人生は決して後戻りできません。進めるのは前だけです。人生は一方通行なのですよ。 -アガサ・メアリ・クラリッサ・クリスティ- ν 挿絵付
闖入者の言葉に少女が見たものは、ルミネの首元に爪を突き付けている男の姿だった。
少女の拳は闘っていた男の顔面に突き刺さる瞬間であり、元ヒト種の男は恐怖の余りに失神していた。
少女は男の爪撃に対して「流水の型」を使って回避しながら、多段的に攻撃を繰り返しており、あと一歩の所だったと言わざるを得ない。
「なんてこと……」
ぎりッ
「状況が分かったようだな」
「ルミネッ!ルミネを放しなさい!」
少女は失神している男から拳を引いていく。少女に拠って掴まれていたワケではない男は、そのまま地面に崩れ落ちて行った。
少女は男をそのまま置き去りにし、ルミネを人質にしている男の元に近寄ろうとするが、その行動は男の声に拠って抑制されてしまったのだった。
「それ以上近付けば……女を殺す」
「ルミネに手を出したら、アナタ……死ぬ所じゃ済まないわ?もう手を出したのは分かってるけど、それ以上したら保証出来ないわよ?」
少女は眼光鋭く言の葉を紡いでおり、その狂気を宿し殺気を帯びた鋭い眼光を浴びた男はたじろいでいたとしか言えない。
だが、人質がその手の中にある以上、少女の旗色の方がかなり分が悪い。
「それでアナタは……魔族ね?魔族がこんな所で悪さしてていいの?まぁ、魔獣化劣位も魔族と言えば魔族なんでしょうけど……」
少女は現状を打破するべく会話による時間稼ぎを試みていた。ただでさえ分が悪い状況でありながら、目の前でルミネを人質にしている男は、ヒト種とは余程思えない力の波動を出しているのだから、装備が無い少女がラクに倒せる相手だとは考えられなかったからだ。
更に少女はこの男が魔族だとカマを掛けた。その結果相手が何かの情報を漏らすなら善し、情報が聞き出せなくても思考回路が解決策を見出すまでの時間が稼げればそれでも構わなかった。
少女にとって、ルミネが傷付けられる事に替え得るモノなどない……。
「ふっはは、この私が魔族であると知りながら、勝負を挑もうと言うのですか?ヒト種の小娘がッ!」
「そう、やっぱり魔族で当たってたわね。で、アンタは誰の眷属?それとも、誰の領民なのかしら?それによっては事を穏便に済ませてあげるけど?」
少女の投げた言葉は、この魔族にとって想定外の内容だった。
当の本人も半分はハッタリだが、あながち嘘では無い。本気を出せば「魔界」に行ける少女としては、七大貴族と面識があるからこそ使えるハッタリだ。
ちなみに受肉を果たした上で言語を介しているので、この魔族は劣位に分類出来るモノでは無い。失神している男も同様なので昨日、わらわらと湧いていた魔獣化劣位魔族種とは格が違うだろう。
従って、この場にいる魔族達は上位種以上の存在であると考えられる。そうだとすれば、改めて今のこの状況では非常に分が悪い。
少女としてはルミネが人質に取られていなければ……若しくは武器があれば話しは変わるのだが、「この状況では非常にマズい」としか言えず、思考回路的には武力で何とかするのは、お手上げだったと言える。
故に結論として舌戦でチャンスを窺ってみることになったと言うのが正解だ。
「な、何を言っている?ヒト種の小娘がッ!我が領主の名など、口にするのも惜しい。暴食を冠する領主の名など!」
にやっ
非常に重要な情報だった。それを聞けた少女は安堵し、心の中で「勝った」と呟いていた。
「へぇ……そうなんだ?先代のベルゼブブから代わって、まだ「暴食」は空白だと思ってたけど……。そしたらアンタはアヴァルティアか、インヴィディアのところの領民ってコトかしら?」
「なっ?!」
不敵な笑みを浮かべた少女から紡がれた言の葉は、男にとって脅威としか形容し難いモノだった。
