035 森の神殿
深夜。
パチパチと爆ぜる焚き火の音だけが、静寂に包まれた森に響いている。
俺とエルナ、そして新しく仲間に加わったエルフのファラの三人で、寝ずの番についていた。テントの中では、ガンツとトーマスが豪快な鼾をかいて爆睡している。
俺は残っていたコーヒーを啜りながら、焚き火をじっと見つめているファラに声をかけた。
「なあ、ファラ。こんな時間に、厄介な魔物が出る森で一人で何をしてたんだ?」
ファラはパチクリと大きな目を瞬きして、ポツリと答えた。
「……森の神殿に、来てた」
「森の神殿?」
俺が首を傾げると、隣で道具を手入れしていたエルナが顔を上げた。
「前に仲良くなったエルフから聞いた事があるわ。こういう大きな森には、神様が宿った木があるの。エルフは、それを『森の神殿』って言うらしいわ」
「Oh、なるほどな! 神様が宿る大樹か、そいつはCoolだ!」
:『世界樹的なやつか! ファンタジーの王道キター!』
:『エルフの森の秘密、ワクワクするな』
Mama:『神聖な場所なのね。やっぱりエルフの文化は神秘的だわ!』
「新しい町や場所に行ったら、まずは地元の神様に挨拶する。それがこの世界のジャスティスだからな。なぁファラ、俺もその神殿に挨拶に行ってもいいか?」
すると、ファラは少しだけ嬉しそうにこくりと頷き、スッと立ち上がった。
「……ん、大丈夫。近くだから今から行く?」
「HAHAHA! 気持ちは嬉しいが、今は大事な見張りの最中だぜ! ガンツたちが起きてきたら、朝イチで行くとしよう」
ファラは「……わかった」と小さく呟き、再び焚き火の前にちょこんと座り直した。
◆◆◆◆◆
翌朝。森の木々の隙間から、清々しい朝日が差し込んでくる。
ガンツとトーマスがあくびをしながら起きてきたタイミングで、俺たち三人はファラの案内で森の奥へと足を踏み入れた。
木漏れ日の中をしばらく進むと、開けた空間に出た。
「……ここ」
ファラが立ち止まり、静かに指をさした。
そこには、周囲の木々とは明らかに一線を画す、とてつもなく巨大な大樹がそびえ立っていた。樹齢何千年なのか見当もつかないほどの太い幹と、朝日を浴びて淡いエメラルドグリーンの光を帯びているかのように輝く葉。
俺は思わず息を呑んだ。
「Wow……なんかよく分からんが、神聖な空気というか身が引き締まる気がするな」
「ええ……凄い神聖な魔力だわ」
エルナも、圧倒されたように大樹を見上げている。
:『うおおおおお! 神々しい!』
:『ガチの御神木じゃん!』
Dad:『Ken、失礼のないように挨拶するんだぞ!』
ファラが大樹の根元に歩み寄り、そっと幹に触れて目を閉じた。森の神への祈りなのだろう。
それに倣い、俺とエルナも神が宿る大樹に手を当て、静かに目を閉じて挨拶をした。
「神様。今日も最高のBBQが焼けますように。BBQソースと共にあらんことを……」
:『お祈りの内容がやっぱり肉一色ww』
:『ブレないBBQMAN lmao』
清らかな森の空気を胸いっぱいに吸い込み、俺たちは新たな仲間と共に、次なるBBQの旅へと歩みを進めるのだった。
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次話明日7:00に公開予定。




