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夜想曲『花の国』  作者: ことは
Primo movimento『花の祈り』
16/115

第二楽章序節

魔王城が落とされた。

それは、多くの魔族の想いを一つに収束させる。

かつてメルが紡いできた想いは、魔王であるが故に繋がれた糸でもあった。

それは、少しずつ膨れ上がり、支えきれなくなった器から、少しずつ漏れ出す。

愛する王によって失われたはずの宿怨と呪詛は、悲哀によって芽生え、刹那に繁殖する。


人族へ報復を。


その言葉を最初に掲げた者、ロベリア。

行き場の無い慟哭が、彼を新たな王として祭り上げた。

レーヌの眠る地は、ただ静かに朽ちていき、新たな壮麗が空を多い始める。


その漆黒の石造りは、人族の持つ白妙の石造りと対を成し、二つの塔と呼ばれ始めた。



人族は、魔族に勇者を奪われた。

それを奪還すべく掲げた精鋭の剣は、鉄の雨を降らして、行進を続ける。

正義の刃が振り下ろされるより先に、彼らは、一つの魔法に霧散した。

それを愛する者たちの怨嗟が、王都を貪るように犇き、根拠無き憤怒を孕む。


魔族に殲滅を。


かつて、勇者の加護を与えた聖域、白妙の塔は、揺るがぬ正義で塗り潰された。

新たに打たれた一つの刃が、蠢く想いを宿し、全てが白銀に抱かれる。

その柄を掴み騎士の咆哮へと掲げたのは、剣聖シャルドン。

その叫びに、国を護る、原初の父ロアの像は、緩やかに崩壊を始めた。


怨恨の旋律は、その二つの塔から広がり、勇者の落とした波紋を喰らい尽くすように、世界を覆い尽くし始める。



それは、無垢なる大地、花の丘へと忍び寄る。

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