夕15 口軽すぎじゃないかしら
遅くなりまして申し訳ありません。さらに申し訳ないのですが、来週は一回しか投稿できません。言い訳をさせて下さい。学校行事のリーダー的なのを任されてしまい、時間が取れないのです。本当に申し訳ありません。
〜セフィ・ウラノス目線〜
外に出て【空間把握】の範囲を広げると確かに屋根の上にいた。
ツグちゃんの話では一人だったそうだけど反応は三つ。一人はツグちゃんの言っていた怪しい奴。後の二人のサイズは明らかに小さく、人族や亜人ではない。ツグちゃんが一人しか見ていないと言ったらしいから、状況から考えて精霊かな。
【鑑定】出来る範囲内ギリギリにいたので、調べてみると驚くべきことがわかった。
吸血鬼。そう、吸血鬼だ。
吸血鬼は血の濃さによって強さが変わってくる。初源の吸血鬼、純血種。その直属の眷族、原血種。ギリギリで眷族を造ることのできる、濃血種。下っ端で種を増やせないほど血の薄い、薄血種。
この吸血鬼は濃血種だった。
【空間跳躍】を使う。視界が切り替わり、次の瞬間飛び込んできた光景は、その吸血鬼の背中だった。そのまま蹴り飛ばした。
その時は、【鑑定】結果のおかしなところに気づかず精霊も確認せずに動いてしまった。
濃血種だから下っ端だろうとは思うけど、もしかしたらナギ姫の情報を得られるかもしれない。私はそれしか考えてなかった。
「吸血鬼が何のためにここにいるのか聞かせてもらおうか」
私は蹴り飛ばした吸血鬼の後を追い、圧をかけるためにいつになく真剣な声音で質問した。
後から気がついたのだけど私今、露出高めの服だから男っぽい言葉遣いはやめた方がよかったかもしれない。今更だよね。
吸血鬼の方は、女の子?男って言われても不思議じゃないくらいの中性的な顔。服はそこらで売っている安物だった。
「え〜と、物見遊山?」
答えなんて言わないと分かりきっていたから、それが嘘でも問題ない。
「あくまで誤魔化すつもりなのね」
物見遊山の為にわざわざケイネス領にくるなんてありえない。何か目的があるはず。
「なら、吐かせてあげる。【衝撃風】」
吐かせるのはナギ姫の事で、その他はあくまでついでだけど。
【衝撃風】は私の十八番の魔法。規模の方は中級で威力はそれなり。もっと強い魔法も使えるのだけど、十八番の理由は私からしたら消費魔力が少なく、連射ができるから。
「無詠唱?えっ・・・凄い」
相手から称賛の声が上がる。その間にも【衝撃風】を打ち付けていると、相手の方が吹き飛んだ。吸血鬼との戦闘では相手の部位が欠損していたとしても攻撃の手を止めてはならない。
【高速再生】という反則なスキルで時期に治ってしまうから。私は追い詰めるようにさらに【衝撃風】を放つ。
この調子だと【衝撃風】だけで倒せるかもしれない。楽観視しているわけではないけど【衝撃風】一発で肩が吹き飛ぶのならそうなってもおかしくない。そこまでの威力はないと思うのだけど、濃血種ならその程度なのでしょう。
そう思っていたのだけどそれ以降に当たる【衝撃風】は僅かな鮮血を舞わせるだけで最初ほどの威力が出なくなった。
着弾箇所を見る為に魔法の発動を止める。見える部位には肌色の鱗ができていた。吸血鬼になる前は鱗族だったのかもしれない。
「ちょっと、ワタシはただ見学してただけなんだけど?いきなり魔法使ってくるなんてヒドクナイ?」
蓮撃の手を止めたのを好機とみたのか吸血鬼が話しかけてきた。
「酷い?貴方たちの方が酷いことをしているという自覚がないのね。魔王に組する種は見つけた瞬間に討伐対象になる。それが人間社会のルールよ」
すぐに殺すつもりは今の所ないのだけどね。ナギ姫のことを知らないようなら殺るけど。
「ふ〜ん。じゃ、しゃーないか」
「っ!・・・へぇ」
恐怖ではない、言い様のできない不安感が私の背を伝う。一瞬でも私に威圧感を与えるなんて、濃血種のくせに原血種に迫るくらいの力があるのかもしれない。
「殺し合い、しましょ?」
吸血鬼が笑う。
それを合図に私は【衝撃風】を乱発する。その数、優に二十を超える。
少しは避けるのが上手いようだけど、この数を避け切るのは難しいはず。その予想は正しく吸血鬼はその大半をその身で受けた。
土煙が舞い、吸血鬼を隠す。先と同じならいくら鱗が頑丈でも四肢がもげ取られているだろうけど、どうなるか。
土煙が晴れたその先には、五体満足の状態の吸血鬼がいた。
驚くものの原血種ならこのぐらい耐えて当然だし、それに近い存在なら当たり前と改め、その動きを注視する。
よく見ると全身から鱗のようなものが生えているのが分かった。鱗ならさっきからも出していたけど、ようなものと言ったらわかるように先ほどまでとどこか違っていた。
鱗と鱗が繋がる、というより隣り合う鱗同士がくっついていると言った方が適切だろうか。
【衝撃風】はさっきまで鱗と鱗の隙間を押し広げるようにして破壊していたけど、その隙間がなくなることによって弾かれるようになったのでしょう。
「次はこっちからやらせてもらうからネ!」
何がおかしいのかそう言って笑いながら突っ込んできた。接近をわざわざ許す理由もないので後ろに跳躍し、屋根を渡って距離を稼ぐ。すると元の場所の近くに来ていたみたいで精霊と合流されてしまった。
「だいじょうぶ〜?」
「ああ、問題ない」
昔から耳がいいので小声で話していたのだろうけどそんな会話が聞こえた。
見えるし聞こえるっていうことは私の適性の中の一つなのね。もう一人の方は見えないので違う適正なのかな。
もう一度よく見る為に【鑑定】を使う。スペルは【精霊魔法(毒)】だけ。あれ?もう一人は?
