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冤罪遺伝学  作者: 早雲
第一幕
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1. 運命

 人生は配られたカードで勝負するしかない。そして、その究極は遺伝子だと俺は思う。


 『人生は配られたカードで』は児童向け漫画に載っているセリフだった。大人でも達観した言葉に思うが、小学生だった俺は子供心に、こんなもんか、と納得した覚えがある。


 同じクラスには、勉強も運動も出来て、ゲームも持っているヨシイ君と、勉強も運動もまったく出来ない、友達のゲームをただニコニコしながら見ているだけのミサキちゃんがいた。彼らに配られたカードが同じだとはちょっと思えない。


 俺は自分に配られたカードを二人と比べてみる。金持ちではないけど少なくとも俺と妹の二人を育てても余裕のある両親。悪くない成績。それなりに多い友達。自分の容姿は客観的には分からないが、授業参観に来た母は、周りの父兄と比べて若々しく、華があるように見えた。よく親戚から母親似だと言われる俺も、多分見た目は悪くないのだろう。


 手札はどうやら悪くないらしい、と自覚した時、俺は恥ずかしくなった。同級生のミサキちゃんになんだか申し訳なくなったのだ。


 俺が申し訳なく思うこと自体が失礼だと、今にしては思うけれど、当時はいくつかのカードをどうにかして彼女に分けてあげられないかと思った。


 小学校を卒業すると、俺は私立に、彼女は地元の公立の中学に振り分けられた。


 俺は、どうやら生まれる前からカードが配られているということに気が付いた。学校の授業でメンデルの法則を習ったのだ。


 もちろん生まれつき顔や体形が異なることは重々承知していた。だが、親世代、いやずっと前の祖先の特徴が今の俺たちに反映されていることは衝撃だった。


 遺伝学的性質というカードは、生まれる前に配られ終わっている。


 脱力感を覚えた。どうやら、もがけどあがけど、運命じみた連鎖から逃れるのは不可能らしい。


 ひとつ、ため息をついた。


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