城塞都市編 第十三撃 条件
前口上。ヒーロー活劇物には欠かせない、代名詞の一つ。古今東西の前口上を並べてみると、自己紹介を兼ねたアピールでもありますね。最近の特撮物でも結構上手く前口上を使ってますしね。でも、出尽くした感があって、新しい前口上を考えるのが結構大変。自分の考えた前口上が使われる前に、世に出さねば、と常に頭の中で考えてますが、これがまた・・・・・
「よう、生きてるか?」
拓真は城塞都市の地下にある牢屋に来ていた
「・・・・・・・・」
無言で牢屋の一番頑丈そうな部屋の奥にいた人物・・・魔族軍四天王の一人”ラーセルス”はその声に反応し、身体を起こす
「・・・ほぅ、結構痛めつけられたみたいだな・・・」
ラーセルスの顔があちこち腫上がっている。見えないが、その着衣の下も痣だらけなのであろう
「・・・お前にさ、少し聞きたい事があったんだよ」
身体を起こしたが無言のままに、此方を睨み付けるだけのラーセルスに拓真は話し掛ける
「魔族軍の四天王。お前さん以外は元勇者パーティのメンバーで、魔族になった人族だよな。お前さんは、根っからの魔族なのか?」
問い掛けに、無言で何も語らないラーセルス。その様子を見てふぅ、と溜息をついた拓真は
「んじゃ、最後の質問だ。魔王と四天王以外にも、人族から魔族になったヤツって、いるのか?」
この質問にも無言で返すラーセルス。拓真は想定内だな、と頭を振ると
「解ったー。邪魔したな」
そう言って手をひらひらさせると、その場を立ち去ろうとする。が、途中で一旦足を止める
「あー・・・人族と魔族にゃ、もう埋める事ができねぇ溝が出来ちまってる。お前さんが魔族軍を率いて今までやってきた事。そいつを考えたら、今の自分の状況、解るよな?」
拓真はそう言葉を投げかけると、今度は立ち止まらずにその場を出て行く
「・・・・・・・・・・」
ラーセルスは無言のまま、出て行った拓真を見つめていたが姿が見えなくなるとまた寝転ぶ。その目は爛々と輝いている。何も出来ない状況。だが、まだ諦めてはいない証拠であった
「あ、タクマ。どうだった?」
牢屋への通路で拓真を待っていたキラッセが様子を聞いてくる
「んー、なーんも・・・無言で通された」
「・・・そっか・・・」
一人で聞いてくるから、と他のメンバーと別れて牢屋のラーセルスに会いに来た拓真であったが、キラッセだけはここまで来て待っていたのだった
「他のメンツはどうした?」
歩きながらキラッセに拓真が尋ねる
「んっと、ズンダのねーちゃんは自室に戻って例のスクロールについて調べ物」
後ろを付いてきながら、それぞれの行き先を口にするキラッセ
「ホークアイさんは、なんか腹ごしらえとかで、サリオさんは騎士団とこに戻ったみたい」
「そっかぁ」
地下牢から続く廊下を抜けると、城塞の正面に出る。そこには停車してあるスモルガー・マークⅡが見える
「今度はアレに用があるの?」
キラッセが拓真に尋ねてくる
「あぁ。”第三のシモベ”召還についてな」
「あー、前にしゃべってたねーちゃんがいる”もにたぁ”とかってやつ?」
液晶の操作画面の事を覚えてたキラッセの頭を正解、とばかりにぽんぽんした拓真はマークⅡに跨る
「さってと・・・」
正面に備え付けられた、マークⅡになってから少しグレードが上がった感じの画面を操作する拓真
ぽーん
と電子音が響くと、音声ガイダンスが起動する
『オンセイ ガイダンスガ キドウ イタシマシタ カクニンシタイ コウモクヲ ドウゾ』
前回よりも音声が聞き取りやすい。こちらもグレードアップしてるようだ
