城塞都市編 第十二撃 遺産の正体
なんやかんやで始めてしまった以上、完結させる義務はあると思います。例え、読んでる人が多かろうと少なかろうと、評価されてようとされていまいと。それがストーリーテラーの努めだと考えてます・・・等と、偉そうな事を抜かしておりますが、気にしないで下さい・・・
拓真が触れた事により、その頑丈な蓋が輝きと共に開け放たれる
「ど、どうして・・・開いたのかしら?」
騎士団団長サリオが驚いて誰ともなしに聞く
「恐らく、”転生者”が解除の鍵だったのかも、ですわね」
魔道士ズンダがそう言いながら光を放つ宝箱を薄目で見つめる
「まぁ、開いたんだし中身を・・・早く光がおさまらねぇかな?これ!」
拓真が輝きっぱなしの宝箱にイラ付きだした時、その”声”が聞こえてきた
『よくぞ参った”転生者”よ』
この声、は・・・?
「お、お師匠様!!」
ズンダが叫ぶ。そうか、先代ズンダのメッセージボイスか。どうやら宝箱の解除に仕込まれていたらしい
『この箱を開けるのが、良き心を持った者であると信じてこの中身を託す』
段々光が収まってくる
『この箱の中身は魔法のスクロールじゃ。魔法の名前は”リヴァー”と言う』
魔法のスクロール、か。皆がどんな凄い攻撃魔法なのか?と想像をしていると
『この魔法を習得するには並の”人族”では無理じゃ』
な、なんだってーー!と全員が更に驚愕する
『望みは託す。皆でその秘密を解き明かすのじゃ。そなたらに神の加護があらん事を』
そこまで告げると、光の消失と共に”声”は小さくなり、聞こえなくなった
「・・・お師匠様・・・・」
ズンダは胸に手を当てて、瓶底眼鏡の間から滝の様に涙を垂らしている
「カカカ・・・魔法のスクロール、とはの・・・ワシには論外の代物じゃったか」
ホークアイは腕を組み目を瞑る
「魔法では、ズンダ様が覚えられた方がよろしいのでは?」
サリオはそういうと箱の中身を覗く。箱の中には黄色い革のような物で出来た巻物が一つ、入っていた
「とは言ってもですね、魔法にも人それぞれの適正と言う物がありましてですね」
そう言いながらズンダは、箱の中身の巻物を取り出して手に持つ
「それ、どんな効果の魔法なんだ?」
様子を見ていた拓真がズンダに問う
「お師匠様は”リヴァー”と言ってましたが・・・私も始めて聞く名前ですね?」
「なんかさ、すっげぇ威力の攻撃魔法、ってやつ?」
ズンダが巻物をしげしげと眺めると、キラッセがキラキラ顔でズンダに聞いてくる
「ん~~?どうでしょう?取り合えず、使ってみない事には魔法の効果も、用途も解らないようですし」
巻物を紐解いて、”使用”するズンダ。が、しかし何の現象も起きない
「ん~~・・・私には使えないみたいですぅ~~」
しょんぼりして、ズンダが巻物から目を離す
「それ”使える”とか”使えない”とか何で解るんだい?」
拓真が不思議に思ってそう聞くと
「”使える”魔法のスクロールは”使用”すると燃え尽きて無くなり、使用した人の脳裏に焼き付くんです。逆に”使えない”と、何も起きません」
そう言って紐解いた魔法のスクロールをくるくると巻き戻す
「へぇ~魔法なんてな、初めて見るからな。俺なんかでも使えるのかね?」
「潜在的に素養があれば使えますが、適正があるかどうか確認してみないとです」
「なんだ適性がないと無理かぁ」
ズンダの説明に拓真は、めんどくさ、と思いながら聞き流した。もっとカンタンだといいのにな、等と考えていると
「取り合えず、使ってみます?これ」
そう言いながらズンダが巻物を手渡す
「え?俺に使えるの?」
「か、どうかは解りませんが”転生者”なら、もしかしたら、という考えです」