何故ならば「魔界」の領主の名を、ヒト種の娘が知っているハズなど無いと思っていたからであり、それは当然と言えば当然のコトだ。
「フィオ、こっちよ!」
少女から投げられた言の葉に因って、男の動きが止まった一瞬を見計らい少女はフィオに声を掛けていく。
そして、フィオはその声に応じて少女にデバイスを投げていた。
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フィオは二人の食べ残しを食べ終わり満腹だった。幸せだった。
そして、眠気を催していた。
「ママ達、帰って来ないなぁ。今日はあんまり遊んで貰えなかったし、フィオはつまんない……あ~あ、つまんないなぁ……」
フィオは独り言を呟きながら部屋を見回しており、遊べるモノを探していた。だがそんな矢先、その視界の中に少女のデバイスが映ったのだった。
「あれ?これ、ママのだ。ママの大事なモノだッ!これを持って行ったら、ママが褒めてくれるかな?」
フィオはそう考えると少女のデバイスを口に咥え部屋を後にしていった。フィオは廊下に出ると、少女の気配を追っていく。
空を飛ぶと少女の気配が薄いので、床を歩いて少女の通った「道」を正確になぞって行った。
そしてその「道」の先に、少女を見付けたのだった。
フィオは少女の元に駆け付けようとしたが、少女の前には対峙しているモノがいて、その横にはルミネが見えた。
そこでフィオは少女の頭の中に直接言葉を送り、会話する方法を選んでいく。
「ママ!ママの大事なモノを持って来たよ!」
「ありがと、フィオ。でも、今は気付かれると厄介だから、アタシが言うまでそこで待ってて」
「うん、分かった」
「いい子ね、フィオ」
こうして少女は千載一遇の機会を狙っていた。そして舌戦と言う手段で、敵の隙を突く事が出来た少女は、フィオからデバイスを受け取る事に成功したのだった。
少女はフィオが投げたデバイスを受け取ると同時に言の葉を紡いでいく。
「デバイスオープン、ハールーンノヴァ!」
「なっ?!そ、その剣はッ!」
男は少女の咄嗟の反応に動けなかった。ルミネの喉元に鋭爪を当てたまま、何も行動が取れなかったのだった。そしてその表情はただただ驚いていた。
それは少女が呼び出した剣を見たからだ。禍々しく複数の刃で構成された漆黒の剣を——。
かつてその剣を「魔界」で見た事があるので尚更のコトとしか言えない。
男の顔の驚きはみるみるうちに驚愕へと変わり、暫くすれば絶望になっていたかもしれない。男は身体を震えさせており、ルミネに当てている爪がルミネの首の皮を薄く裂き、血が滲んで滴っていく。
その事を起因としてルミネは意識を取り戻し始めていた。
「痛ッ……。あぁ、えっと……この状況から考えますと、わたくしは「人質」と言う状況で宜しくて?」
流石に声には出さず冷静に自分の置かれている状況を判断し、心の中で遅延術式を編んでいく。ルミネとしては自分が少女の重荷になっているこの状況から脱したかったが、無理をしてでも切り抜ける事を選ばなかった様子だった。
「じゃあ、アンタに見せてあげるッ!」
「な……んだ……と?」
「デバイスオープン、ベルゼブブの魔石。我が剣に宿れ!」
少女は意図してベルゼブブの魔石をハールーンノヴァへと宿し、その魔石と対話する事を選んでいった……。
「今更となっては、殊更話す事なんて無いが、何故、私に問い掛ける?何時ものように、私の力だけを欲すればいいだろう?」
「そうしたいのは山々なんだけど、元々はアンタの領民らしいのよ……。だから、アンタが話しの白黒付けてくれない?それが、元領主としてのアンタの役目でしょ?」
