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86 セクハラじゃねぇか!

目を開けたら頭のおかしな人がいたんだけどどうすればいいんだ?これ。


どこがおかしいのかと言うと、色々丸見えな服を着た痴女で、強盗とかが被ってそうなマスクをつけている点かな。これをへんでないと言う人がいるだろうか?いるとしたらそいつも同類なのだろう。


「で、何やってんだよ?セフィ」


俺は意を決してその変態に声をかけた。


「何ってシノムラ君を起こしに来たんだけど?」


そう言うことじゃない。


「なんでそんな格好してんだ?」

「フッ、気づかれてしまったか」


しまった、聞かないほうがいいやつだった。


「かっこいいでしょ!」

「ツッコミどころがありすぎるが取り敢えずこれだけは言わせてくれ。何処が!?何処をどう取ったらそれが格好よく見えんだよ!?」


「シノムラ君・・・感性大丈夫なの?」

「むしろセフィの感性が大丈夫なのか問いたいわ!」

「やだなぁ、私ほど感性に長けている人間はいないよ」

「本当にそうならこの世界の全ての人間の感性が異常ってことになるな」

「そうだね!」

「気づけよ!セフィの感性が異常って気づけよ!一人だけが正常とかありえないだろ!」

「かつて地動説を唱えた人間は一人だけだった。ほら、ありえないことなんてないでしょ?」

「ぐぅ、言い返せねぇ」


ていうかセフィはなんでそんなこと知ってるんだよ。この世界は見たところそんなに発展してないように見えるんだけど。


「それに私一人だけじゃないよ」


その言葉に嫌な予感がした。俺はそれが気のせいであるように祈りながらツグを呼ぶ。


「はい。何か御用でしょうか?」

「っ!・・・お、お前もなのか!」


もうこの際俺の布団から出て来たのは無視でいい。ツグの顔をセフィと同じタイプのマスクが覆っていたのが問題だ。


「なんでお前までマスクを被っているんだよ」

「それは主人殿(あるじどの)が使うと聞いたので私の匂いを付着・・・ではなく毒被りをしなくてはと」


毒被りって何!?毒味の被る版なんてことはなんとなくわかるけどその前なんて言おうとした?いや、やっぱりいい。知らないほうが幸せなことって結構多いと思うな、オレ。


「で、なんでいきなりそんなもの被りだしたんだよ」


さっきも同じ質問したけど答えはまだ聴けていなかったので再度質問する。


「だって顔見られるとかまずいでしょ?」


ということらしい。そこで昨日マスクを被って潜入することになったんだったと思い出した。


「なぜそのマスク・・・いや、どこで(・・・)手に入れたんだそのマスク」


このマスクは昨日見た限りこの都市では売っていなかったはずだ。それに日本のテレビで見たのと同じような意匠をしている。同じものがこの世界にあるとは思えないのだが。


「これは異世界人の友達にもらったんだよ」


俺たち以外にも異世界人なんていたんだな。ん?まてよ、そんなマスク持っているなんてそいつもしかして犯罪者なんじゃ。考えすぎか。


俺のことはよそにセフィは聞いてもいないことを話し始める。


「最初会った時はまさか友人になるなんて思わなかったよ。だって初見の言葉が『ねぇ君、今どんなパンツ履いてんの?』だったんだよ」

「セクハラじゃねぇか!」

「それからパンツの話で盛り上がったんだけどね」

「男女が話す話の内容じゃねぇだろそれ!?」

「その時にこれもらったんだ」

「どうしたらパンツからそれもらう話になるんだよ!?」

「ちなみにその子、女の子だよ」

「もはや女子という生き物がわからんくなってきた!」


その後は何事もな・・・いわけではなかったけど無事に朝食を食べて作戦を開始することにした。





俺たちは無事に侵入することができた。ツグに気を取られている、というか食い気味に見ていたのでなかなか簡単だった。


それでも城内は広く、進みは遅い。


「セフィ、できるだけ早く」


自分でも驚くほど焦った声が出た。時間をかければかけるほどツグが危なくなるので、仕方ないのかもしれない。


セフィはわかったとだけ告げて横の部屋に入る。しばらくするとドタバタと騒がしい足音が聞こえ、俺たちの進行方向の反対側に向かっていった。セフィが視線だけでもういいよと告げ、部屋から出て進む。


時折城内を混乱させるためにわざと見つかりにいったり、物音を立てたりして進んでいるのも、遅くなる原因だろう。でもこうしていることでツグに行く兵士の数を微量ながら減らしているので何も言えない。


「あと少しだよ!」

「っ!セフィ、ストップ」


セフィの声に被せるようにセフィを止める。


「どうしたの?」

「ツグからこっちを見てくる変な奴がいるって報告が来た」


竜が来たら一般人は逃げるだろうし、冒険者ならば貴族に恩を売るために参戦に来るはず。ただ見ているだけではメリットがない。


「見てくるだけでしょ?絡んできたら対処くらいに考えればいいんじゃない?」

「だけどな・・・」


もちろん俺もそうするのが正しいのだろうとは思う。だけど本当にそれでいいのかとも思うのだ。これはそう、あの時の感覚。


「そいつを放っておかねぇ方がいいって【勘】がすんだよ」

「【勘】、ね」


【勘】は人間の第六感を鋭くしたもの。確定未来じゃないし、外れることもあるだろうけど、外れるとも限らない。


「分かった。私がちょっくらいって見てくるよ」

「・・・大丈夫、かよ?」

「シノムラ君は心配性だなぁ。私ってできないことの方が少ないんだよ?大丈夫。その代わりちゃんと助けてあげてね」


セフィがSランクでとても強いというのはわかるが、何か胸騒ぎがする。それを悟られないように(もう遅いだろうが)殊更明るく頷いて強引に頭を切り替える。


その後セフィに牢の場所を教えてもらい、セフィは外に出た。壁を壊して。


「結局壊すんかい!」


セフィは俺の叫びを無視して進んでいった。ツグの射線上だから大丈夫とは言っていたが本当に大丈夫なのかは分からないところだ。

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