ハジマリノウタ ν
「最高神」や「主神」と言われる存在がある。そして、それは「創造主」とは別物である。
更に付け加えるならば、「最高神」は神話の数だけ存在している。そして、全ての「最高神」が「仲良し」と言うワケでも無い。
従って、全ての「神」が「仲良し」と言う事も有り得無い。
「神」とは即ち、「意思のない創造主」が星に内包した「概念」だ。
その「概念」が意思を持ち身体を持ち、権能を持ち武器を持ち、その力を誇示しているだけの事だ。
だからその中の「誰が一番なのか?」などと言う事は「概念」としての「神」には意味すら無い。
故に、「神々」を纏める「一番力強き者」、「一番賢き者」、「カリスマ性を持つ者」、「唯一無二の権能を持つ者」と言う不変の真理もまた、「概念」と言う事に他ならない。
それらは言うなれば「不特定多数の者達を纏める為に必要な概念」であり、それの証明書のようなモノだ。
そんな神々にまつわるエトセトラが受肉を果たした結果、神族と呼ばれる生命として存在か確立されたのだった。
道先案内の男の後を追ってポータルを潜った少女は、見慣れぬ土地に足を踏み入れていた。
「では、某はこれにて…」
そう言うと道先案内をしていた男は突如として消えてしまった。少女はその光景に「えッ?えッ?」と困惑する事しか出来無かった。少女は見知らぬ世界の見知らぬ土地に、一人取り残される事となってしまったのだから当然と言えば当然過ぎた。
「ちょっと、本当にこの世界に来るまでの「道」までしか案内しない道先案内人って、どう言うコトなの?!」
「はっはっはっはっ。いやいや愉快愉快!」
「誰ッ!?」
「いやいやいや、そんなに取り乱されますな。先程のは某の式神にて、此処に連れて来るまでの命しか与えておりませなんだ。此処から先は某がお連れ致します故」
「えっ?誰?ってか、式神?」
男は咲いながら、少女に近付いて来た。
先程この男が言った「式神」と姿形こそ一緒だが、その存在感は希薄どころかずば抜けている。
少女はこの男の取っている態度や紡がれる言葉、そしてその柔和な表情に拠って不思議と怒りの感情が融解していく思いだった。
「さて、ようこそ、「高天原」へ。これから、貴女様を某が主の元へと連れて参ります。其処で、お話しをお聞き遊ばされてから、貴女様はお母君の元へと向かう事に相成りましょうぞ」
「あ、ありがとう。そう言えば、さっきの道先案内の式神は「名前は無い」と言ってたけれど、貴方には名前があるんでしょう?教えてもらえるかしら?」
「某はタケミカヅチ・アメノオハバリと申しまする。お見知りおきを」
「タケミカヅチ・アメノオハバリ?それって、2人の神族の名前じゃないの?」
「はっはっはっ。某ら「日の本の神族」は自分の名の後ろに父親の名前を付けまする。そこは人間達とは異なり違和感があるやもしれませぬが、苗字を持ちませぬ故、致し方ないのでございまする」
「な、なるほど…。それじゃ、一番最初に産まれた神族は1つしか名前を名乗らないのね?まぁ、でもそれはいっか」
「じゃあ、タケミカヅチさん道先案内お願いねッ!」
「それではご案内致しまする。そぉれぇ!」
少女は微笑を浮かべながらタケミカヅチと話しをしていた。まぁ、それには意図がある。
何故なら余裕振りたかったからだ。
少女は神族の怖さを過去の事件で、イヤと言う程思い知らされている。だから、少しでも余裕振らないと身体が威圧感に負けてしまいそうになるのだ。精神に肉体を凌駕させていないと、それこそ立っていられなくなるし、そんなみっともない姿は自分が一番許せない。
しかしそんな事を知る由もないタケミカヅチは、少女の前に一匹の「龍」を出現させたのだった。
「龍種?!」
「この「龍」は某の「概念能力」に拠り顕現させました「乗り物」のようなモノで御座りますれば、貴女様に於かれましては、これの背にお乗り頂き、某がこの「龍」を引き連れ、我等が主の元までお連れ致しましょう」