少女は自分の意識下に於いてベルゼブブと対話し、ベルゼブブとしては要領を得ない事ではあったが、やむ無く応じる事にした。
「ほう……言われて出て来てみれば、確かに私の領民よな?」
「お、お館……様。そのお姿は……?」
ベルゼブブは少女の肉体を借りる形で仮の受肉を果たしていた。身体を奪ったワケではないから身体を自由には出来ないが、その言葉を発するくらいの裁量は得る事が出来ていた。そしてその姿はベルゼブブの姿そのものである。
そんなベルゼブブの姿を見た男は、人質であるルミネを横へ放り投げると、少女の元へフラフラと、縋り付くように近寄って来たのだった。
「私の顔を存じておる……か。だが、スマヌな。私はお前の顔を存じておらぬ。魂に刻まれた契約は分かるがな」
「滅相も御座いません。お館様と、お言葉を交わせるだけで至極で御座います」
「して……何故、人間界におる?」
「しょ、召喚されまして御座います」
「ならば、私とも敵対するか?」
ベルゼブブは端的に言の葉を紡ぎ、男は顔色を悪くさせながら「滅相も御座いません」と返すのが関の山だった。
何故ならば、実力差があり過ぎるのを弁えていたからである。
ヒト種の少女であればともかく、自国の元領主が相手となれば力量を見誤るワケなどない。
魔族は契約に従順だ。召喚は契約であり、契約の内容には絶対とも言える。だからこそ、本来であれば元領主であるベルゼブブとも敵対しなければならない。
更に付け加えるならば、男は人間界に召喚された時に契約を交しているのだが、それ以前の話しに於いて、その魂には魔族として誕生した際に刻まれた契約があり、それを無視する事は出来ないのである。
要するに初期段階の契約に勝るモノはなく、後から結んだ契約であってもそれには勝てる道理がないとも言える。
拠って、男は陥落した。
「で、アンタはアタシとは、闘り合うってコトでいいんだっけ?アタシがベルゼブブの力を使っていたとしても、アンタから見ればアタシは契約外にはならないわよね?」
「この私の身の内に刻まれた契約を剥ぎ取ってくれるなら、そうしなくて済む……」
「その契約を剥ぎ取れば、話しを聞かせて貰えるのかしら?」
少女は情報が欲しかった。そして男の心は既に折れている。ヒト種と見誤っていた力量の差が歴然としているコトに気付いた時点で、男の負けは確定したようなモノだった。
だから男は苦肉の策とも言える提案をした。少女としては闘った所で得られるモノは無いし、それよりは有益な情報を求めた結果、カマを掛けたに過ぎない。
「ねぇベルゼブブ、契約を剥ぎ取る事なんて出来るの?」
「あのなぁ、私は呼ばれてホイホイ出てくる便利屋ではないぞ?」
「はいはい、分かった分かった。で、どうすれば契約を剥ぎ取れるの?」
「はぁ……何も分かってなどいないだろ……」
「で、どうすればいいの?暴食で食べればいいワケ?」
「そんな事をすれば、このモノは消滅するな……。要するに単純な魔力量で契約を書き換えれば良いだけの事だ。どの程度の契約かは知らんが、結ばれた契約の上から再度契約を上書きすれば良いだろうよ。そうすれば結果的に前の契約を剥ぎ取る事になるからな。汝のオドがあれば容易に出来よう?」
「あぁ、なるほどね。簡単じゃない!」
少女はベルゼブブとの話しを終えると「半神半魔」のフォームに変化していった。禍々しい闇と神々しい光に包まれた少女だが、周囲に人影が無いコトだけには注意を払っていた。
何故なら、この姿は少女としては恥ずかしいからである。
「おおぉ、何と!何と……何とも美しい」
「美しい?魔族の美的センスはアタシには分からないけど、悪い気はしないわね」
男は感嘆の声を上げながら、少女の姿を見ていた。そして、そこには既に敵意は存在していない。
