第二楽章序節
魔王城が落とされた。
それは、多くの魔族の想いを一つに収束させる。
かつてメルが紡いできた想いは、魔王であるが故に繋がれた糸でもあった。
それは、少しずつ膨れ上がり、支えきれなくなった器から、少しずつ漏れ出す。
愛する王によって失われたはずの宿怨と呪詛は、悲哀によって芽生え、刹那に繁殖する。
人族へ報復を。
その言葉を最初に掲げた者、ロベリア。
行き場の無い慟哭が、彼を新たな王として祭り上げた。
レーヌの眠る地は、ただ静かに朽ちていき、新たな壮麗が空を多い始める。
その漆黒の石造りは、人族の持つ白妙の石造りと対を成し、二つの塔と呼ばれ始めた。
人族は、魔族に勇者を奪われた。
それを奪還すべく掲げた精鋭の剣は、鉄の雨を降らして、行進を続ける。
正義の刃が振り下ろされるより先に、彼らは、一つの魔法に霧散した。
それを愛する者たちの怨嗟が、王都を貪るように犇き、根拠無き憤怒を孕む。
魔族に殲滅を。
かつて、勇者の加護を与えた聖域、白妙の塔は、揺るがぬ正義で塗り潰された。
新たに打たれた一つの刃が、蠢く想いを宿し、全てが白銀に抱かれる。
その柄を掴み騎士の咆哮へと掲げたのは、剣聖シャルドン。
その叫びに、国を護る、原初の父ロアの像は、緩やかに崩壊を始めた。
怨恨の旋律は、その二つの塔から広がり、勇者の落とした波紋を喰らい尽くすように、世界を覆い尽くし始める。
それは、無垢なる大地、花の丘へと忍び寄る。