「さっきの式神と同じような感じなのかしら?」
「如何にも」
少女はタケミカヅチの言の葉に従い「龍」の背に乗った。乗り心地はそこまで良いとは言えないが、せっかく出してくれたのだから無碍にする気はなかった。
一方のタケミカヅチは自分の身体を浮かび上がらせると、その「龍」に対して並んでいた。
「準備は整いましたかな?それでは、空の散歩と参りましょう」
「えぇ、大丈夫よ。お願いするわね」
「龍」はその身体を浮き上がらせ、少女を背に空へと舞い上がっていった。ちなみに、少女は龍種と言ったがタケミカヅチが顕現させた「龍」は、4足歩行が出来る龍種の形状と言うよりは、蛇の長細い身体に脚を生やした感じと言った方がしっくり来ると思う。
だがくれぐれも「蛇足」ではない。
「さて、これよりこの「神界」についての予備知識を貴女様にお話ししても宜しいですかな?」
「えぇ、お願いするわ」
「では、おほん」
「先ず「神界」は、他の世界と違って「地球」そのものに存在しておりまする。ただ、人々の目に見える「地球」の「地上」は人間界と呼ばれる世界。そこに貴女様方は暮らしているので御座います」
タケミカヅチは雄弁と言の葉を紡いでいく。それは聞く側には心地の良い「詩」の様な響きであった。
しかし、その内容に少女は疑問を抱かずにはいられなかった。
「えっ?でも、さっきポータルが開いた所には大地があったわよね?地上は人間界なんでしょ?ポータルは人間界に設置されているの?」
「はっはっはっ。聡いで御座いまするな。だけれども差異が御座りまする。」
「人々の目に見える大地が人間界であり、人々の目に見えない大地が「神界」なので御座いまする」
「よって、地球上の大地に設置されているポータルであっても、人間達が見えなければ、そこは人間界ではない道理になりまする」
「それじゃあ、簡単に言っちゃうと、次元の違いで住み分けてるってコトなのかしら?」
「左様に御座いまするな。眼下に広がる大地は通常の「地上」即ち、人間界のある3次元とは別の次元に御座ります。故に、この「高天原」も地球上の違う次元にありまする」
「3次元の生命は下位の次元には干渉出来ても、より高位の次元には干渉出来ない道理なのね?だから知覚も認識も存在も全てが確認出来ないってコトであってるかしら?」
「左様に御座りまする」
タケミカヅチが放っている言の葉は少女には少しだけ難しかった。だけども分からないワケじゃない。
流石に「神界」が地球上に存在しているとは思っていなかったが、過去に「魔界」を見た事がある手前、この「神界」も存在しているコトは明白だった。しかし一方でその話しを信じるならば、例えば人間界で歩いている人のすぐ隣に神族がいてもおかしくない道理になる。
だけれども例え仮に接触しても、ぶつかった感覚は無いのだろう。
だがそうだとしたら、見えない隣人だらけの地球は凄い過密な状態なのかもしれないと考えられたので、少しだけ笑ってしまいそうになった。
今や地球と言う惑星は複雑な「次元」が組み合わさって成立している。
それは本来、「地球」に在ったモノと「テルース」に在ったモノが混じり合った結果から生じているが、「虚無の禍殃」を引き起こした「ソレ」と言う存在が為した結果とも言い換えられる。
地球の大地の上に存在している人や植物、建造物などは「3次元」であり、それと異なる「次元」に「神界」が存在している事になる。
そして、それは他の世界も同様なのかもしれない。
ただし、同じ地球上の大地である事に変わりは無いが、「次元」と言う「階層」を異にすれば、地球の表面上のテクスチャもまた異なる結果を生み出す。
そして高位次元に存在している者は下位次元に干渉する事が出来るが、下位次元から高位次元に対して干渉するには莫大なエネルギーが必要になる。拠って、低次元から高次元への接触は物理的に不可能と言う結論に繋がる。