斯くして少女は膨大なオドを以って契約をしようとしたワケだが、どんな魔術を編めばいいか分からなかったのは事実であり、適当に従魔契約を男に向かって放り投げたに過ぎない。
だがそれでも尚、敵対心は既に無く従属する事になんの抵抗もないのが幸いして上書き契約はすんなりと成功したのだった。
「さて、じゃあ、質問させて貰うわよ?」
「はい、何なりとマスター」
少女の従僕となった男は膝を付いて頭を垂れており、既に危険は無くなったと感じた少女は元の姿へと戻っている。
「その身体は、どこで手に入れたの?」
少女の質問はストレートだった。舌戦を展開している時ならいざ知らず、既に従属させたモノに回りくどい言い方や誘導尋問をした所で意味は無いから当然と言えば当然のコトだ。
男の格好は旅館の関係者のモノではない。先程の女将の旦那は旅館の関係者そのものであり、この男が手駒とする為に上位種を取り付かせたと話していた。
そしてその前に、この男は「支配級魔族種」だった。何やら長ったらしい名前を名乗っていたが、少女は聞いたその名前をすっかり忘れていた。
支配級魔族種は人間界に於ける生態系上に於いて、魔族種の中で上から二番目にあたる。そしてルミネの本体も人間界に持って来れればこのクラスになるので同格と言う扱いだが、「魔界」に於いてはその限りではない。
魔族は本来魔獣ではない。魔族にも格や序列はあるがそれは階級社会だからこそだ。しかしだからと言って魔族種という魔獣名があっていいかと問われれば、あってはいけないと言わざるを得ない。
要するにヒト種との確執のせいで魔獣として扱われる場合もある為に、生態系上で本来あるべきではない呼称があるのはどうしようもないと言えばどうしようもない事なのだ。
「この身体はこの私を「魔界」から呼び寄せる際の依代として、先代のマスターから与えられた物で御座います」
「で、その先代のマスターってのは誰なの?」
少女は黒幕の核心を突くべく更にストレートな質問を投げるが、男は首を横に振るだけだった。
分かりきっていた事と言えばその通りなのだが、残念と言えば残念なのは確かなコトだ。
「先代のマスターは名乗る事をせず、この私に「装置」の設置を各地にて行うように……と命じられました」
「そうね……。そう言えばアタシ達が見落としてた装置もあったのよね……はぁ。そうしたら、先ずはこの旅館に設置した残りの「装置」を今すぐに解除しなさい。——話しの続きはその後ね」
「はっ!直ちに」
しゅんッ
少女はその機にルミネの元へと歩を進めていた。ルミネは男がベルゼブブの姿に驚嘆した際、拘束を解かれ放り投げられたその場に崩れ落ちていた。
飽くまでも再び人質とされるような事があれば、唱えていた遅延術式を解き放つ算段でその場におり、その為に気絶したフリを通していたと言える。
そんなルミネの元にはフィオがいて、ルミネの顔を舐めていた。フィオは少女にデバイスを渡した後で暫く身を隠していたが、危険が失くなったと感じるとルミネの元へと駆け寄っていたのだった。
「ルミネ、死んだフリはもう良いわよ?」
「なぁんだ……、知っていたんですの?」
「えぇ分かってたわよ?でも、ルミネが人質になるなんて……珍しいわね。何があったの?」
「もうッ!わたくしだって完璧じゃないんですのよ?後ろから不意を突かれて意識を飛ばされれば敵の手に落ちる事ぐらいありますわ」
「へぇ、アイツ。なかなかやるじゃない。ルミネに気付かれないように気配を周囲に溶け込ませるなんて、案外使えるヤツなのかしら」
「アルレさまはアレと契約されたのですから、どのように使おうとも自由なのではなくて?」
「うん、そうよね……。それなら、ルミネ!一つお願いがあるんだけど……いい?」
「改まって何ですの?無理な事じゃなければいいですわよ?」
「あの男用の魔力製素体って造れる?」
