047 試飲会
「HAHAHA! 待たせたなEverybody! 極上ブラックボアのBBQ、完成だぜ!」
ジュウウウウウッ……!!
分厚い肉が炭火の上で完璧な焼き色をつけ、スパイシーな香りと共に弾けるような肉汁を滴らせる。
「そして『ガレージ・リンク』」
光の中から、エルフが好きそうな蜂蜜酒や、超高級ビンテージワインの数々が現れた。
「Wow……! ガバメントの本気を見たぜ。さあファラ、アメリカ合衆国からの貢ぎ物だ」
俺はグラスに蜂蜜酒を注ぎ、ファラに手渡した。
ファラはグラスに鼻を近づけ、小さく口をつける。
「……おいしいけど、蜂蜜酒飽きた」
「おっと、そうか。じゃあこっちのビンテージワインはどうだ? ワイン好きなら一生に一度は飲みたい幻の逸品らしいぞ」
深紅のワインを注いで渡すと、ファラは一口飲み……無言でグラスをテーブルに置いた。
「……渋い。枯れ葉と、土の匂い。美味しくない」
:『国務省、痛恨のミスwwww』
:『エルフに蜂蜜酒は定番過ぎたかww』
:『数百万のワインが枯れ葉扱い lmao』
:『まあビンテージワインは、飲み慣れてない人にはキツいわな』
米国国務省【公式】:『至急、最高級の貴腐ワインとフルーツリキュールを手配中……ッ! 少々お待ちを!!』
俺が苦笑いしていると、BBQの匂いにつられて、先ほどの鍛冶屋のヒゲの店員や町の人達が、ぞろぞろと集まってきた。
「いい匂いだな兄ちゃん! 俺たちにも一口食わせてくれないか?」
「Sure! ちょうどいい、この余ったワインも一緒に飲んでくれ。かなり高いらしいぜ!」
俺が気前よくグラスにビンテージワインを注いでやると、町の人達は肉を頬張りながら、嬉しそうにワインをあおった。
しかし、その直後。彼らの顔に露骨な「?」が浮かんだ。
「なんだこれ? すっぺえな」
「うーん……なんか、カビ臭くないか? 古い樽を舐めてるみたいな味がするぞ」
「正直、スパイシーな肉には合わねえな! やっぱ酒は、酒場の大将が出してくれるエールが一番美味えや!」
「HAHAHA! 違いない! 俺の故郷のエールも飲んでみてくれ!」
:『言っちゃったwwwwww』
:『国務省「解せぬ」』
:『高級ワイン <<< エール』
:『ワイン愛好家が聞いたら泡吹いて倒れるぞ ROFL』
町の人達の素直すぎるレビューにチャット欄が大爆笑に包まれる中、ふと、一つのコメントが目にとまる。
Mama:『Ken! 口直しに冷蔵庫にあった「これ」、送るわ!』
再びガレージ・リンクを発動すると、今度はスーパーのビニール袋が出てきた。
中に入っていたのは、近所のスーパーで1缶2〜3ドルで売られている、ごくありふれた『シードル(りんごの炭酸酒)』の6本パックだった。
「おお、Mamaサンキュー! ほらファラ、これはどうだ? 甘いりんご酒だ」
プシュッと缶を開け、新しいグラスに注いでやる。シュワシュワと弾ける炭酸と、甘いりんごの香りが漂う。
ファラは恐る恐るグラスを手に取り、口をつけた。
「……!」
その瞬間、ファラの瞳にパッと輝きが宿り、垂れ下がっていたエルフの耳がピンと上を向いた。
「……あまい」
ファラはもう一口、ゴクゴクと勢いよく飲む。
「……しゅわしゅわする。すごく美味しい。これ好き」
ファラはグラスを大事そうに机に置くと、俺の手にそっとミスリル貨を乗せた。
「……取引成立」
「HAHAHA! OK、Dealだファラ! 余ってる分も全部お前のものだぜ! ガバメントこれからは、シードルの差し入れも頼むぜ!」
:『Mamaのシードル大勝利wwwww』
:『スーパーの3ドルの酒 >>>> 数百万のビンテージww』
:『Mama! Mama!』
:『国務省「私たちの苦労は一体……」』
:『アメリカ政府、カンザスの主婦に敗北するwww』
:『3ドルのシードルでミスリル獲得とか、錬金術師もビックリのレートで草』
俺は笑い転げるチャット欄と、シードルをちびちびと飲みながら静かに至福の表情を浮かべるファラを見つめながら、最高にピースフルな異世界の夜風とBBQを楽しんだのだった。
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次話明日7:00に公開予定。




