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第9話

 事件から二週間、傷は完全に癒えて痕すらも見えない。街並みも落ち着いて見える。今は午後のパトロール中だ。

「クルトぉ、平和だなぁ」

「あぁ事件が嘘みたいだ」

 あまりにも激しかった事件が終わったせいで、完全に気が抜けていた。

「今日も酒場いくかぁ」

「おー」

 だらだらと(見かけはちゃんとしている)巡回していく。


 中央通り付近に近づくと街の喧噪も大きくなってくる。聞こえてきたのは男性の声。

「衛兵はダメだ! この前も結局解決したのは冒険者だ。税金とるだけの無能たちはいらない!」


 あれは街でも有名な市民団体だ、税を少しでも下げようと街などに対して申し入れをする団体である。その参加者を募るスピーチを行っているのだろう。

 彼らの結果は合っているので大きな声で文句は言えないが、俺たちがいなければすぐにでも街に魔物が入り込んだだろう。決して仕事をしていないわけではない、死者だってでているんだ。

(言いたい放題いいやがって!)

 怒りを感じる。グッと堪えて動向を伺っていたが、既に動いているものがあった。


「おいぃ、誰が無能だってぇ?」


 ジルがスピーチしている男に向かっていった。男は驚いているようだ。スピーチをしていても普段なら衛兵は見て見ぬふりをしていたのだ。しかし、今回は男の言い分も許せるものではなかったのだ。


「はっ、衛兵さんがなんのようだい? ウルフに負けるようじゃいる意味ないだろ」

「……ぐぅ」


 ジルは馬鹿なのだ、何も考えずに出て行ったのだ。相手は話すことを武器にして戦う職業だ、対して馬鹿、勝ち目など万に一つもない。感情論を言うだけでは言い負かすことはできないだろう。飛び出すのは失敗だったのだ。しかし、飛び出たものは仕方がない。言われ放題も尺だし、ジルが可哀想だ。


「衛兵がいなければ、ウルフの足止めもできなく、一晩とかからずに街は食い散らかされてたと思うぞ」


 ジルに対し援護射撃を行う。


「ふん、貴方たちよりも冒険者一人でも雇っておけばウルフなんて蹴散らせたでしょう」

「冒険者を常時雇っておけるとでも? 彼らは警備なんて仕事は請け負わないと思うぞ」

「それは報酬次第でしょう、貴方たち二〇人分程度の給料渡しておけば大丈夫でしょう」

「彼らは報酬じゃ動かないよ、興味があることにしか動かない」

「っ――五年前も同じようなことがあったじゃないか! 結局冒険者が解決した。衛兵は何もできずに死んだだけだろ!」


 いつの間にかジルは俺の後ろにまわって、オレの言葉に頷いているのみだ。――ジルが始めたのに……後でフィンさんに言って虐めてもらおう。

 相手にするのも大変になったので聞き流していると、相手も引くに引けなくなっているのだろう、口調もきつくなっていっている。どうやって切り上げようなんて考えていると助け船が飛んできた。


「なぁに騒いでんだお前ら! 店の前でやられちゃ商売あがったりなんだよ!」


 来たのは武器屋のおっちゃんだ。言い争ってたのはおっちゃんの店の近くだったのだ。おっちゃんの言葉で相手は引き下がってくれた。


「助かったよ、おっちゃん」

「よぉクルト、おめぇも何であんなのに絡まれてたんだ?」

「ジルが止める間もなく突っ込んでいったんだよ」

「いやぁ悪かったなぁ、クルトぉ」

「別に構わないさ」――どうせ後で制裁だからねっ。俺はいい笑顔を返しておいた。

「まぁ気を付けるこった。じゃぁな、ガハッハ」

 それだけ告げるとおっちゃんは店に戻っていった。


「クルトぉ、オレ許せなかったぁ。人いっぱい死んだんだぜぇ」

「俺も許せなかった」

――ジルは馬鹿だけど、いいやつだ。お仕置きは少し軽めにしておいてあげようとそう思った。




 次の日、詰所にある情報が届けられた。


「森の中に強力な魔物の痕跡あり、冒険者は山脈の対応に追われている状況でしばらく戻らないかもしれません」

――つまりは、また衛兵たちだけで対応しなくてはならないのだ。西の詰所でまた会議があるらしい、隊長とフィンさんとともに向かった。



 西の詰所は静かだった。前回の事件では慌ただしく隊員が情報整理を行っていた。今回は人の姿をあまり見かけないのだ。

 会議室である部屋に向かう。中にいるのは西の隊長と初めてみる女性だ。

「よく来てくれた、今回は王国派遣隊は来ない。彼らはすでに前線で警戒を行っている。早速だがはじめさせてもらおう。まずこちらの女性は薬師のメイアさんだ。彼女が今回の以上の第一発見者だ」


「メイアです。発見したものを簡単に説明させていただきます。半日ほど前、王国派遣隊の皆様の護衛で森の中で薬草の採集を行っていたところ、魔物の縄張りを示すマーキングを発見しました。マーキングは硬腕熊のものだと思われます。大木に斜めに4本それに直角に交わるように4本、×の字に刻まれる傷が残されていました」


 硬腕熊は右手が大きく発達しており硬質化しているのが特徴で、立ち上がると4Mの大きさのある魔物だ。魔物大辞典で見たことがある。

 隊長が口を開く。


「硬碗熊だとすると、難易度四〇……。我々ではとてもじゃないが対処できないぞ」


 先日のウルフで難易度は十八。複数匹のウルフを同時に相手にしたときの難易度は二六程度だと言われている。四〇というのは見たこともないし、衛兵が退治したなどと聞いたことはない。隊長がさらに言葉を続けた。


「もし森から出てきたら街に来ないように誘導するか、何らかの方法で足止めか」

「うむ、冒険者がこないと話にならない。その方向で対策を練るとしよう」


 隊長と西の隊長が、対策について案を出し合っていると会議室の扉が開かれた。


「森より硬腕熊が出てきました。街へと向かってきています。早ければ半日ほどで到着すると思われます」


 事態はどんどん流れていく。俺達は身構えることもできず、その流れの中に飲み込まれていく。


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