで、水の力を持っていました!」
と言った。セルフォアは
「正解よ。おじいちゃんは悪魔の封印を見守るために妖精の国にいるのよ。」
「妖精の国に名前はないの?」
とテルフェトがセルフォアに聞く。セルフォアは少し考えた後、
「妖精の国に名前はないわ、多分ね。あったとしてもすぐに時が経って忘れちゃうから。」
と答えた。
「国の名前を忘れることがあるの?」
「妖精は、国の名前を人間ほど使う機会がないからね。そのうち3人もわかるようになってくるわ。」
セルフォアが遠くを見るような目で3人をみて言った。テルフェトとソプレアは何を言っているのかがわからないと言った顔をしていた。
後ろから来ていたテルフェラウスが
「テルアとソアーには少し難しいことだな。」
「そうね、ほらほらっ早く祭壇に行きましょう。」
しばらく歩くと、白い木のドアが現れた。そのドアの前に、白に青のメッシュの髪をした女の人が立っていた。
女の人は5人に気がつくと深くお辞儀をしてから
「私の名前は、ファリエット・メルアと申します。レヴィト様の洗礼の儀式の祭司を手伝わせていただきます。」
と言った。テルフェラウスは
「あぁ、よろしく頼む。テルア、ソアー、ここからはセルフォアとレヴィトしか入れないから、あそこの椅子で待っていよう。」
と椅子を指さして言った。
「どうしてヴィン兄と一緒にいっちゃダメなの?」
とソプレアが言うと、
「それはな、儀式の時、部屋の中いっぱいに妖精たちの力が溢れるんだ。そんな部屋の中で、お前たち2人が他の妖精の強い力に当てられて力が暴走しないようにするためなんだ。」
「私は小さい頃から他の妖精の力が周りに立ちこもっていたから大丈夫だけど、2人は妖精の世界で過ごしたことがないでしょう?」
「僕たちはヴィン兄の洗礼をちゃんとそばで見ていたいんです。母様、父様ダメですか?」
テルフェトがテルフェラウスの目を見て言うがテルフェラウスは首を振った。
「お話し中にすみません。そろそろ行きましょう。」
とファリエットが申し訳なさそうな顔をして言った。
「テルア、ソアー、大丈夫よ。母さんがレヴィトをちゃんと守るから。」
「2人ともちゃんと父様の言うことを聞いて待っているんだよ?」
レヴィトはそう言った。
ファリエットが
「では、行きましょう。」
と言って木のドアの方に歩いて行った。
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ドアの先を歩いていくと、少し肌寒く輝くような光が満ち溢れる空間が現れた。
ファリエットが
「レヴィト様、ここにお立ちください。」
と部屋の真ん中にレヴィトを手招きした。
「セルフォア様はお好きなようにしてもらって大丈夫ですが、洗礼中はレヴィト様の近くにできるだけ近づかないようお願いします。」
「えぇ、わかったわ。ヴィン、大丈夫よ力を抜いてね。」
レヴィトは大きく深呼吸をして
「ありがとう、母様。ファリエットさん、よろしくお願いします。」
と言った。その言葉を聞いてファリエットは
「それでは洗礼を始めます。」
と高々と言った。
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