45 【鑑定】の劣化スキル
ヤバイ。もう少しでヤツが来る!テストが来る―!!
気まずい。
扉の開く音起きた良いけど、その後すぐ起き上がらなかったからエイリャとダーさんが話し始めた。まあ、それはいい。だがダーさんがエイリャに気があるのを俺は知っているはけで。ぶっちゃけ二人だけの雰囲気を壊すのはためらわれるというかなんというか。
パルも先程起きたのだが俺と同じく出て行きずらそうな顔をしている。ソラは爆睡しているが。
だがずっとこうしているわけにもいかないのでやはりそろそろ起きたほうがーー。
「すべて終わったら話がある」
「別に良いけど」
ハイ、余計出ずらくなったー。
いや、別に告白してるわけじゃないから出ようと思えばできるんだけどさ。なんか気分的に・・・。
勘でしかないけどさ、まさかプロポーズする気じゃないよね?獣人と人族、奴隷と一般人での恋愛がダメとは言わないけど。むしろ有りって言うか応援するのも惜しまないんだけどさ。
・・・それって死亡フラグなんじゃない?え、何ダーさん夢かなえずに死んじゃうの?しかも今から行く二十層攻略するのエイリャだよ。最悪エイリャ死んじゃうよ。
〈技量が一定に達しました。スキル【思考加速】を獲得しました〉
おぉ、新しいスキルだ。しかも劣化じゃない。十層以来じゃない?
便利そうなスキルだけど今試してる場合じゃないんだゴメン。エイリャが起こしに来たから。
どのタイミングで起きようかと思っていたから嬉しいです。
肩を揺らされ、今起きましたよという風を装うためあくびをする。ついでにパルを起こす振りもする。
パルはエイリャに起こされなかったので何もしてないのに起きるのも不自然と思ったためだ。
いつものエイリャならパルも起こすんだけどな。見えないソラはともかく。もしかしたらボス戦の前の緊張で視野が狭くなっているのかもしれない。さりげなくフォローとか俺にできるかな。
それからエイリャ達の支度が整うのを待つ。
「じゃ、これダータイト持ってて」
「え?」
そう言ってエイリャがダーさんに渡したのは杖だった。魔法使いのエイリャが主武器の杖を渡したのだ。
そんな情けない声をあげても仕方ないだろう。だがダーさんにとってそうではないらしい。
「どうした?」
「杖使わないのかって驚いたんだ」
「いや、つかうよ?ほら」
そう言ってエイリャが出したのはもともと使っていた杖の三分の一くらいの長さの棒。日本の有名な魔法系ドラマに出て来た魔法使いが使っていた様な奴だ。この世界の魔法の媒体となる杖は、大きい方が魔法伝達率が大きい。勿論素材によっては伝達率は大きく変わるが、それは俺の目からしたらもともと使っていた杖と同じ素材に見える。
「こっちの方が動きやすいんだよ」
そうだろうけど。
「まさかお前、獣人が魔法だけで戦えるとでも思ってたのか?」
どうやら獣人というのは身体特化型の種族らしい。日本でもそんな風になっていたけどエイリャが魔法使っているのを見て獣人も魔法使えるんだと思ったのだ。魔法が使えるのは正しいが魔力が少なく、素質がある者でも同格以上の相手とはあまり使えないらしい。大体は小さな杖で補助するのに使うそうだ。
今までエイリャが大きい杖で魔法を使っていたのはダーさんという前衛職がいたから小さな補助より、大きな補助、攻撃の方がいいと思ったから。
階段を登りきると十層のときより若干広い半球型の空間が広がっている。
正面には二足歩行のトカゲ。日本で言うリザードマンみたいな。大方大紫トカゲが二段階進化した個体だろう。そして鱗は大紫トカゲと比べるまでもなく強靭だと分かる。十九層のアルマジロみたい。
あと、二十層には奇妙なものが存在した。
一つは冒険者の死体。おそらく俺たちの前にトカゲと戦っていた冒険者だろう。そう考えるのならばそれがあっても何ら不思議ではない。だがその死因が謎だ。首に受けた打撃による攻撃で死んでいることや、そこからしみ込んだ毒によって死んだことは分かる。
だが、トカゲの主武器はその爪にあるように見える。
爪なら打撃による死ではなく、斬撃による死のはずだ。冒険者の体には少なくない切り傷があるものの、それはどれも致命傷には至っていない。
毒死ならわかるが明らかに首を折られて死んでいるものは説明できない。
次に大紫トカゲの死体。それがいくつもある。あのリザードマンが大紫トカゲの進化系だと分かったのもこれがあることが大きい。が、それは今どうでもいい。問題は何で死んでいるかだ。
ボス層に他の魔物がいるという事は指揮系統の魔物という事だろう。ならその他の魔物はボスの戦力として考えられるため、そいつらも回復、又は復活するまで扉は開かないはずなのだ。
「【鑑定】期待してます」
と、少しの期待を込めて【鑑定】に依頼をする。取り敢えず情報が欲しい。と言っても残念な結果に終わるのだろうけど。
『あれはポイズンスケイルリザードですね。硬い鱗と鱗についている毒に注意する必要があ
るけど。魔法で攻撃すればマスターなら余裕をもって倒せるはずですよ』
「・・・」
『? マスター?』
「誰だよお前」
『え、あの使えない【鑑定】の劣化スキルの説明なの?今の』
『ねぇ、酷いこと言っているって気づこうよ。そろそろ。後、私は【鑑定】の進化スキルですぅ―!』
だってあの【鑑定】だぞ。使えないどころか面白くもないこと言うあの【鑑定】だぞ!?
『私だって学習するんですよ!?』
と、【鑑定】が言っている間にエイリャが向かってたので無視しとこう。まだなんか言ってるけどどうせすぐ諦めるし。
でも【鑑定】の言っていることが本当ならエイリャ倒せるのか?
と、考えたとき一瞬だが視界の端で何かが動いたような感覚。【空間把握】にでも引っかかったか?
そう思って見てみるがそこには何もなかった。




