4.彼女
彼女はずっと、底知れない人だった。
時に彼女は正義の人だった。大学の研究も、そして警察に入ってからも、例え現場からは遠くても、誰かの日常を守るために仕事をしていたはずだった。
警察庁の付属機関である科学警察研究所。通常、科警研。
科警研の法科学第一部に所属していた彼女は、生物学的知見の応用研究、もっと言えば犯罪捜査に使用する遺伝子検査技術の研究開発に従事していたのだ。
そして時に彼女は無邪気に人を貶める性悪だった。それは私を笑顔で裏切って初めて見えた一面で、彼女に失望した自分が恐ろしくなった。私の中であんなに大切だったものが、醜く目をそむけたくなるようなものに姿を変えたのだ。
アメ横の飲み屋で、ユキに聞かれたことを思い出した。
『ナツのことも教えてくれよ』
『ん、どんなことが知りたい?』
『なんで研究者なのに、事業開発やってるのか、とか』
私は迷って、言えたのは、唐突な言葉だけ。
『……そうだね……私は、信じてたんだけどな』
ユキが納得いかない顔をしたように思えた。嫌われるのが怖くて、あてのないことを言った。
『いつか、絶対に話すから……今日は許してね』
本当に、いつか、心置きなく話せるようになりたい。そのかすかな希望がせめてもの誠意になるだろうか。
今はまだだ。
私は過去が口から出てこないように、運ばれてきたビールで流し込んだ。
〇
ビールで流し込んだはずの過去が目の前にいた。
ここは指定された集合場所。ホテルの一室。スイートルームと呼んで差し支えなさそうな高価な調度品の並んだ部屋。
私とユキが通されたその部屋のソファの真向かいに、その人は座っていた。一見して性別が分からない風貌をしている。黒髪のショートカットにリムレスの眼鏡、オーバーサイズだが比較的フォーマルな服装。小柄な男性にも見えるし、飾り気のない女性にも見える。
その人は、見た目とは裏腹に、甘く艶やかな声を私に向けた。
「夏希、久しぶりだね」
相変わらず、同性の私でもドキリとする声だ。私は挨拶に応じた。
「マサキさん、ご無沙汰してます……大学の研究室以来ですね」
頷いて、ユキの方を見る。
「それで、こっちの人がハッカーね」
ユキはニコリともせずに言う。
「自営業のセキュリティエンジニアです」
「冬本之人、この人がD-genesのSTR配列データベースを……」
私が説明不足のユキの言葉を補足しようとしたら、真崎さんが遮るように手をかざす。
「大丈夫、大体わかってるから。それより本題を」
相変わらず、自分のペースで物事を進めたがる人だ。私は本題を切り出した。
「マサキさん、在職中にDNAデータベースの開発のプロジェクトに関わったことがありますか?」
「ええ」
足を組みながら彼女は線の細い顎に手を当て、思案顔だ。
「赤坂君が私に聞けって言ったんでしょう」
本当はそうではないのだが、否定せずに私は言った。
「どういったご関係ですか?」
「随分センシティブな話題から入るんだね」
冗談だというのは分かっているが、私は赤面しかけた。
「まあ、そもそもDNAデータベースなんてシロモノがセンシティブだからね」
DNAデータベースはどの国でも取り扱いが難しいが、私たちの国では特にそうだ。
犯罪捜査の鑑定結果として得られるDNAデータの蓄積については、法令で特に定めはない。国家公安委員会規則に基づいて運用されている。この点もデータベースの登録要件や手続きを法的に整備する必要性が指摘されている。この明確な法的根拠を持たない状態がDNAデータベースをセンシティブにしている理由だ。
でも、と私は切り返す。
「私たちは一般論を聞きに来たのではありません」
「じゃあ何を聞ききたいのかしら?」
彼女は首をかしげるようにして私の顔を覗き込んだ。
