25 ドキドキするよな
三層も二、一層と同じく石の迷路だった。
上層までずっと石の迷路のような気もしてくる。
半径20メートルの中に魔物はいない。
だがこのダンジョンに入って初めて見るものもあった。
「なぎ!ぼうけんしゃがいる!」
ソラがはしゃぎながらそう言ってくる。
下層の中の下層の1ケタ代の層に冒険者なんかいないと思っていたが、俺みたいにダンジョンに潜ったばかりの人もいるよな。
【空間把握】で見えるのは二人。
一人はロングソードを肩にかけた男で、もう一人はローブを被った魔法使い風の女性。
「バランスの取れたパーティだな」
これならもう少し上の階層にいてもおかしくはないと思うがな。まぁ見た目でいえばだから実力のほどは知らんけどな。
「へー。そんな冒険者がいるのね」
毒の精霊が興味なさげにそう言う。
あれ、でもそれっておかしくない?
「嬉しくないのか?俺以外なら大抵契約してくれそうだけど。他の冒険者に契約してもらおうとか思っていなかったのか?」
「え?あぁ・・・そうね」
毒の精霊にしては歯切れの悪い返答だな。どんなことであってもスパスパ言いそうなのに。
「どうしたんだ?」
「・・・・・・。何でもないわ。それより!その冒険者のところに行くんでしょ。早くいかないと見失うかもよ?馬は馬らしく人様を運ぶことだけを考えて欲しいものだわ」
あ、戻った。
本当にどうしたんだこいつ。
まぁいいか。確かに早く行かないと見失うかもしれないな。
「なんかこうしているとドキドキするよな」
現在、冒険者を目視できる距離まで来ている。
そして壁に隠れて尾行中だ。
なぜこんな事をしているか?そんなん知らん。ただ何となくしたくなっただけだ。
顔は見せず、【空間把握】によって見ているため、バレたりするという失敗はしない。
〈技量が一定に達しました。スキル【隠密】を獲得しました〉
おぉ。この行動にも意味があった。
効果は多分敵に見つかりにくくなるとかだろう。
確認は面倒なので後から。
「なぎー。おなかすいたー」
ソラさんちょっと食い過ぎじゃありませんかね。
「なんで私達はこんなことしてるのよ」
ごもっとも。
「じゃそろそろ挨拶しに――――
「シャアァァァァ――!」
うわ!びっくりした。
冒険者二人組が魔物と遭遇したらしい。
冒険者のほうに集中しすぎて魔物が見えなくなっていたのか。
俺らは見つかっていないんで取り敢えず高みの見物でもしますかね。
「あれは?」
「毒蛇よ。ランクはF。あの冒険者達なら余裕で倒せるわ」
弱毒蛇より大きめの体の蛇。【空間把握】によってその大きさがよく分かる。
全長約二メートル。太さ約70センチ。
これでFランクかよって叫びたくなる。
ランク的には弱毒蛇より一つ上ってだけなのに比べると何倍もの大きさがある。
それだけではなく弱毒蛇が十匹ほど毒蛇の周りに群がっている。
集団行動をしているのはここまでで初めてである。
恐らく、【統率】とかそんな感じのスキルでも持っているのだろう。
隠しステージ?あんなんノーカンですよ。あそこにたどり着いたの俺だけでしょ。
それを考えると今の状況は俺よりも楽じゃないか?ランク高い奴いるけど数少ないし。
「でも可笑しいわね。普通三層にはFランクなんていないんだけど・・・」
あ。こいつもホブと同じで突然変異なんですね。




