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第48話「VS コカトリスVer2」

「無理無理無理無理!!」

「もう無理ぃぃぃいいい!」


 お腹いっぱい! もう、ほんま勘弁してぇぇええ!!


「「「どんだけコカトリスいるのぉ!!」」」


 そりゃ、数多の冒険者が遭難するわけだ!!

 二体ものコカトリスの巣だよ!!


 準備もなく、想定もなければ餌食になるだけだ!!


『コカァッァアアアアアアア!!』


 しかも、(つがい)を殺されたコカトリスは怒り狂って、最初から全力攻撃ッ!

 外で狩ってきたであろう──石化した牛をドカーーーーーーン!! と蹴飛ばしてきやがった!!


「どわぁっぁああああ!」

「きゃぁぁああああ!!」


 全力回避のゲイルとモーラに、


「こなくそぉぉぉぉおおお!!」


 必死に反撃するシャリナ!

 半ばヤケクソ、思いっきり降りぬいたハンマーで牛の石像を粉々に砕くも───。


「ボサっとすんな! ここが正念場やでぇ!」


 疲労でフラフラだろうにシャリナは気丈に立ち塞がり、ゲイルとモーラをバッチリ守る。


「シャリナ……」「シャリナさん」


 ……シャリナが男だったらモーラも惚れてしまいそう。


『コカッ! コカァァッァァアアアア!!』


 しかし、コカトリスの怒りも相当なものだ!

 咥えていた牛の様子から察するに、おそらく狩りに出ていたのだろうが……。

 帰ってきたら巣は全滅し───番も殺され、残った子供も皆殺しにされていたんじゃ、そりゃ怒り狂いもする。


 だから、最初から全力で攻撃し、侵入者を排除せんとする!!


「おらぁぁぁああ! 生意気に何を怒りくさっとんねん!! ここはウチら鍛冶ギルドの領分じゃい!! 鳥風情がウチらの鉱山を乗っとりよってからにぃ! ぶっ倒して鳥鍋にしてくさるわ!」


 だが、シャリナも負けてはいない!

 こんな小さななりでも、農業都市ファームエッジの顔役を務める鍛冶ギルドの長!!

 威勢よく啖呵を切ると、ハンマーをビシィ!! と突きつける。


 ──そして、クイクィと手を挑発!!


 すると、コカトリスは目標をシャリナと見定めたのか、

 まずは小生意気なドワーフの小娘を食らってやるとばかりに、喉に息をため込むと──……。


 ケェェェェッェェェェエエエエエエ──────!!


「ぐぁ! 何やコイツ───」


 けたたましい鳴き声とともに、喉の奥から真っ黒い霧状のものを吐き出したコカトリス!!

 ビリビリビリビリ!! と空気が震えるとともに、振動にのって霧が拡散されていきシャリナにを指向するが、

 シャリナは、ふらつく足に力を籠め、がっしりとハンマーを掴むと気丈にも立ち上がり一気に肉薄し勝負を決めようとした。


「舐めんな、雄鶏(おんどり)ゃぁぁっぁあああああああああ!」


 ゾクッ……。


 しかし、その瞬間、ゲイルは首筋に悪寒に感じた。

 長年冒険者をやってきた肌感覚というべきか、呪具師の勘とでも言うべきか───。


「シャリナ!」


 あの霧は───……ヤバい!!


「伏せろぉぉぉお!!」


 …………って、ズデーン!!


「あべしッ!」

「いったー!!」


 慌てて駆け寄ったゲイルは、みっともなく足が絡んで転倒───あろうことか、シャリナの腰にしがみ付き、勢い余って彼女のズボンをスポーーーーーーン!! と、脱がしてしまう───。


「ぎゃぁっぁああああ!! な、な、な、なにしよんねん!! こないなとこで押し倒すな───って、あーパンツがぁぁあ!」

「ち、ちが───って、シャリナこそ、ズボン脱ぐなよ!!」


 うわ! 花柄だ!!


「アッホォ!! お前が脱がしたんやろがッ!! あーもう、パンツがぁ見んな、嗅ぐな!! 忘れてまえーーー!!」


 可愛らしい花柄パンツを見られたことで顔を真っ赤にしたシャリナであったが、

「ばかー! イチャイチャしてる場合かぁぁあ!」

「「イチャついとらんわ!!」」


 息ぴったりに反論する二人だが、モーラからすれば、パンツ一枚の少女をゲイルが押し倒しているようにも見えなくもない───って、そうじゃない!!


「はよ、伏せなさい!!」


 ブンッ! と、モーラが放り投げた魔法杖がゲイルに直撃、ごきぃん! と良い音がするが、「いってぇな、モーラぁ!」と愚痴るゲイルの頭上すれすれを黒い霧が散っていき、コカトリスの死骸に直撃し───。


「「げぇぇえ!!」」


 二人の目に前で、ピキピキピキ……!! と、石化していくコカトリスの死骸───……。


「な、ななななななあ! なんやこれ?!」


 そ、そうか、これがここの石像の正体……。

 コカトリスの必殺攻撃───。


「……コ、コカトリスの石化攻撃だよッ!!」

「なんやそれぇぇ!」


 知らんわ!!