「冤罪遺伝学について、です」
マサキさんの表情から微笑みが消えた。
「なるほど。そこまで話したのね、彼。危ないなあ。だからあんなことになっちゃったのね」
軽く発せられたその言葉に私はゾッとした。彼女は相変わらず無邪気に残酷さを取り扱う。
時間がないのは承知していたが、思わず私は尋ねてしまった。
「彼が死んだことは知っていましたか?」
「君がメールで教えてくれたじゃない」
「でも」
「ふふ、まるで彼が死ぬのを事前に知ってたみたいだ、と言いたいのかしら」
真崎さんはどこか会話を楽しむように、微笑んだ。
「まずは、質問に答える前に、前提を整理しましょう。私はあなた達に保護してもらおうと思っている。なぜならオオカミに狙われているから」
「オオカミとは……警察内部の暴力を厭わない集団のことですか?」
私の言葉に真崎さんは少し驚いたような声を上げた。
「あら、見当がついていたのね」
ユキがボソッと皮肉につぶやいた。
「黒いでかいバンにタックルされたあと銃を向けられたら、そりゃあね」
真崎さんはユキの方を向いて言う。
「その割には元気そうでよかったわ」
場違いに善良な言葉を振り撒くのも彼女の特徴だと思い出した。昔は優秀さとその捻くれた言動が好きだったことも。
「安心して、彼らは武装集団と言ってもたいした装備を持っていないから。非公式な部隊だし、主な任務は民間人の捕縛と拷問だからね」
安心できるか、と言いたげにユキは眉根をしかめる。
真崎さんは思案顔で言葉を加えた。
「でも、その襲ってきた彼らが警察組織とどうやって推測したの?」
ユキが答える。
「大した根拠じゃ……悪事をするのにステークホルダーは少ない方が良いし、分かっているプレイヤーの中で武力行使できそうなのは警察だけだったから」
ふふ、と真崎さんは笑った。
「オオカミが警察組織なのを知っているなら話が早いわ」
真崎さんは話をつづけた。
「私も警察の研究者だけれど、彼らを裏切ったから消されそうになっている。後処理にはきっと冤罪遺伝学システムを使われるわ」
恐る恐る私は尋ねた。
「あなたがあのシステムを作ったんですか?」
ゆっくりと回答が発音される。
「私と、赤坂君」
信じられない思いで私は真崎さんを見つめた。真崎さんは少しニコニコしているだけで、特になんの感情も隠していないように見えた。彼女を問い詰めるために事の起こりから話す。
「この事件を最初に知ったのは、赤坂さんに呼び出されてプロジェクトシンドロームの中止を要求されたときです。D-genesの不正なデータベースと殺人事件との関連。赤坂さんはそのデータベースが冤罪を起こすためのシステムだと言う。そしてこのシステムの構築は私が進めているプロジェクトを乗っ取る形で起こっていると」
自分の声が大きくなるのがわかった。
「そこにマサキさんが関わっている?何が何だか分かりません」
「まあ、あなたも関わっている、というか巻き込まれているのだけれどね」
マサキさんはゆっくり左右に首をふる。
「最初から話した方がいいわね。私が大学の研究室にいたときのことから」
〇
「大学にいた当時、科警研と共同プロジェクトをしていた。君はよく知っているよね」
私は苦々しい記憶を思い出す。成果が出る直前になって真崎さんにプロジェクトから外された恥ずかしさや疎外感は今でも自分の嫌な思い出だ。
彼女は淡々と続けた。
「私は遺伝型と犯罪行動学の関連の研究をしていたの」
「関連とは」
ユキが口を挟む。
「つまり、DNAのみから犯人のプロファイリングを行う技術ね」
横目でユキを見ながら真崎さんは答えた。私も専門領域なので思わず口を挟む。
「DNA鑑定に用いられるのは非コード領域がほとんどだ。負の選択圧が働くコード領域よりも多型が多い」