「っ!」
「もらったぁ!」
それが油断につながったのか、いつのまにか吸血鬼が目の前にいて腕を振り下ろすところだった。
とっさに足に力を込めて後ろに大きく跳んで逃避を試みる。普通なら素手が届かない距離だから安心してしまった。
吸血鬼の腕が変形し、長く、そして先端は棘の沢山ついた球状になった。
ドゥンと音がしてそれが叩きつけられる。腕をクロスさせて急所は免れたけど棘が私に傷をつけ、その大質量が地面に撃ち落とす。
「【旋風】【衝撃風】!」
私は突風を吹かせ体の勢いを殺し、追撃を避ける為に風の塊で牽制する。
私は地面に着地し、吸血鬼を見据え、さらに情報を上げていく。今度は油断しない。
名前無しに性別不明?意味がわからない。おまけに種族が鬼だけ。【眷族】で吸血鬼化したなら前の種族もかかれる筈だから、最初から吸血鬼として生まれたなら分かる。
でもそれじゃあの鱗の説明がつかない。スキルを見る限りそれに関係のありそうなものも見つからない。
「何なの貴方?」
思わず漏れてしまった言葉。でも仕方ないと思う。本当に無茶苦茶だから。
「何なのってそれこっちのセリフだし。【鑑定】出来ないんですケド?」
さっきと同じようにただのつぶやき声でも聞いて話を繋げてくる。話し好きなだけかもしれないが油断を誘うためかもしれないので気をぬく気はない。
【鑑定】を使ったようだけど【鑑定遮断】がうまく働いてくれたようで情報を読まれることはなかった。
「【鑑定遮断】のおかげね」
「へぇ、そう。ところで何で会話してくれる気になったノ?」
さっきまでの調子なら吸血鬼が言ったようにその言葉を無視して魔法を放っていた。けど、こいつの異常性を知ってもしかしたら濃血種の中でも上の位なのかもしれないしれないと思っていたのだと思う。ナギ姫のことを聞きたいと思っていたしちょうどいいかな。
「一つ聞きたいことがあってね」
「・・・そう。いいよ、なんでも聞いてミソ?ワタクシに関係のないことならなんでも答えタゲル」
さっきから現れていた笑みが一瞬失せ、ついで気持ちを切り替えたのか今度は作り物のような笑顔を浮かべて頷いてみせた。考えが読めない。
魔王に関することだから教えてくれないと思うけど一応聞いてみた。
「今日から十八日くらい前、ウエスタリア王国王城で魔王がさらっていった姫は何処にいるの?」
「姫?」
しまった。いつも姫って呼んでいたからそのまま聞いてしまった。ナギちゃんって名前で呼ぼうかーーいや、名前まで知っているなんて都合のいいことはないか。
「間違えた。姫ではなく普通の女の子よ。少し得意なスキルを持っている筈だからすぐ分かると思うのだけど」
「へぇ、魔王様他にも攫ってたんだね」
他にも?シノムラ君の話ではナギ姫以外は攫われていないはず。もしかして知らないだけで他にもいるの?
「あ、失礼、今のは忘れてネ。ん〜女の子は知らないカナ」
自分の失言に気がついた吸血鬼が訂正する。吸血鬼の言葉の真偽は精神魔法で確認したが、どうやら嘘はついていないよう。
それにしても他にもね。もしかしたらその他の子がナギ姫の手がかりにつながっているかも。
「魔王が攫った他の子について話して」
「忘れてって言ったじゃん。それにワタクシに関係あるしダメー。・・・もういい?早く殺ろーよー」
駄々をこねる子供みたいに文句を言ってくる。さっき思ったんだけどこの子は俗に言う戦闘狂と言うやつかもしれない。
「あ、じゃあワタクシを倒したら教えてあげるよ」
考え事をしていた私を見て何か勘違いした吸血鬼がそんなことを言う。元々倒すつもりだったし、拷問する手間が省けたからいいけど、この吸血鬼口軽すぎじゃないかしら。