 ゲイルも噂でしか聞いたことはないが、コカトリスの毒で石化するとかなんとか───ってこれ毒っていうか、石化ブレスだよね?!


「見りゃわかるだろ!! 石化攻撃だよ!! 石化ッ!!」

「見て、わかった時には石化しとる奴やろが! アホォォ!!」


『ケェェェェ!! ケェェッェ!!』 


 ブフォォォォオ……! と、まるで光線を薙ぎ払うようにして、手あたり次第に石化ブレスを吐くコカトリス。

 ブレスに触れたものは、死骸や木材を問わず、み~~~~んな石になっていく!!


「うわ、うわ、うわ!! やばいやばい!!」「ひぇぇぇええ!」


 そして、ゲイルとシャリナにもその危機が!! ほとんど隠れる場所のない、鉱山内のホール状の広場。

 ゲイルはパンツ姿でちょこちょこ逃げ回るシャリナの股座に頭を突っ込むと、

「遅いッ!」

 ──ズボ!

「ぎゃーーーーーー、どこに顔突っ込んどんねんッ!」

「バッカ! 追いつかれるぞ!! いいから黙ってろッ! 舌噛むぞッ」


 パンツ姿のシャリナの太ももが妙にしっとりと生暖かい!


「アッホぅ!! 肌に感覚寄せるな、匂いもかぐな!! スリスリするなぁぁぁあ!」

「してねぇ! してねぇ! 全部してねぇぇええ!! つーか、死ねぇぇぇええ、バーカ!」


 ドタバタと逃げ回るゲイル達を追ってコカトリスも石化ブレスを吐きまくりながらズシンズシンと迫りくる。


『コケェェェェェェエエ!! クェェッェエエ!!』 


 幸いにも石化ブレスの射程は短く、発射速度も遅いが───かなしいかな、ここは密閉空間にして、行き止まりの鉱山奥地!!!!


「ちょ、ちょ、ちょーーー!! ちょっと、こっちに来ないでよ!!」


 そして、せっかくうまく身を隠していたモーラのもとに走り寄るゲイル達に彼女の顔が青ざめる!


「「薄情なこと言うなぁっぁあ!!」」

「薄情とかじゃないわよーーー!! ああああああああああああああ!!」


 あわや3人が逃走開始!


「覚えてなさいよゲイルぅぅぅうう!!」

「不可抗力だっつーーーの!!」


「エエから走れぇぇえ!!!」


 逃走先にあるのは、あるのは冒険者の石像とコカトリスの死体くらいなもので、出口は皆無!!

 身を隠す場所もないと来た!


「やばい! この先って、さっきの行き止まりだよな?!」

 周囲に散らばるベビーコカトリスの残骸に気付いたゲイルが舌打ち一つ。


「だから、出口ちゃういうとるやろ!! ど、ど、ど、どーにかせい!!」

「どーにかって、具体的にどうしろってんだよ!!」


 通路も残り僅か!

 すぐ背後に迫りくるコカトリス(雄)!!


 ───絶体絶命───…………。


「そ、そうだわ!! 盾よ!! なにかを盾に!!」


 た、盾たって……。


「どこにあるんだよ!!」

「探しなさいよ!!」


 あるわけあるか!!

 そんな都合よく盾が落ちてたら苦労しねーよ!!


「えぇい、。放せゲイル!! いつまでウチの太もも、スリスリしとんねん!!」

「してねぇつってんだろ!!」

「ええから、どけ!!───……おらっぁぁああああ来いや、雄鶏ぃぃい!!」


 ゲイルの頭を叩いて、肩車から抜け出すと、シャリナがパンツ姿で憤怒と立ち塞がる!


「盾ならここにあるでぇ!! 二人ともウチの背後に!」

「「はぁ?!」」


 ぬん!! と腕組みして仁王立つシャリナ。

 その雄姿が薄闇にギラリと輝く───。


「ウチが前衛する言うたしな! 鍛冶ギルドマスターに二言はない!……前衛張る言うたら、張るんや!! その心意気みせたるわぁぁあ!」

「「シャリナ……」」


(ふふふ、エエかっこみせとかんとなー)


「「助かった!」」


 スササー! と息ぴったりの動きで、ゲイルとモーラがシャリナの体の影に隠れる。


 ……って、

「はやっ!! 早いなお前ら!!! ちょっとは、躊躇せんかい?!」

「え? だって、俺ら後衛職だし」「前衛は足止めが仕事でしょ?」


 あっけらかんと言うゲイルとモーラにシャリナの表情筋がピクピクと動く───。

 だって、ほら……。


 こーゆーときは──────。


『コカァァアアアアアアア!!』


 お、お、

「お前らぁぁぁぁぁぁああああ!」


 今のはほんの少しカッコつけようと思っただけやろが──────!!

