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8(視点変更 日比谷幸)

 HITトレーニングと言われる、高強度の筋トレと休憩を短時間で交互に行う運動がある。

 例として腕立て30秒→休憩→腹筋30秒→休憩→背筋30秒→休憩、合計3セットなどなど。


 このように様々なメニューを組み合わせ、体を短時間で効率よく追い込み、脂肪燃焼、筋肉の成長、心肺機能の向上、メンタルの向上、食欲増量、睡眠不足解消、便秘解消、ギャンブル欲向上と、役満のように素晴らしさを兼ね備えた練習をデスマッチ部でやらない理由はなく、日頃からよく取り入れられていた。


 その日も、部活で日比谷幸と雅姫香はHITを行っていて練習メニューは(腕立てバーピージャンプ30秒→休憩15秒→ジャンプ前後クロスランジ30秒→休憩15秒→メトロノーム首ブリッジ30秒→休憩15秒、合計10セット後→蛍光灯連続割りダッシュ1本)だった。

 2人はバーピーの無酸素地獄をやり遂げ、クロスランジによる脚への乳酸地獄を耐え抜き、首ブリッジによる生と死の共演を感じながらーー。


 ボン! ボン! ボン! ボン!ーー!!!


 部室内、端から端まで椅子や机を上手く利用し、横向きで直線に並んだ直管蛍光灯群をその身一つで水着女子2名が素早く割っていくーー。

 ゴールテープのように勢いよく蛍光灯を割っていきーー割れた衝撃で、両者の皮膚が切り裂かれ、血が滲む。

 舞い上がったガラスがあられのように降り注ぎ2人の体を襲った。


 部室内が煙や中世貴族御用達のお薬に包まれる中、2人はゴール地点である、迫力あるガラス壁に向け全速力で体ごと飛び込んだ!!


 バガっっっっっつ!!!!!!!


 人間版、衝突試験映像かのようにガラスが派手に砕けるのを見ていたミナホ楓は防護手袋を付けた手でボフボフと拍手し防護眼鏡を取る。

 倒れ伏す2人に近付き様子を見ていたミナホは「出血はあるけど問題なさそう」と呟くと、手袋を外し暑苦しい長袖の上着を脱ぎ身軽になると、2人の前に水入りペットボトルを置く。


「…楓ちゃん。私と幸どっちが早かった?」

 水を頭から掛け髪を振り払い、そのまま水を一気に飲み干した雅が、血汗を拭いながら聞く。

「雅姫香の方が早かった」

「負けちゃいました…」

 ガラスを払いながら身を起こした幸は鮮血を垂らしながら美味そうに水を飲むと笑った。


 結果に喜び幸にピースする雅に向けて、ミナホは「でも、日比谷幸はさっきおそらく全力で走っていない」と口を開いた。

「な、何言ってるんですか! 全力で走りましたよ。楓ちゃん」

「幸? あなた余裕にも手を抜いていたの?」

 雅に詰められた幸は首と手を振り全力で否定を示した。


「ち、違うんですよ。練習風景を動画で撮影しているって聞いてーー自分の格好が気になってしまって…」

 幸は自分の面積が少ない服(緑色のビキニ)を改めて確認し第三者を意識してしまって、恥ずかしくなる。

「そんなしょうもないことを気にしていたの、このモチモチちゃんはーー」

雅が幸の腹を摘むが、ガッカリした顔を見せ「大変、幸! もっと太らないとモチモチ具合がどんどんなくなってきてる!」と言う。


「嫌味にしか聞こえないです雅さん…それにしても、雅さんも結構、際どい格好していますよね…」

 幸よりも更に布面積の少ないピンク色のビキニを見ながら幸は感嘆の声を漏らす。

 幸の反応に気をよくしたのか、雅は立ち上がり、グラビアモデルのように両脇を挙げて「どう?」とポーズを取る。


 幸は拍手をするが、ミナホは冷静に「案外血とエロは両立しない」と呟く。

「…グーの音もでない正論ね…血を流しながら水着で可愛くポーズを取るアイドルなんて見たことないもの…」

ミナホの指摘を受けて雅はポーズを止めるとペタンとその場に腰を下ろす。


「…似合いますけどね血を流しながら可愛いポーズを取る雅さん」

「え?」

「日比谷幸の性癖は危ない」

「よ、よく見てください、楓ちゃん! 血と水着が合わさり色っぽくないですか!?」

「ますます危ないもう手遅れ」

「幸は女の子が流す血で興奮しちゃう変態女子と、うん。覚えた」


「へ、変なこと覚えないでくださいよ! 私が血を見てドキドキするのは雅さんだけで…」

「…私だけ?」

 間が少し開くと2人は恥ずかしげに見つめ合いそれをしれっとカメラを構えてのはミナホでーー。

「百合は一部に需要があるドンドン取り入れるべき」と2人の顔をアップにとらえようとしていたが、レンズに雅の手が覆い被さり隠される。


「楓ちゃん。どうせ撮るならデスマッチ部らしく、カッコいい姿を撮りなさい」

 レンズから手を離し立ち上がると雅は右手で顔を抑えて、体の角度を調整すると「どう!」と厨二病ぽいポーズを決める。

「「おーー」」

今度は両者から拍手が上がり、雅は満足げに頷くと「ファイヤードラゴン!」と右手に手を当てたまま左手を突き出した。

「何ですか? それ雅さん?」

「実際の魔法放つ時って台詞を言いながら出すんでしょ? 楓ちゃん?」


 ミナホが首を振り口を開いた。「そんなダサいことをして詠唱魔法を放つブームはかなり昔、今やると痛い」

「ブームとかあるんですね…それじゃあ今の異世界の流行りってどんな感じなんですか?」

 幸の質問にミナホは立ち上がり帽子を深く被り、体でリズムを刻む。「早く焼かれる前に消えな低レベル♪ 私とお前は天地レベル♪ 泣いて帰りなゴーホーム♪ それでも残るかプルプルと♪ それならくらいなドラゴンアルティメットファイヤー!」