「現在の”カルマ値”が知りたい」
モニターに向かって話すと、画面内のマイク表示が反応し回答を探し出す
『ゲンザイノ カルマチ ゲンザイノ カルマチハ モクヒョウチノ 60パーセントデス』
お、意外とある、と思った拓真は予測されるカルマ値の習得に関する情報を聞く
『ジカイ モクヒョウチヘ キタイサレル ジョウケン ハ』
「条件は?」
拓真がオウム返しで聞く。隣ではキラッセがごくり、とつばを飲み込む
『イノチヲ カケル』
・・・・・・んー・・・そう来たかぁ。拓真は腕組みをして空を仰ぐ
「いのち、を・・・かける?どういう事?」
キラッセは困惑した顔で拓真を見る。空を見上げたまま、拓真は答える
「ん、そのまんまの意味、だろうなぁ。前回の毒なんかで命を落としかけるとかじゃなく、文字通り俺の命を張った行動がカルマ値をマックスにする条件、なんだろうさ」
「タクマが死ぬような事をしなきゃダメなの?そんなの嫌だよ!」
半泣きになったキラッセがしがみ付いてくる
「んー、命をかける、か・・・」
しがみ付いてきたキラッセをよしよし、と頭を撫でながら拓真は空を見上げ続けるのだった
ズンダは自室の魔法のスクロールが入っていた鉄の宝箱前にいた
「この箱、まだ仕掛けが残っている気がする。お師匠様ならきっと・・・」
そう言いながらズンダは箱を調べ始める。外側は散々調べた事があるので内側を調べていく
「中身がスクロール一個だけなんて。あの仕掛け好きだったお師匠様なら」
宝箱を拓真が開けた後も、全員にはその事は伝えずに、後で一人で調べようとずっと考えていたズンダであった
「箱は恐らく数人で開けると予想されていたはず。ならば、覗き込んでも解らない様な場所に・・・」
ズンダはそう呟きながら箱の内側を触っていく。すると、箱の底が段差になっている事に気付く
「・・・やはり。上から見ただけだと解らない様に、底の淵が段差になってましたね。すると・・・」
その段差の間に指を這わせると、指先に当たる感触がある。その異物を慎重に探ると、取り外しが出来るようだ
「・・・・とれましたわ」
取り外したソレは、細く巻かれたメッセージスクロールと呼ばれる物。早速ズンダは一応、周囲に人影が居ないのを確認してから巻物を紐解く
『この巻物に気付いた人物。わしの可愛い弟子の”シィー”や』
さりげなくズンダの本名をバラしながらメッセージは続く
『本命の巻物、魔法スクロール”リヴァー”の習得は通常の人族では無理じゃ。何故ならば習得には膨大な記憶媒体、脳みそが必要なのじゃ』
淡々と魔法”リヴァー”について語るメッセージ
『人族の記憶媒体、一人の脳みそを仮に100とすると”リヴァー”を覚えるにはその100倍、単純に一万もの脳みそが必要なのじゃ』
その膨大な数値にごくり、と喉を鳴らすズンダ。構わずメッセージは続く
『この魔法は遥か昔から”歴代のズンダ”によって研究がなされてきた。そして得られた回答がこれじゃ。一万もの脳みそを個人が有するのは、物理的に不可能』
更に巻物のメッセージは語る
『”シィー”よ、わしの可愛い弟子の”シィー”よ。恐らくわしは何者かに近い内に命を奪われるであろう。その後にコレを見つけるであろうわしの”シィー”よ』
なんと先代ズンダは自分が殺害されるであろう事を予想していた。その事に驚きの顔になるズンダ
『この魔法は切り札ではあるが、使いこなすには特殊な条件が必要じゃ。”転生者”ならば何か良い知恵を持っているはずじゃ。じゃが、新しい”転生者”がアテにならない場合』