 

「だいたい、こういう時は、ゲイル! 男の仕事やろ!! こんな美少女が身を挺して守ったる言うたら、ドーーーーン! 胸かして、『俺が犠牲になる』キリッ、とかないんかい!!」

「ないなー」


 ずるぅ!!


「アッホォ!! ちっとは考慮せいや……って、ぎゃぁぁああああああああ!」


 ───ボワサァァア!


『コカァ!!』


 背中越しに石化ブレスをもろに浴びるシャリナ。


「ぶわ!! 生臭!! ヌルっとしてる──────って、手ぇぇぇええええ?!」


 石化ブレスを食らったシャリナが絶叫───!!

 見る見るうちに背中や、手の指先からピキピキピキ───と石化していく!!


「あああああああ!! いややー! まだ、ウチこれでもピチピチやのにー! 肌ごわごわになってるぅうう!!」


 いや、そこかよ!!…………って、あれ??

「石化攻撃? こ、これってもしかして───」


 石像に変化していくシャリナにふれているせいか、ゲイルはふと気づく。

 いつのなじんだ気配───……そう、呪具を作成するときの──────。



   「あ、これ『呪い』か!!」



「……せやけど、これで可愛らしいまま石像になれるわ。……パンツ姿なのが玉に瑕やがな──────ほな、さよならやで。ゲイルにモーラ。元気に生き延びぃやー」


 ピキキキキ……。

 そして、顔も石化───しない。


「ほい、【解呪】…………あ。やっぱり」

「………………ん? まで時間あるみたいやな? あー……色々言いたいこともあったし、ウチも後悔だらけや。悪いが生き延びたら伝言頼まれてくれるか?」

「シャリナさん……」


 そっと、シャリナの涙を拭ってやるモーラ。

 その後ろではぬーっと立ち塞がるコカトリスがシャリナを石化して、そのままトドメの一撃を加えんとしているが──……石化まで長いなおい?!


「せや、無事に戻れたら、ギルドのみんなに言うといてくれ───頼りないギルドマスターやったけど、ウチ、お前らのこと皆好きやってでーって」


「わかった……! わかったわシャリナさん」

『コカァァァアアア!!』


 ブーーーーー!! と、コカトリスが吐く『石化ブレス』の霧がシャリナを覆いつくすが、

「ほいほい、【解呪】!」


 ピキ……キ……。


『コカァ?!』


 地味にシャリナを挟んでコカトリスとゲイルが、【石化の呪い】と、【解呪】で真っ向から対抗していくが───。二人(?)以外は気づいていない。

 

「……あー、あと。ヘソクリは実家に送っといてくれるか? 工房の奥の3番目の机の脚に隠しといた。ホンマはエエ人ができたらなんかプレゼントしようと思って貯めといてん」


 コカァァッ──────! 

 コカァァァァ──────!!


「え~っと、あとなんや──。そうそう、ギムリーのやつはホンマ、嫌なやっちゃけど、まぁエルフにしては頑張っとる方や──。せやから、今まででギスギスしとった分、詫びもしたいしなウチの秘蔵のBLコレクションはあいつにやってくれ。墓場まで持っとくつもりやったけど、弟子に見られるよりはええで。あれで口は固いやっちゃし───……って、長いなおい?! まだ石化せんのかい?!」


『ケ、ケェェッェエエエ?! クケェェェェェエ?!』


 コカトリスも動揺しているのか、何度も何度も石化ブレスを浴びせているようだが、一向に石化が進行しないことに焦りを募らせているようだ。


 ……ということは、普段ならとっくに石化しているはずなのだが───……。


「ちょ……ゲイル、アンタ───さっきから何してんの?」

「ん? 解呪してるんだけど?」


「「は??」」


 シャリナの身体に手を当てたまま、得意の【解呪】を発動するゲイル。

 その解呪が当たる部分から石化が解けていき、シャリナの石化は光の当たる背中を除き全く進行していなかった。


「いやー。コカトリスの石化攻撃って、呪いの一種だったんだなーって。バジリスクとか、ゴルゴンの石化と同じ理屈みたい」

「せ、石化の───」「の、呪い」


 イエス。


「シャリナ───……このまま突っ込むぞ!!」

「へ?! このままって───ちょ、ちょぉぉぉおおおお!!」


 グワシッ! とシャリナの身体を持ち上げるゲイル。


「モーラ、手を貸して! 結構重い───……」「ちょ、ゲイルまさか……」

「アッホぉ! 誰が重いねん!! せ、せ、石化してるせいや───って、お前らぁぁああああああ!!」



 ──人を盾にすんぁぁぁあああああああああああああああ!




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