「今のーー」「何、楓ちゃん?」

雅と幸が困惑気味に尋ねる。


「なかなかやるなブタチャーシュー♪ ブーブーみっともなく詠唱するぐらいならーー」

「ちょと、だから何それ?」

「ラップ詠唱、若者の魔法士の間でかなり流行っている」

「大丈夫? 変な文化取り入れてない?」

「でも、楓ちゃん見てると、なんか楽しそうですよね異世界って、ーーいつか行ってみたいなぁ」

「……ちっとも楽しくない、日本の方がいい。だから、日比谷幸。異世界に行きたいとか2度と言うな」

 突然、真面目な目付きでミナホに見られ幸は苦笑いしながら戸惑う。


「あ、危ないとかですかね? 楓ちゃんがこの前、私に言ったみたいに」

「そう。日比谷幸や雅姫香じゃ異世界は厳しい」

「でも私や雅さん、デスマッチ部でかなり鍛えてますよ」

ミナホにアピールする為に、幸は肌を見せるがミナホは首を振る。


「異世界に転生したら関係ない。全てリセットされる」

「あー確かに。あれ? でも、異世界って強くなって生まれ変われるんじゃなかったけ?」

 自分が持っている知識について雅が聞く。

「…とにかく駄目。異世界に憧れるな、異世界出身の私が危ないと言ってる。それだけで根拠は十分」

 意思が固いミナホを見て雅は場を和ませるように、明るく口を開く。「まぁ、異世界に行くには必ず死ななきゃいけないし、強くなるって言っても、怖さもあるし確かに嫌かも、幸もそう思うよね?」

「そうですね、生まれ変われるって言っても死ぬのは怖いですから…」


 幸は雅に同意しながら、そう言えば楓ちゃんも日本に来る前に異世界で一度死んだんだよね…と思いながら、重い空気を蒸し返すようで、浮かんだ質問をしまい込んでしまう。

「よし、異世界とか死ぬ話とか暗い話はやめやめ。美味しい食べ物とかの話をしようよ」

 雅の切り替えに深く同意した2人は時より、明るい笑顔を交えながら、最近食べたオススメの美味しい物を紹介し喋り合う。


 水着女子2人の血も渇ききり、修復士が差し出したドーナツを食べながら、姦しい雰囲気で部活は過ぎていくーー。

 その雰囲気に混ざれるのか分からないが、デスマッチ部、部長が帰還した。

「水着で練習風景の撮影か、否定はしないが練習中アドレナリンが出過ぎて、露出しだす変態だけにはなるなよ。いくら寛容な動画サイトでも即刻バンされる」

「心配して頂くとも、幸は分からないけど、私は大丈夫ですよ」


「雅さん! 私も脱いだりなんてしませんよ! 別にこの格好も好きでしているのではなく、服が破れたり汚れたら大変なので…」

上米良に言われ改めて自分の格好に気付いた、幸は水着の上からカーディガンのような軽い羽織物をした。

「あれ? 楓さん、日頃幸達が部活で使っている学園ジャージって修復できないんだっけ?」


「無理。作りが雑なくせにしっかりとコピーガードされてて、ついた汚れを落としたり修復したりできない。街中に溢れる嗜好品と一緒、めんどくさい」

「私、この前、練習中にジャージに少し穴が空いてしまって、新しいジャージにしようとしたら生徒会から上下で3万すると言われ、諦めて前のジャージ使ってたんですが、今回、練習で蛍光灯やガラス使うってなったんで、雅さんと相談して水着で練習してたんです…」


「相変わらずのせこい殿様商売だな…今更だが、別に練習中、学園指定ジャージにこだわる必要はないからな、おのおの、動きやすい服なら何でもいい、好きな服装で練習しろ」

「ほんと! ならさ、なさら、幸。一緒のおそろにしようよ!」

「いいですね! ジャージは辞めて学服とかにします?」

「なんで、余計汚れたり、破れたら厄介そうな物選んでるのよ。違うでしょ、おそろと言ったら、先ずは服選びからでしょ。今度服、買いに行こうよ。練習中着る服をさ」


「ぜひ、行きたいです! 雅さんとお揃い着て練習したいです!」

「んじゃ決定ね。先輩と楓ちゃんもせっかくなんで、服皆んなで揃えませんか?」

「悪いがまだ着れる。これで十分だ」と言って首を振る上米良と「私はこの服以外は着る気はない」と今、自分が来ている魔法使いのような服を指差すミナホ。

「そっか、残念だけどしょうがないよね」


 雅が一瞬寂しそうに呟いた。

「でも、雅姫香達と、服選びの邪魔になるかもしれないけど一緒に遊びには行きたい」

「それいいですね! 服選びも兼ねて一緒に遊びに行きましょうね楓ちゃん!」

「となれば、上米良先輩も勿論部長なんですから一緒に遊びに来ますよね?」

 雅が上米良に目を向けると上米良が小さく自嘲気味に笑った。


「どうしたんですか? 上米良先輩? 私何かおかしなこと言いましたか?」

「悪いな姫香。今から浮かれた空気を壊すようなことを言う。ーー3週間後、入江咲也と雅姫香でデスマッチが決定した」

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