故に人間界から人が自力で他の世界に行く事は困難を通り超えて至難なのだ。
ただし、「ソレ」が起こした「虚無の禍殃」の影響に因り、3次元より高位次元にある「魔界」と「冥界」も影響を受けていた。
従って3次元の「人間界」へ繋がるパスが本来よりも「疎遠」になり、それぞれの世界から人間界に来づらくなると言う結果を齎しているのが現状なのだ。
逆に「神界」と「精霊界」は3次元の人間界に対して「密接」な関係になったことから、人間界にアクセスし易くなっているのだった。だが一方で「神界」に於いては、それ以上に複雑になっているのが同一次元内に於ける「関係性」と言える。
殊神界に於いては、勢力図の改変が日常的に起きているのだ。
「神」の定義はそれを信じる「人」が多ければ「概念」として定義され、意思のない創造主に内包されていく。そして、人間界と「密接」になった事は、「人」が信じる「神」が増えれば増えるだけ「神界」に於いて新たな「神」が増える道理になる。
更には、それらの新しい「神」は勢力図を塗り替えようと必死になっていた。
旧来からある勢力図は不変的である事から変わりようが無いのだが、旧来からの「神話」を持たない地域に於いて、勢力図はコロコロと変わっていってるのが現状なのだ。
それは偏に魔獣の縄張り争いに似ていると言っても過言ではないだろう。
「まぁ、各所で起きている問題はそれだけでは御座りませんが、もう、某の主の元に着きました故、主の元へと案内致しましょう」
「意外と早かったわね。乗せてくれてありがとう」
しゅたっ
「あれ?さっきの大地とは感触が違うわね?」
「やはり気付かれましたか?ここが正真正銘の「高天原」に御座いますれば」
タケミカヅチは敢えて「正真正銘」と付け加えていたが、少女には意味が分かっていない。だが深く考える事はせずにタケミカヅチの案内に従い歩を進めると、少女の視界に荘厳な社が現れたのだった。
「では、これより、主の社の中へと参りましょう!」
「これが、社?ここまでバカデカいとそれだけで圧迫感があるわね?」
「でもこの中にタケミカヅチさんの主がいるのね…」
ごくりっ
「それでは案内致しまする」
タケミカヅチの言の葉は少しばかり緊張を醸し出していた。少女には何となくだったが、それが分かった気がしていた。
社の中に入るとタケミカヅチは少女を扉の手前の座敷に上げて座らせ、本人は荘厳な造りの扉の前に立ち、扉に向かって話し掛けるように紡いでいく。
扉の横から射し込んでいる陽射しが、まるでスポットライトのように扉の前に立つ者を照らしていた。
「主よ、客人をお連れ致しました」
『此方へ』
タケミカヅチの声は先程より遥かに緊張している様子だ。言葉に微かに宿る語気がそれを物語っている。
少女の位置からではその表情を読み取る事は出来ないが、汗の1つでも掻いているのかもしれない。
タケミカヅチの声に反応し、中から声が返って来ると荘厳な造りの扉がゆっくりと開いていった。
「どうぞ中へ。これより先は呼ばれた者以外は立ち入れない決まりですので」
「貴女様お一人で中にお入り下され」
「えっ?アタシ1人でこの中に?だ、大丈夫なの?」
「なぁに、粗相をしなければ取って喰われるコトはありますまい」
「それって粗相をすれば取って喰われるってコトになるわよね?」
少女はタケミカヅチに促され、恐る恐る一歩、また一歩と足を踏み出し扉の中へ入っていく。その表情は緊張一色であって、それ以外は何も考える余裕がない様子だった。
その中は、言葉で表現する事がとても恐れ多い空間だった。
だけれども表現するならば「きらびやかな空間」と言うのが適切かもしれない。だが、決して絢爛豪華と言うワケではなく、実に質素な造りだ。
