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第四章 土井利位との対面

 中谷は、夢を見ていた。


 真冬の夜の古河城。

 粉雪が静かに舞っていた。


 暗がりの中、わずかなかがり火が焚かれている。そのかがり火の中央には、大きな机と胡床。そしてその胡床に座る、絹の着物を着て上品に髷を結った侍。

 その男の周囲には木綿の着物を着て刀をすぐ抜ける状態にした、荒々しく髷を結った屈強な武士たちが取り囲んでいる。そして上品な侍の隣には若い女性が着物を着て正座をして控えていた。

 胡床に座った絹の着物の侍が、黒いビロウドの上に並べた雪の結晶を古風な顕微鏡で観察し、筆でその写し絵を半紙に描きこんでいた。

 中谷は、いつの間にか実験装置に備え付けていたはずの写真機カメラを両手に携えていることに気づいた。


「その方が中谷か」

 胡床に座った侍が顔をあげ、中谷を穏やかな顔で見つめた。中谷は思わず声をあげた。

「あなたは……いや、貴方様は……!」

「土井大炊頭(おおいのかみ)である」

 大炊頭。雪華図説を著した、土井利位の受領名である。忘れもしない。

「その方が難儀していると、そちの妹御いもうとごに聞いてな」

 土井が視線を投げかけた女性が、そっと顔をあげた。

「ふみ……!」

 それは大人になった文子、いや、文子が大人になったら多分こんな娘になっただろうと思われる愛嬌のある若い女性だった。その娘……大人になった文子が微笑んだ。

「兄ちゃん、あと少しだよ。頑張って。土井のお殿様も兄ちゃんのことを話したら、是非会いたいときてくださったのよ」

 土井は、文子の顔と中谷の顔を交互に見つめて微笑み、ゆっくりと口を動かした。

「雪華……いや、その方らの世に合わせて雪の結晶と言おう。雪の結晶は、天の温み、湿り気などで形を変える。存じておろう」

「御意」

「なれば、雪の結晶をこしらえるには天の姿に合わせなければならぬ。雪の結晶は、果たしてなにもないところにおいて生じるものか、否か」

「元となるものが要ると存じます」

 土井は、中谷が両手に携えている写真機カメラを見ながら微笑んだ。

「ならば難儀するまでもなかろう。余は雪の結晶を筆で描く。その方は光を捉える写真機からくりで描く。その違いでしかなかろう……」

 その言葉が、中谷の胸に飛び込み、頭に閃きをもたらした。

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