ユキへの説明のつもりだったが、真崎さんが話にのってくる。
「まあ高精度で個人を識別するにはうってつけって理屈は分かるよ。コーディングシーケンスのDNA鑑定も最近多く開発されてきているし」
「SNPで対象のプロファイリングをしたり……」
「だけど、結局新しいDNA鑑定法って現場にほとんど反映されないんだよね」
マサキさんがため息をつくように肩をすくめる。
その通りだ。DNA鑑定はその精度がそのまま証拠としての強さに関わる。そのため鑑定の実験プロセスが適性に行われているか、実験者の手技は十分かといったことが問われる。
だから、犯罪捜査の現場では新しい手法を取り入れる動機は薄い。新たな方法を試してDNA鑑定の品質を担保できなければ、それは致命的な過ちを生むからだ。過去に当時最先端技術であったDNA鑑定を用いて起こった冤罪事件は、今でも負の歴史として犯罪捜査史に刻まれている。
隣の席でしばらく取り残されたように足と腕を組んでいたユキが言った。
「俺もいるんですがね。もう少し素人でも分かりやすくしてくれますかね」
それか話を進めた方がいいんじゃ?と言葉を続けたユキに向かって真崎さんは微笑んだ。その瞬間なんとも言えない不思議な気持ちが私の中に広がった。
真崎さんは言った。
「科警研に入った後も研究を続けたわ。いいところまで行ったんだけどね、結局私の研究は躓いた」
数年前のことを話すマサキさんは、しかし、ずっと過去の出来事を話しているかのようだ。
「犯罪心理学と遺伝学の研究をするにはデータが足りないのよ。倫理的なハードルを超えてデータを大量に収集するのは難しかった」
言葉が一拍おかれた。高級な調度品に囲まれたこの部屋は、人の話し声がないと随分静かだ。多分、防音性が高いのだろう。
「その頃ね、上から打診があった。科警研と、民間の遺伝子検査企業との協業。そこで研究を続けないかってね」
「民間の遺伝子検査会社……D-genes……」
「そのパイプ役はD-genesの研究者として出向した赤坂君。知ってた?彼、元々科警研のポストにいた研究者だったのよ」
「でも彼はD-genes社の情報システム部に……」
「カバーストーリーとしてね。目立たない場所で且つプロジェクトのチョークポイントを押さえられるか」
「カバーストーリー……」
「最初から彼はD-genes社と科警研のパイプ役だった」
指を一本立てる。
「もう一人、登場人物がいるわ。黒田というD-genesの役員は知っている?彼はD-genes社側で冤罪遺伝学システムの責任者だった」
「黒田さんが!?」
立てた指をそのまま振りながら真崎さんは上機嫌に見えた。
「私たちにはカバーストーリーが必要だったの。上場しているカバーストーリーの組織が大量のリソースをつぎ込んでいることを、怪しまれないためのね。黒田正臣、彼はD-genesの中にいて不自然じゃない形でプロジェクトの調整をしていた」
つまり、対外的アピールのための張りぼての計画ということか。真崎さんは思い出すかのように少し上に視線を向ける。
「最初に絵を描いたのは私。でもやっぱり研究が専門だからね。ビジネスの計画を書くのはなかなか難しかったの」
空調もついていない消音性素材に囲まれたスイートルームはやはり物音がしなかった。おそらく外にも声が漏れないようになっているのだろう。そしてそれも真崎さんが計算して場所を選んだのだろうということに思い至った。
静かな空間に、彼女の弾んだ声がする。
「プロジェクト・シンドローム。君がD-genes社にいることは知ってた。だけど、冤罪遺伝学のカバーストーリーにここまで適したビジネス案を起案するとは思ってなかった」
「まさか」
「君の計画は最後のピースも補ってくれた。DNA合成設備が必要になるという大義名分というピースをね」