ルミネは少女が何を言いたいか分かっていた。だからその想定内の問いに驚く事も無い。だからこそ、その問いに返す言の葉は「えぇ」だけだった。
ルミネとしては「してやられたり」の相手に進んで造りたいワケではないからだ。要するに少女に頼まれたから不本意ながら……と言うヤツだがそんな事を言うハズも無い。
「それなら、一体造ってもらえるかしら?もし、アイツを召喚したヤツにアイツの姿を見られたりしたら厄介だし……そもそもアイツが使っている身体に何か仕掛けられてても困るから、お願い出来る?」
「そう言う事なら分かりましたわ。確かに身内にスパイがいたら困りますものね」
ルミネは少しだけ口角を上げると、魔力製素体作製に取り掛かっていく。
その様子を少女はまじまじと見詰めていたが、少女的には「同じ事は出来ないなぁ」と改めて感じていた。
「全て回収して参りました」
「じゃあ、話しを始める前に、アンタが憑けた上位種をあの人から剥がしておいてもらえるかしら?」
「かしこまりました、マスター」
男は未だ気絶している上位種の元へと歩を進め、その者の前に辿り着くと何やら印を結んでいた。
「マスター、この上位種は要りますか?入り用でしたら差し上げますが?」
「えぇ、そうね。何かに使えるかもしれないから貰っておこうかしら……ねぇ、ルミネ?」
「こんなモノで宜しいかしら?ヒトガタが良かったなら造り直しますわよ?」
「ヒトガタをカード運用してデバイスから出す所を誰かに見られでもしたら流石にマズいから、それで充分よ。それにしても、さぁっすがルミネッ!分かってるぅ」
そんなワケで上位種の依代としては、急遽作製された動物型の素体が充てられる事になった。
造形としてはネコのような姿をしているが背に翼を有しており、新種の魔獣としか言えない形状だ。
まだ気絶している事からその素体の性能を試させる事は出来ないが、「そのうち試させればいっか」と割り切るとそのままカード化してデバイスにしまう事にしたのだった。
「さてアンタも引っ越しよ!」
「引っ越しですか?マスター、それは一体?」
「この身体に引っ越してもらえるかしら?」
「おや?これは随分と素敵な魔力製素体……マスターが造られたのですか?」
「残念ながら、アタシじゃないわ。この魔力製素体を造ったのはルミネよ」
「ほう?これはこれは……」
「イヤなら差し上げませんわよ」
「いえいえ、これ程の魔力製素体をこの私の為に造って頂けるとは感謝の念に絶えず、感激に打ちひしがれておりました」
「残念ながら、わたくしに魅了は効きませんわよ」
「へぇ、魅了なんて使えるんだ?」
「マスターにはこの私の力は届きませんが、よもやこの私の力が及ばないヒト種がまだいるとは思ってもいませんでした……」
どうやらルミネの正体に気付いていない様子の男に、少女とルミネは吹き出しそうになっていたが、追々分かるだろうからルミネの正体をわざわざ教える事はしなかった。
斯くしてルミネが造った魔力製素体に無事引っ越しを完了した男は、その魔力製素体の性能に驚いている様子だった。
そして、元依代は中身を失い崩れ落ち、朽ち果てていこうとしていた。
「なるほどね……」
「アルレさま、何が「なるほど」なんですの?」
「アイツを召喚したヤツはまともじゃ無いってコトが分かったのよ。——アイツが使ってたこの身体、合成魔獣よ。こんな技術が完成してたなんてね……これじゃまるで過去の遺物じゃない!」
「過去の遺物?」
少女は朽ちていく元依代を見ながら言の葉を紡いでいた。そして、掌を向けると火の魔術を放ち、朽ち果てた身体は火に包まれ跡形も無く消え去っていく。
その表情はとても遣る瀬無い様相で、憎々しげな感じが少しだけ大気をヒリつかせている様子だった。