ズンダはそう言うとにっこりと笑いかけてきた。なんかコワイんですけど・・・
「使ってみなよ、タクマ!」
「カカカ・・・ものは試しぞ?」
「タクマ殿、是非に試して下され」
キラッセ、ホークアイ、サリオが順に拓真にせがむ。え~~?と言いながらも、拓真も巻物を目の前に近づけると、紐を解いて中身を見てみる
「・・・・・・・・・・・・・」
さっぱり、中身が読めない。知らない文字が延々と書かれているだけで、意味も解らない
「・・・・・・うん、俺には覚えられないみたいだ・・・」
暫く眺めていたが、何も起きないのでそう判断して巻物をくるくると巻き戻す
「ふぅ~残念・・・」
全員が同じ気持ちで溜息をつく
「無理ですかぁ~~。そしたらこれ、宝の持ち腐れですね・・・」
ズンダが残念そうにその巻物を拓真から受け取り、眺める
「まぁ、それが無きゃ絶対魔族に勝てない、って訳でも無いんだし、追々、ね」
拓真がズンダを慰めるように諭す。ですかぁ~といいながら肩を落とすズンダ
「ぁ、忘れてた。貴殿ら、城主様がお待ちだぞ!今から報告を兼ねた挨拶に出向くぞ!」
サリオがはた、と気付いた様に皆に声をかけ扇動する。今更かよ~と、愚痴をこぼす面々だがサリオの、城主様は待っておられるのだぞ!という掛け声で、動き出す
その列の最後になったズンダは、巻物を手に考えながら後を付いて来る
「きっと、きっと・・・・この魔法、使えるようにして見せます・・・・!」
と固い決意を漲らせていた
「して、そこの獣人殿が元勇者パーティのホークアイ殿じゃな」
鷹揚な態度の城塞都市城主”ガデム”は、謁見の間に揃った拓真達一行を見て開口一番そう告げる
「カカカ・・・御城主様もお変わり無く」
「・・・・・・・・・・ん、大儀無い」
あ、この間。絶対この城主、ホークアイの事、覚えてない。拓真がそう考えている間、どうやら他のメンバーも同じ事を考えていた様で、目が笑ってる。ホークアイに至ってはショックで顔に影が差している
「ごほん。して、残りの元勇者パーティのメンバーは?」
気を取り直して、と言うか場の雰囲気を取り繕うようにガデムが咳払いをし、尋ねてくる
「その事について、ご報告が!」
サリオが踵を返し、城主に発言する
「実は、他の元勇者パーティのメンバーですが・・・魔族軍の四天王となっていた事が判明致しました!」
サリオの発言により、謁見の間に集まっていた城塞の御偉方達から声があがる。口々に、まさか、とかやはり、とか、そういった類の物だ。というか、1年も戦ってて、相手の事もよく知らなかったなんて、どんだけ情報弱者だよ、と拓真は盛大に突っ込みを入れたかったのだが
「そうか・・・カナコが魔王になった時から、あるいはと危惧していたが・・・これで僅か1年でこの大陸が半分も魔族に支配された理由が解ったのう」
「恐れながら城主様」
ガデムが髭を撫でながら納得顔で話していると、割り込んだ人物がいる。”ペッスム”だ
「一度は魔王と魔族軍を倒したと言われる元勇者一行ですが。その実、影で暗躍し、この国を乗っ取ろうと、最初から画策していたやも知れませぬ」
ペッスムが知ったか顔でガデムに進言する。その言葉を聞いていたホークアイの顔が見る見る引きつる
「カカカ・・・その言葉、聞き捨てなら無いな!」
ずい、と一歩前に出てホークアイがペッスムに詰め寄る
「カッ!元勇者パーティの一人は、ここにいるのだが!」
くわ、と目を見開いてペッスムに凄むが、ペッスムも負けてない
「貴殿とて、怪しい物よ。元々、”転生者”なる者がこの国をどうこうすると言う事自体、間違っておるのだ!」