次の言葉を聞いたズンダは顔が引きつる
『”カナコ”に助けを求めよ』
ズンダが自室で魔法”リヴァー”について先代ズンダのメッセージを聞いていた同時刻、拓真とキラッセがスモルガー・マークⅡに跨ってくっ付いている時、その一報が届く
「魔族軍が、城塞都市に向かって進軍してきました!」
魔族軍がこの土地に進軍してくる場合、魔族のエリアから転移魔方陣を使用して現れるのだが、城塞都市近辺には代々の魔道士ズンダが施した結界があり、近場には魔方陣の出口が作れないようになっている。その為、比較的結界の効果が薄い場所に出口を開いてこの土地に現れるのだが、そのような場所は大体の見当がつくらしく、常に見張りを配置しているそうだ
「その規模は恐ろしく膨大な数で、物見も撤退しております!」
最初に発見した物見からは、鳥などの足の速い伝達方法によって、情報がもたらされ、後に早馬等で直接口頭で詳しい報告が成される方法を取っている
「ついに総力戦を挑んできたのか」
報を受けた城塞都市の城主”ガデム”は報告を受けると、ううむと唸った
「・・・・・・」
謁見の間に集められた主だった人物達は皆不安そうだ
「敵が総力で来るというなら、こちらも迎え撃ちますか?」
騎士団団長のサリオが城主に進言する。だが、自信のある言い方では無い
「都合がいいじゃねぇーか!」
謁見の間にばーんと、扉を開けて入ってきたのは拓真
「奴等が総力でここに来るってんなら好都合だ。俺の”スモルガー・マークⅡ”と」
づかづかと歩いて城主の近くまで来た拓真は見栄を切るように全員に向かって話す
「集落”フロスト”に守備で置いて来た”ミドルオー”を呼べば勝てるぜ!」
城塞都市テンペロストだけに戦力を集中してくれるなら好都合。守備で置いて来た”ミドルオー”も加えれば、広範囲の敵も恐れるに足りない
「もともと、”ミドルオー”ってのは多勢を相手するのに都合のいい兵装を揃えているからな」
フロストを無視してこちらに来るなら、ミドルオーを呼んでも問題無いからな、と拓真は考える
「よし、わかった」
城主ガデムは立ち上がり、皆に激を飛ばす
「全員に告ぐ。総力戦である。戦える者は全ての兵装を持たせ、城門前に集結せよ!」
謁見の間に居た全員が一斉に頭を下げる。騎士団団長サリオは敬礼すると、すぐさま伝令を走らせる
「”転生者”タクマよ」
ガデムが拓真に話し掛ける
「総力戦という事だ。その方の戦力に期待するが・・・」
「任しといて下さい。気になるのは”四天王”と”魔王”だけなんで」
そういうと拓真も外に向かう。途中でサリオと目が合い、サリオが拓真の胸に裏拳を当ててくる
「頼むぞ、タクマ。当てにしてる」
「あぁ、任されたぜ」
そう言うと拓真もサリオの肩をぽんと叩いて謁見の間を並んで出て行く
その姿を見送って、謁見の間に残されたのは城主ガデムと幾人かの側近と、ペッスムだ
「・・・ガデム様」
ペッスムが人払いが出来たと確認してガデムに話し掛ける
「牢屋に監禁している魔族の処置。私にお任せ願えないでしょうか?」
そう言ってガデムに頭を下げて懇願した
その下げた顔にはとても悪い笑みが浮かんでいた
「私よ。魔王ベルリムこと、元勇者のカナコ。ようやくこの時が来たわ。魔族の全てを使い、人族を滅ぼし、全てを魔族の名の下に統合する日が!それを邪魔する者は、例え同じ”転生者”であっても容赦はしない。覚悟なさい!次回 城塞都市編 第十四撃 激突 で結果を出しましょう。・・・あぁ、”リム”・・・もう少しでアナタの夢が実現するわ」




