1/8
プロローグ
雪。冬を彩る白い華は、いまや自然だけのものではない。
21世紀現在、人工的につくられた雪が、スキー場、研究施設、映画撮影、室内遊技場、さらには都市のイベントにまで使われている。
この「人工雪」を、昭和初期に世界で初めて生み出そうとした男がいた。
まだ冷凍技術も十分とは言えず、気象学も発展途上だった時代。
「自然にできるものなら、人間にもつくれるはずだ」
そう信じ、誰も成功したことのない領域へ足を踏み出した科学者。
その名は中谷宇吉郎。
雪の科学者であり、詩人でも随筆家でもあった男である。
彼が雪に魅せられた理由は、一体なんであったのだろうか。