そんな情緒溢れる空間の中で少女の目には、何かがキラキラと煌めいているようにも見えていた。
そのキラキラとしてるモノが空間を演出しているのかもしれない。
窓は無く、装飾の類も一切無い。有るのは階段と、その上の座敷を覆い隠す「天蓋」が見えるだけだ。
灯りは全て無数に宙を舞っているキラキラした何かが放っているから、暗く感じるコトはなかった。そして貴人を隠す「天蓋」は薄くヒラヒラとした布にしか見えないが、その中からは優しく暖かい波動が漏れ出していた。
今までに味わった事もない文字通り別世界にある「きらびやか」な空間に一人、少女は入っていく。
だが、その身体は意思に反する様子だった。
それとも、そうしなければならないとでも言うかのような自然な流れで、階段下まで来ると膝が勝手に床に付いたのだった。
それは肺が自然と呼吸を行うように、したいしたくないに拘わらず膝が床に吸い寄せられていったようにも感じられた。誰かに教わったワケでもないので、自然とそうなるように仕組まれていたのかもしれない。
一言で表せば「最上級の敬意を示す事」に意味があるのだろう。
カッコを付けて言うならば、「魂に刻まれた盟約」とでも表現すればいいだろうが飽くまでも余談だ。
『頭をお上げになって。そして、此方へ』
少女の脳裏に声が響いていく。それは何と言うか不思議な声だった。
「声」と呼ぶにはあまりにも繊細で儚げで、その一方で力強く生命の歓びに溢れんばかりの印象を与えながら響く、可憐な「音」だ。
少女は自身の声を発する事無く、その「音」につられるように一歩ずつ足を踏みしめ階段を登って行く。そして再び、天蓋の前で膝を付いていた。
『天蓋の中へどうぞ』
再び「音」が脳裏に響き渡っていく。少女は立ち上がると頭を下げ、天蓋を潜り中に入っていった。
そこにいたのは、白いワンピースをその身に纏い、その上から羽衣をふわっと身に着けている一見幼く見える女の子だった。
キメが細かく艶のある細くてキレイな黒髪を束ねず長く伸ばし、その瞳は金色に輝いている。
その肌は着ているワンピースよりも更に白く見える程の透明感があり、衣服から伸びる肢体の瑞々しさを際立たせていた。
指輪やネックレスといったアクセサリーは身に着けていないが、前髪を留めている「つまみ簪」だけが色とりどりの色を添えていて可憐さを盛り上げている。
そしてその手には玉串を大事そうに抱えていた。
「あたくしがこの「高天原」の主に御座います。名をアマテラス・イザナギと申します。以降、お見知りおきを」
ワンピースの女の子はそう名乗った。
アマテラスが紡ぐその音色は高く透き通っている。その中に気品と気高さを感じる「響き」があり、その「音」に拠って少女の目からは勝手に涙が溢れていった。
「先ず伝えておく事が御座います」
「今回、貴女をお呼び立てしたのは、あたくしでは御座いません。ですが、貴女が暮らしている人間界は、あたくしが治めるこの「高天原」のエリアにあるので、あたくしの遣いを貴女の元に向かわせたので御座います」
「あ、アマテラス様と、アタシの母様は、い、一体どんな関係なんですか?」
「そんなに畏まらなくて大丈夫で御座いますよ?なにも、取って食べるワケでは御座いませんから。ふふふ」
「あぁ、そうそう、質問にお答え致しましょう」
「先ず貴女のお母様と、あたくしは全く接点が御座いません。あたくしと接点があるのは、貴女のお母様の妹であり、姉である御方で御座います。その御方からお手紙を預かったので御座います」
アマテラスの声は詩を紡ぐ様に綴られていた。だが、少女はその詩に疑問が湧いたのだった。
「そ、その方とは、一体?」
「神族の名は、他の神族から聞いてはなりません。自身から問うか、自発的に名乗るまで待たねばなりません。それで初めて「名」を聞く事が叶う事になりましょう。神族の名とはそういうモノなので御座います」
