26こんにちはそしてさようなら
「シャアァァァァ――!!」
毒蛇の咆哮が響く。
それと同時に弱毒蛇達が剣士に襲いかかった。
剣士はロングソードを振り、的確に弱毒蛇達を斬っていくが、小回りの利かないロングソードだと一度に相手できるのは二匹が限界。
に対して十匹程度で一斉に飛びかかった弱毒蛇は剣士が捌ききれなかった奴から足や腕に巻き付き捕縛。
さらにそこから【弱毒牙】による嚙みつき攻撃。
一つ一つは弱いし微量だが、それが体に蓄積されていけば手遅れにもなる。
【弱毒刃】よりも毒が回るのが早いのか剣士の動きがだんだん鈍くなってくる。
「【状態治癒】!」
魔法使いが魔法を発動する。
剣士の体が淡く輝く。すると動きにキレが戻り弱毒蛇を次々と屠る。
魔法名からして状態異常を回復させる魔法か。
てことは治癒属性ってことかな。
ダンジョンに潜るなら必須の属性だろうな。
じゃあシエラに治癒魔法どころか治癒薬すら持たされず、なおかつ毒のダンジョンというダメージを与え続ける属性のところに入れられた俺は?
死ねと?
毒蛇がまた咆哮を上げる。
すると今度は生きている弱毒蛇どもが魔法使いの方に狙いを定める。
咆哮をするたびに弱毒蛇の動きが変わる。咆哮で指令を与えているということだろう。
だとしたら毒蛇は相当頭が切れるのだろう。魔物にしてはだけど。
弱毒蛇が魔法使いのところに行ったため自由になった剣士が毒蛇にせまる。
弱毒蛇どもが魔法使いのところに行ったというのにその顔には心配の色など微塵もない。
魔法使いの事を心の底から信頼しているのだろう。
魔法使いが詠唱を始め、すぐに終える。
かなり早い。【詠唱短縮】でも持っているのだろうか。
「【衝撃風】!」
杖に風が集まり弱毒蛇たちに放たれる。
無色透明の風だったが【空間把握】とソラの補助のおかげで可視化する事が出来た。
集束された風は弱毒蛇たちが密集しているところに飛んで行き、爆散する。
範囲魔法なのかその周囲にいた弱毒蛇たちも巻き込まれ、一瞬で肉塊と化す。
やっべ。威力高っ。これの詠唱をあんな簡単に出来るなんてあの人凄すぎ。
確かにGランクだけどさ、あれを使ったら隠しステージのゴブリンどもすぐに片づけられるんじゃない?
俺が苦労したのをこうも簡単に出来る奴がいると思ったら悔しい。それだけの差があるのは事実だけど。
剣士の方は
「【炎刃】」
ゴゥと燃える炎ガ出現しロングソードを包み込む。
スキル名からして【毒刃】の火属性版だろう。
赤く輝く光がダンジョン内をほのかに照らす。【毒刃】なんかよりもずっと派手でかっこいい。
なにそれめっちゃ欲しいんだけど。
武器無いから使えんけど。
炎が出たとき一瞬だったが毒蛇が固まった。
動物は火を恐れるってこの世界でも有用なんだね。
その一瞬を剣士が見逃すわけがなく、毒蛇の前まで速攻で走り寄りロングソードを斜めに切りつける。
傷口から炎が燃え移り、毒蛇が断末魔のような叫びをあげる。
「ギシャァァァァァアアァァ!!」
これで終わりかと思われたが、毒蛇が置き土産とばかりに毒を吐く。
その毒は剣士に当たることはなく、ロングソードを一振りすと爆発に変わった。
どうやら可燃性の毒だったらしい。
爆発は毒をたどって毒蛇の顔面まで迫り、頭を吹き飛ばす。
ここまで届く爆風と、あたりに散らされる鮮血がその威力を物語っていた。
ヤバイってこいつら。絶対Cランクくらいいってるし。これでDとかFだったらSはどんな化け物だよ。
逃げよ。
「ソラ。無理。逃げよ」
「別に悪い事なんてしてないじゃない」
「馬鹿野郎。触らぬ神に祟りなしってことわざがあんだよ」
「意味わかんない」
そりゃそうだろうな。俺の世界の言葉だし。
「挨拶しに行こうとか言ってたじゃない」
「確かにそうだが、よく考えたらだめだった」
「はあ?」
その理由は俺の種族に関係する。
魔法使いはフードを被っているため分からないが、剣士の方は人間だ。ということは魔王側と敵対しているだろう。
魔王が吸血鬼だと知っているかもしれない。
帝都にいた時はさりげなくシエラが牙だけは見えないように精神魔法によって錯覚を起こしていたからバレなかった。
これはシエラは教えてくれなかったが、帝都に入ってからシエラを見て初めて気が付いた。
そのシエラがいない今見つかればどうなるか。
魔王の部下として殺されかねない。
というわけで抜き足差し足でゆっくり後退しましょ―――
ぎゅむっ
なんか踏んだ?
そこにいたのは
「シャァァー!」
弱毒蛇さんですか。こんにちはそしてさようなら。
ぐしゅっ
いちいち殴ったりするのも面倒なのでそのまま踏みつぶす。
中に入っていたであろう臓器たちが腹の形が変わったことによって収まりきらなくなり外に飛び出す。
グロいが見なかったら問題ない。
それより早く逃げ
「誰だ!?」
ですよねー。