「シンセバイオ…」
「そう、シンセバイオ。これが最後のピースだった。君のmiRNAの事業、シンドローム計画は冤罪遺伝学に必要なすべてを満たしていた」
私は自分がシンドローム計画の企画を役員会で初めてプレゼンした時を思い出した。てっきり責任者は笹本さんになるかと思っていたが、黒田さんになったのだ。
そして、その際に部下につけられたのが本田君だった……
「そして私達がいた科警研との連携も進んでいった。表の顔、カバーストーリーとして君のmiRNAのプロジェクトを隠れ蓑にしてね」
「どういうことですか」
「つまり、君のシンドローム計画をダシにしてD-genesとシンセバイオ、科警研を繋ごうとしていたの。その裏側で別のシステムを構築しようとしていた」
「別のシステム……」
「それが冤罪遺伝学」
頭をかかえたくなった。なおも彼女の問いは続く。
「冤罪遺伝学の中身は知ってる?」
私とユキの両方の顔を見ながら真崎さんは言った。ユキは私にアイコンタクトした。
私は言った。
「中身は詳しく知りません。確証もない」
「でも、あたりはついてる」
「……不確かですが」
「言ってごらん」
息を吸って私は答えた。
「個人鑑定用DNAを偽造して殺人事件の冤罪を作るシステム、それが冤罪遺伝学ですね」
にっこり笑った彼女の表情が見えた。肯定されたと私は感じた。憶測の説明を続けた。
「D-genesのデータベースには大量の個人のSTR配列が含まれています。そこから冤罪に陥れたい人の情報を任意に選び、シンセバイオでDNAを物質として合成する。これで偽造された遺伝子鑑定用のSTR配列、つまり偽物の生体サンプルが完成します」
「そして?」
「そして、冤罪を着せるためにオオカミが犯罪事件現場に偽造されたサンプルを残せば完成です」
彼女は拍手をする勢いで前のめりに言った。
「少ない情報からここまで的確に読み取れるとは、流石ね」
でも、と続けた。
「一つ足りない」
私は嫌な気持ちになったが、言葉を紡ぐ。
「……そんなに都合よく殺人事件なんて起こらない」
真崎さんは明日の天気の話をするように呑気に言った。
「都合よく殺人事件はそう起こらない。その通り。だったら起こしてしまえばいい」
私は答えた。
「オオカミが殺人事件を起こしている。誰かを冤罪で陥れるための材料として」
彼女は今度こそ、本当に拍手した。
「君は本当に役に立った。黒田に君の案を薦めたのも私。彼、多分君のプロジェクトの中身はそんなに理解できてなかったんでしょうね。だから君からシンドローム計画のアイディアを提案を聞いた後に、私にアドバイスを求めてきた」
彼女は高級そうなソファの手すりを撫でた。
「夏希、君が考えたプロジェクトは裏の事情を抜きにしても素晴らしいものだったわ。技術的にも社会実装する意義としても文句のつけようがない。多分、普通にスタートアップを起こしてもちゃんと資金調達できる」
「…私は、何も知らなかった」
「でも、この短期間でPoCまで漕ぎ着けることも相当よ」
「あ、くそっ」
不意にユキが低い声で呻くように言った。
「アカサカの殺人事件はもしかして口封じだけじゃなかったのか」
訝しんだ後、私も遅れて気がついた。
「あれはテストだった?」
ふふ、と彼女は笑った。
「彼の殺人事件は冤罪遺伝学というシステムのProve of Conceptだった」
「赤坂さんは部下に殺されたわけじゃないと?」
「オオカミが殺して、部下の小西に罪をなすりつけたということか」
私は小橋君が言ったことを思い出した。『やはり小西がアカサカのおっさんを殺したってのは、信じられん』。
彼は正しかったのだ。
真崎さんは後悔を滲ますでも、悪事というスリルに恍惚とするでも無く淡々と説明した。
