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44 ホモと言う

じゃ、野営の準備しようか。ユウナギはオークの死体出して。ダータイトは【解体】持ってたよね?(さば)いといて」


現在二十階層手前。ここで扉が開くのを待っている。


なぜ扉が閉まっているのか?それは誰かが二十回層ボスと戦っているからだそうだ。挑戦者がボス部屋に入ると、増援を防ぐために扉が閉まるらしい。それが開くのは挑戦者が勝ってボスが再生するか、挑戦者が死んでボスの体力が回復してから。


要するに当分開かないという事だ。なので野営の準備。


因みに八層に出現したオークは【異空間収納】でしまっている。オーク肉は癖が強いが不味いというわけではなく、寧ろ美味しい。エイリャ達の食糧が尽きてからは、みんなでこれを食べている。


決して俺が食料を分けてもらったからすぐになくなったのではない。俺は自らすすんで毒肉を食ってたんだ。バカだと言われてもいいが責められるようなことはしていないと断言する。


異空間より、出したオークの死体をダーさんが剣で捌いていく。そして捌いた肉を【炎刃】を使って焼いて行く。


【解体】【炎刃】どっちも便利。


「ダーさん、血が足りないから吸わせて」

「オークの血でも吸ってろ」


やはりだめですか。どっちでも、劣化でもいいから欲しかったのに。いや、諦めないし。


「新鮮なのがいいんだよ。それに目の前に餌があるのに我慢できないよ」

「俺、餌!?」

「凪、私なら良いよ」

「パル、貧血には気をつけないとだめだよ」

「まるで俺なら貧血になっていいと言っているように聞こえるんだが!?」


悪魔吸血(デビルバンプ)】でなんとか・・・。あ、ダーさんが怪我した時にこっそり【血液支配】の【操作】で吸えばいいんじゃん。


「だいたい、吸血鬼って言うのは女の血を好むんじゃないのかよ」


ダーさんはそう言うが、俺はスキル目当てだからな。他の奴はそうなんじゃない?


そんなこと言わないが。


「フッ、俺は他の吸血鬼とは違うのだよ」

「別の言い方をすればホモと言う事よね」

「そうとも言う」

「「「そうなの!?」」」


いや、冗談に決まってんじゃん。だからねそんなひかないでよ。パルは「だから私には・・・」とか言ってるし、ダーさんなんかは顔真っ青にしてすぐ俺から距離とるし。エイリャは目を少し輝かせてるんですけど。お願いだから違うと言って欲しい。


〈条件を満たしました。称号【恐怖の象徴】を獲得しました〉


〈称号【恐怖の象徴】の効果により、スキル【威圧】を獲得しました〉


ちょっと待て、いくらなんでも怖がり過ぎだと思う。





あれからダーさんとかの誤解を解くのに苦労した。誰だよあんなこと言ったやつ。あ、俺ですね。だが俺は反省はするが後悔はしない。ついでに言えば反省したとしてもすぐ忘れる。何時間かしたら忘れるだろう。


あ、お肉美味しい。


あれ?何の話してたっけ?まあいいか。それよりお肉~お肉~。


・・・エイリャ達と別れた後火も使えない俺はどうすればいいのだろう。生か。嫌だな。


最悪血を吸えばそれでいいだろうけど、ニ十層から先って他の冒険者も居そう。ばれるのは不味いと思うんだよね。


それにソラやパルもいくら腹を壊さないとはいえ、生ばかり食べさせるのは良くないよな。


特にソラは初めて会った時から美食家だったし。・・・いや、毒魔物の生でも美味しいって言っていたから雑食なのかも。


さっさと四十層まで攻略しないとな。四十層のボスってCランクだったはず。


でも、だとしたらんでまだクリアされてないんだ?


B、A、Sの冒険者だっているだろうに。


「このダンジョンって本当にまだ32層までしかクリアされてないのか?」


雑談をしていた二人が俺の突拍子もない疑問にこちらを向く。


「そうだが?」

「でも四十層のボスってCランクだろ?だったら三十層代にいるのは最高でDランクまで。BやA、Sランクからしたら雑魚なんじゃないのか?」


何でまだ三十層なんだ?と問うと意外なほどシンプルな回答が返ってきた。


「迷路が難しいんだと」

「「は?」」


俺とパルの声が重なる。


因みにソラはオーク肉に夢中だ。生のときよりいい喰いっぷり。やはり調理は必須か。


それはともかく、迷路が難しい?そんなん何日もあれば直に正しい道まで辿りつけるだろ。それでだめなら数のゴリ押しと言う方法もあるし。


「私たちはもともと二十層のクリアを目指していたから三十層代の事は分からないよ。噂だけ」


数でのゴリ押しができない理由は教えてもらえた。Aランクは英雄と言われても差し支えないレベルの人達の事で、そんな人たちをダンジョンで遊ばせている余裕が無いから。だからほとんどBランクくらいしかいない。


更にこのダンジョンは毒属性が出てくる。解毒には普通解毒用の治癒薬(ポーション)を使う必要があり、一回一回攻撃くらうたびに使わないといけないから必要な資金も増える。


そんなダンジョンに行きたいと思う奴があまりいないというのが一番それっぽい。


その後は時間交代で見張り役をして寝た。





~エイリャ・アルファス目線~


扉が開く、ギ、ギギィィィという音で目が覚める。


太陽がないため朝か昼か、それとも夜か分からないが昨日の疲労があまり感じ取れないからよく寝ただろうことだけわかる。


私の当番の時、なぜかFランク以下の魔物が姿お見せなかったし、Eランクの魔物もこちらを警戒して襲ってこなかったため思ったより安心していたようだ。


起き上がると最後の当番だったダータイトが見張りをしていて目が合う。


「おはよう」

「朝か知らんけどな」


そんなことわかっているが起きたら言いたくなるじゃないか。


「がんばれよ」


不意にそんなことを言ってくる。今日私は自分と同ランクの魔物と戦う。その事だろう。一人で戦うと言ったのだが私が死にそうになったら助けに来る気だろうに。


それはこの前会ったユウナギも同じだろうが。


「なあ」

「ん?」

「すべて終わったら話がある」


何だろうか。


「べつにいいけど?」


私はそう答えて、まだ寝ているユウナギを起こす。そして支度を整える。


階段前に移動して深く深呼吸すると、自然と落ち着いてきた。


私は死んでも悔いのないように頑張る。それだけ。どうせ生き残っても倒さない限り奴隷だ。せめて死に際くらい華々しく散ってやろうじゃないか。


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