そう言うとペッスムは城主ガデムに向き直って進言する
「ガデム様、この機にこやつら共々捕縛し、魔族軍との交渉道具に致しましょうぞ」
とんでもない事を言い出した。そんな事をしたって、なんの解決にもならないのに。拓真達一行は全員が頭の中でそう考えていたが、ペッスムは本気だったらしい
「団長サリオ!そやつらをひっ捕らえ、牢にぶち込め!」
ペッスムはサリオに向き直ると、そう指示を飛ばす。が、サリオは落ち着いた様子で対応する
「お言葉ですがペッスム様。今はその様な事を論じている場合では御座いません。迫りくる魔族軍に対し、我々が成すべき事をお考えくださいませ」
そう言って頭を垂れるサリオに向かってペッスムは更に吠える
「だからそ奴等を使い、魔族軍との交渉材料とするのだ。さっさと指示通りに動かぬか!」
頭に血が上っているらしい。知略家だとばかり思っていたが、意外と小物だったようだ
「落ち着いて下さい。その様な交渉等が通じる相手では無いと、お分かり頂けませぬか」
サリオとペッスムの発言を、テニスの試合を観戦する如く、首を左右に振っていた拓真達であったがその均衡を破るように声がかかる
「もうよい。そこまでじゃ」
城主ガデムが呆れ返った様な口調で嗜める
「ペッスム。お主はどうも”転生者”について良くない偏見を持っておるな」
「そ、そんなことは・・・」
「良い。その理由も我には解っておる」
ガデムはペッスムを片手で制すると、立ち上がり歩み寄ってくる
「タクマよ。他の世界から来た”転生者”よ」
ガデムは拓真の側まで来ると語りかける
「もはやこの国は魔族軍に抵抗するのに疲れ果てておる。そしてその抵抗力ももはや尽きようとしておる」
そう言うと立ったままであるが、拓真に頭を垂れる。その姿にその場にいた全員がどよめく
「このガデム、城主としても全てのヒュム族の代表としても頼む。この国を、世界を救ってくれ」
その姿にある者は感動を覚え、涙し咽び泣く。ごく一部には反感を覚え、唇を噛み、下を向く。そんなそれぞれの人模様を見ながら拓真は思案する
「・・・顔をお上げ下さい、ガデム様」
その下がった顔があがり、此方を向くと拓真は話す
「出来る、とは言いません。だが、出来ない、とも言いません。ただ、やるだけです」
そう言ってその場にいる全員に言い聞かせる様に宣言する
「俺は全力で戦う。それだけは約束しよう!」
歓声も何も上がらない。あるのはただ、静寂のみ。その中で拓真は
「”転生者”かどうか、なんてのは関係ねぇ。理不尽な出来事はもうこれ以上ゴメンってこった」
細かい出来事が拓真の頭の中に渦巻いていたが、答えはいたってシンプルだった
「ですね」
「カカカ、そうよの」
「うむっ」
「タクマ・・・」
ズンダ、ホークアイ、サリオ、キラッセがそれぞれ拓真の言葉に同調する。争いを終わらせるために戦う。一見、矛盾しているような考え方だが、今はそれが最善の方法だと考える
「ま、最後は話し合いってのもあるんだろうけどな・・・」
戦いの終わりが見えてるような拓真の呟きに、そこにいた全員が目を向けるが、当の拓真はそんな呟きをした事にすら気付いてない様に、窓の外を見つめるのであった
「魔族軍副将”レゾウ”参上。使えない先代ズンダの遺産に肩透かしを食らった感じの拓真達であるが、我が魔族軍の一斉攻撃の報を受けて決戦の時を悟る。果たして拓真達は魔族軍に勝てるのか?”第三のシモベ”召還の”カギ”とは?遺産の魔法”リヴァー”の実態とは?次回 城塞都市編 第十三撃 条件 で雌雄を決しよう。フム、この戦いの果てに、何が待ち受けているのか・・・興味深い・・・」