「だから、あたくしが言える事は、その御方の住まう所在だけで御座います。貴女がその地で、貴女のその手でお母様が救い出されることを、あの御方は望んでおられるようで御座いました」
アマテラスの詩は紡ぎ終わり、そのように結ばれた。
少女の瞳から溢れていた涙はいつしか止まっていたが、目の前の女の子に対する畏敬の念は薄れる事はなかった。
「有り難う御座いました」
「「オリュンポス」へ行きなさい。そこにあの御方がおられます。詳しくは彼の地で分かる事になりましょう」
少女はアマテラスの元を辞し社の外に出ると、そこにはタケミカヅチが待っていた。
「やぁやぁ、出て来られましたな!」
「おや?何かお困りごとかな?」
「タケミカヅチさん、「オリュンポス」ってどうやったら行けるのかしら?」
「ふむふむ。そうしたら、「高天原」と「オリュンポス」を繋ぐポータルの元へと案内致しましょう」
「えっ!?そんなのがあるの?」
「左様。友好的な国に対してはポータルが開かれておりますれば、それに入れば直ちに行けましょうぞ」
タケミカヅチは再び「龍」を顕現させた。どうやら連れて行ってくれるらしい。
少女はお礼を言うと、その背に乗るのだった。
「ところでアマテラスさんって、あんなに若い神族なの?」
「若い?!」
ぽりぽりぽり
「いやはや、何と申し上げるべきか」
「えっ?そんなに言い辛いコトなの?正確な年齢を聞きたいってワケじゃ、ないのよ?」
「いやはや、こんな事を言わば、某が主に、どやされてしまいますので、大変申し上げ難いので御座りまするが…」
「「神族」とは、様々な「名」を持つので御座りまする」
少女はその言の葉に「ロキ」の事を思い出していた。確かに心当たりがあり過ぎるからだ。
「拠って、神族の「名」は、「概念」そのものでありまするし、そもそもの話しが「概念」に年齢や容姿などは存在しないので御座りまする」
「年齢や容姿が存在しない?でも、それだと…」
「いやいや、言いたいコトは分かりますぞ」
タケミカヅチが紡いだ言の葉は神にまつわるエトセトラの事だ。だから少女は尚更混乱を深めていった。
「要は、客人が来た際に、自分の事を「どう見せたいか?」で姿形を変化させ形造っているに過ぎませぬ。故に貴女様が見た主の姿が「若く」見えたのであれば、そう「見せたかったからそうした」としか申せませぬな」
「おぉ、畏み畏み桑原桑原」
タケミカヅチはオドオドしていた。
やはり、アマテラスの事をよほど怖く思っているのかもしれない。少女としては畏敬の念を抱く事はあっても、そこまで怖いとは思えなかったので不思議な感じだった。
「概念の捉え方の違いなのかしら?」
そんなこんなで再びタケミカヅチと色々な会話を交え、暫く空の散歩をしていくと、ストーンヘンジのような石造りのサークルが少女の目に留まった。
「もしかして、あれが、ポータル?」
「如何にも。あれが「オリュンポス」行きのポータルに御座いますれば」
少女を背に乗せた「龍」とタケミカヅチはストーンヘンジの横に降り立っていく。少女はそれに近寄ると目を輝かせながら食い入るように見詰めていた。
「ここに入れば、「オリュンポス」に行けるの?」
「如何にも」
「タケミカヅチさんは来ないの?」
「いやいや、それは叶いませぬ。大義名分も無く、他国に入れば、それは侵略と同義」
「それは即ち、「高天原」が「オリュンポス」に戦争を仕掛ける事と同じ意味に成り兼ねませぬ。ですので、某が出来るのは案内まで」
「ですが、貴女様は「オリュンポス」に行く大義名分をお持ちなので、ここを潜っても平気で御座りましょう」
「そう、分かったわ、ここまで有り難う」
少女は笑顔を作りタケミカヅチに言の葉を紡ぐと、決意を固めた表情でストーンヘンジの中央に向かって歩いていく。
そんな少女の姿をストーンヘンジの外からタケミカヅチは見送っていた。
「良き旅にならん事を…」




