017 別れ
翌朝。
朝日がガレリアの街を照らす中、俺の頭の中ではガンガンと鍛冶屋のハンマーが叩きつけられていた。昨晩、テキサスビーフリブの美味さにテンションが振り切れ、ハンクとストレートのバーボンを煽りすぎた結果だ。
俺はガレージ・リンクでMedialyteを取り出し、一気に喉に流し込む。
強烈な二日酔いから細胞を蘇らせるための、アメリカン・パーティー翌朝の神聖なる儀式だ。電解質が乾いた体に染み渡っていくのを感じる。
少しだけ視界がクリアになった頃、近くで重低音のエキゾーストノートが響いた。ハンクのHUMMER H1だ。極上の牛を求めて出発する準備を整えていた。
俺はJames Bang Rye Whiskeyを片手に、ハンクへ歩み寄った。
「昨日は最高だったよ、ハンク。これ、俺からの気持ちだ」
ハンクは無骨な手でボトルを受け取ると、ニヤリと笑って、Mild Turkey Rare Bird (マイルドターキー レアバード)を俺に押し付けた。
「テキサスの誇りを持って行け、サムライボーイ」
「ありがとう。元気でな、ハンク!」
俺が右手を差し出すと、ハンクは力強く握り返してきた。分厚く、幾つもの火傷の跡が残るピットマスターの誇り高き手だ。
「ふん! 次会うときまでに、肉と会話できるようにしておけよ、サムライボーイ!」
ハンクはそう言い残すと、けたたましいエンジン音と共にHUMMERを走らせ、砂煙を上げて街を去っていった。
◆◆◆◆◆
ハンクを見送った後、俺もエルナ達と共に次の目的地へ向けて車を走らせていた。
窓から吹き込む風が、次第に潮の香りを帯びてくるのを感じる。二日酔いの頭には、この爽やかな風がありがたかった。
「エルナ、次の町はどんなところなんだ?」
助手席で地図を広げながら、エルナがパッと顔を輝かせて答える。
「魚が美味しい港町よ! 新鮮な海の幸が毎朝市場に並ぶの」
魚か。これまでは肉ばかりだったが、シーフードのBBQも奥が深い。
シュリンプに、殻付きホタテ、あるいは杉の板に乗せてスモークする極上のサーモン……。想像するだけで、二日酔いだったはずの胃袋が再び食欲を主張し始める。
「シーフードBBQ……最高じゃないか。よし、次の町でも盛大に火を熾すとするか!」
:『港町きたあああああ!』
:『いきなりシーフード編か。テキサスからの急激な変化に草』
:『どんな魚がいるか楽しみだな!』
チャット欄が盛り上がる中、エルナが助手席でふと呟いた。
「ねえKen、朝ハンクさんと何話してたの?」
俺は苦笑しながらハンドルをきる。
「……単純な話さ。次はもっと腕を磨いて、素材そのものの美味さで勝負しろっていう、あいつなりの叱咤激励だよ」
:『ハンク、無愛想だったが良い奴だったな』
:『サムライボーイ、次は期待してるぞ!』
:『とりあえず港町に着いたら、まずは魚を仕入れるとこだな』
Dad:『Ken! 港町ならスパイスの効いたフィッシュタコスとかも最高だぞ! 挑戦してみろ!』
「フィッシュタコスか……それもいいな。よし、次の町に着いたら市場を片っ端から見て回るぞ!」
:『フィッシュタコスwww いや、普通に美味そう』
Mama:『イカ焼きも美味しいわよ。バターと醤油で炒めるだけで簡単よ』
:『ん? イカ焼きって言ったらソースだろ?』
:『イカでケンカはイカんな! …………なんつって』
海風がさらに強くなりまだ見ぬ世界へ。
少しだけ期待を胸にアクセルを強く踏み込み、潮騒が待つ新たな町へとランクルを走らせた。
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次回7:00公開予定。