「私としてはね、これは願ってもないことだった。この冤罪遺伝学のシステムを構築するということは、個人の遺伝子データを大量に取得するということ。すなわち、私の研究が大きく進展することを意味する」
ユキが不機嫌な様子で尋ねた。
「あんたの研究の目的は?」
するりと真崎さんは答えた。
「先天的な犯罪の行動原理の特定。生命の根幹に関わる遺伝的情報から犯罪行為にいたる道筋を説明すること」
ユキは首を横に振る。
「それは犯罪抑止のためか?大した二枚舌だ。あんたが作ったデータベースは人を殺してその罪をなすりつけることが前提のシステムだ」
「犯罪の抑止?そんなこと誰が口にしたの。ただ知りたいだけよ、私は。研究なんてね、誰の役に立たなくてもいいの」
「それで人が死んでるんだろうが」
「私にとって冤罪遺伝学は目的じゃない。犯罪者を含む大量の個人の遺伝子データベースが欲しいだけ。それ以外の結果はただの副産物よ」
ユキは小さく「話にならん」と言って、別のことを聞く。
「殺人を請け負うオオカミが警察なのは分かったが、どんな組織なんだ」
真崎さんは挑発的に言った。
「知ってどうするの?」
「あんたこそどうするつもりだったんだ?俺たち民間人が警察組織の武装集団からあんたを匿えるなんて本当にできると思っているのか?」
真崎さんはまだ微笑んでいたが、少しだけ侮蔑の表情が見て取れた。
「オオカミは、正確には警察組織ではないわ。警察が元締め、発注元のいわば闇バイトの集団」
「闇バイト?」
「そう、だからもしこの事実が公表されれば彼らはトカゲの尻尾切りとして見捨てられるでしょう。逆に言えば、そうなれば私たちの安全が確保できる」
ユキは訝し気に言った。
「さっきの話だと、殺人を実行した後、冤罪を起こすためのDNAサンプルを現場に残すようなことをするんだろう?特殊な技能も必要だし、裏切らないような人間でないとできないはずだ」
ユキの疑問はもっともだ。だが、退屈そうに真崎さんは言った。
「闇バイトはSTRのサンプルを触らない。人を殺すだけ」
「そんな人材…どうやって」
「いるとこにはいるのよ。諜報の世界で仕事にあぶれた人らがたくさん」
渋い顔のユキに、真崎さんはあっけらかんと言う。
「STRのサンプル輸送はコールドチェーンを使う。夏希、君が開拓したルートよ。シンセバイオが持っているコールドチェーン」
後悔する私をよそに彼女は説明を続ける。
「シンセバイオを選ぶように誘導したのは私だけど、実際にルートを開拓したのはさすがだわ」
そんなことを言われてもうれしくない。
真崎さんは続ける。
「ハッカーの君が指摘した通り、寄せ集めの闇バイトのような人材がそんなことを実行できないわ。証拠を残す人は、元締めの警察のちゃんとした工作員が行う。分隊長みたいなものね。まあ、クリティカルな部分は信用のおける人でないといけないしね。元プロが多いとはいえ闇バイトは有象無象だし、思想なんてない」
「分隊長……」
彼女は意地悪な笑みを見せた。
「その一人は、君もよく知る人よ」
信じられない名前が頭に浮かんだ。私が必死に振り払おうとするのをよそに、彼女の声が決定的なことを告げた。
「オオカミの実行部隊の分隊長は本田洋介。現在D-genesに潜伏中の、君の元部下よ」
呆然とした私はさぞ間抜けに見えただろう。だが、心の奥底では最初からわかっていたような気がした。
そうだ、先程の黒いバンの助手席の男……あれが……
声がリフレインする。『いつでも口をふさげるんで』。
本当に彼がこのプロジェクトの実行犯。
乾いた銃声を思い出す。あそこに本田君がいた。
「それは確かな…」
ユキが勢い込んで言い終わる前に、硬質な音が聞こえた。
コン、コン。
ノックの音だ。




