第五十九話 元勇者は、元勇者とまた出会ってしまう件について(仮)
「ここは……暗黒の森か……!」
「あの仮面野郎がここを荒らすから、結構ここは大変なことになったみたいでさ。元凶がお前なら、お前をここでやっちまいのが、ベストオブベストかなってな。それに、ここなら、人は居ないから、お前も本気とやらを出せるだろ? 元勇者様」
にやりと、口角を上げてやる。
「気付いていたか」
ネリが、目を細めた。
先ほどまでの、猪突猛進型と言う雰囲気ではなく、泰然たる雰囲気を放っている。
――演技でもしてたってか?
どうしてこうも、元勇者ってやつは、変なやつが多いんだか……。
自分のこの気持ちが、プーメランとなって、返ってくるような気がしたが、決して俺は変なやつではない、と思う。
それに、俺は元勇者だけど、元魔王でもあるし。
――言い訳になってない気がするな……。
「いつから気が付いていた?」
ネリが眉を上げて聞いて来る。
「さっきだよ。さっき。お前が後期高齢者で、しかも勇者と魔王を生み出したとか言い出したところでだ。それにその力。無駄に眩しいその力が何よりもお前が特別な人間だって証拠だろう? 勇者か英雄か、となると、あの勇者の一代前の勇者だって考えたほうがいい。お前がどうしてそんなに生きているのか、また、この国のトップに立っているのかはよくわからないけどな。あの勇者みたいに、何回も魂が転生しているわけでもなさそうだ」
俺は、千里眼で相手の魂を見る。
確かにそれは一代の魂であった。
だが、身体や、その他のものは、通常の人間であり、高齢でもない。
――若返りの術ってのも、ちょっと非現実的だしな……。
いや、待て。
「妖精を使ったのか」
呟くようにその言葉が口から漏れ出る。
妖精の生命エネルギーを使って、自らを若くし、さらにその若さを保ちながら、国の潜入。王族がどういう体系で一族を保っているのかわからないが、もしかすると、ネリは養子なのかもしれない。
こいつからすれば、一族に入ることができれば、後は力でどうとでもなったってわけだ。
先ほど行っていたじゃないか。
――一代前の皇帝と戦った。
ってな。
つまり、戦って殺してその座に着いたってことだろう?
「どうやら、俺の正体をすべて看破したみたいだな」
「ある程度。ってことだよ。でも、どうしてそうまでして生きている? 目的がわからないな」
「言っただろう? 俺は強者と戦いたいんだ」
ネリは一旦、発光している身体を落ち着ける。
これで、漸く目に優しい状況となった。
「一度目の永きに渡る戦争では、きっかけは、魔族と人との戦いだった。しかし、それが人通しの戦争へと発展し。最終的には百年を超える戦争となってしまった。まあ、俺としてはそこはどうでもよかった。強者と戦えるならな。だけど、魔王を倒してからと言うもの、誰も俺とまともに戦うことができる者がいない。
そのときだ。もう歳老いて、俺が勇者としての使命を終えるというときに、ある魔女が俺のことを占った。すると、これから何千年後に、満足ができる強者とある場所にいれば戦うことができるって言うじゃねえか。こりゃ生きるしかないな。と思ったぜ。まあ、表向きは死んだことにして、裏社会で生き残った。そこで黒魔術師軍団を作ったのも全部俺だ。
何せ、黒魔術の研究が、俺が生きるために必要だったからな。
そして、出会うことができる場所に、俺が国を建国した。それがドルー王国であり、裏の実権は黒魔術師たちのして、俺はずっと強者を待っていたんだよ」
「……………………」
――え、こわ……。
強者と戦うために、がんばりすぎじゃね?
と思うのは、俺だけだろうか?
え、だって、その強者とやらのために、1千年以上もずっと待っていたわけだろう? そのために国を作って、空白の玉座で待っていたわけだ。
普通に考えて、そんなことできるやつなんか居ないだろう。
――やっぱり、元勇者って碌なやつが居ないな。俺を除いてだけど。
「でも、ならどうして皇帝になる必要があったんだよ? それも一代前の皇帝を殺してまで、トップに立ったんだ?」
「言っておくが、これまでの皇帝は全員俺が殺している。理由はわかるだろう?」
――強者と戦ったってことか。
皇帝となることができるのは、それだけの力がある者ということだ。つまり、その地位だけは力ある者だけがなることができたということなのだろう。
そして、その地位にたった人物と、こいつは戦ったわけだ。
で、殺した。
――あっさりとしたものだなあー。
あまり好きではない。
「で、やっとその魔女とやらが行っていた時期になったから、自分自身でその地位に座って待っていたってわけか?」
「ああ、転生者がこの国に生まれたのはもちろん知っていた。それに、勇者と魔王が居ることもな。俺は待っていたんだよ。そのどちらかが俺に向かってくることをな。で、お前は見事に勇者と魔王を討ち取った。すぐに俺のところに来ると思ったのに、一向に来る気配がない。だから、ちょっとばかし策を弄させてもらった。革命軍はそのためのものだ」
「ってことは、ここでこうやって俺と対峙しているのは、すべてお前の思い通りってわけかよ」
ユージンが見た未来もすべて、俺を誘導するための布石にすぎなかった。国という体系もすべてそうであり、どんな思いも、どんな願いも、すべてこの瞬間のために用意された。偽者でしかないってか?
――おいおい、そりゃ舐めてるよね。神様。
盛大にため息が漏れた。
これ以上は、もういいな。
「ネリ・マリオネット。お前の本気を出してみろよ。出したことないんだろ? 今の状態で」
「ははははははは!!」
ネリは、大声を出して笑い出す。
「さっきまでの俺にさえ、手も足もでなかったお前が、俺にそんなことを言うのか?」
と言い、再度ネリの身体が発光する。
熱気がまた襲ってきた。
「面白い冗談だな。だが、この状態の俺相手に互角でやってから言うんだな」
「知ってるか?」
俺は、上着を脱ぐ。
そこには、ある鉱石が縫い付けてある
「この発光石があるとな、力が抑制されるんだよ」
「ほう、つまり、今までは全力ではなかったと?」
「全力だったさ。だけど種類が違うわけ」
その服を脱ぎ、再度上着を着た。
発光性の服は、俺の手の上で粉々になり消え去った。
――力を抑えた状態でどれだけの力を使うことができるか試してみたけど、まあ充分だな。
力のコントロールの良い練習になった。
――ここからは容赦しない。
俺は、ネリに向けて手を伸ばす。
「秘儀――天照の嘆き――」
ネリが存在している空間が歪みだす。
そのまま、ネリの身体が変形し、押し潰れるように、ぐにゃぐにゃに鳴り出した。
しかし、
「リリース!」
ネリが言うと、その空間のゆがみは押さえられた。
「その力が、お前の力か?」
ネリが嘲笑に含まれた笑みを向けてきた。
「それくらいなら、俺も使えるぞ。もしもそれが俺に対する奥の手だったとするなら、諦めたほうがいい。俺は基本的にどんな力でも使うことができる。そして、そのすべての力の頂点に立つのが、この太陽の力だ!」
「すべての力の頂点に立つ力ねえ」
俺はネリに向けて一歩踏み出す。
「もしも、お前の力が、頂点に立つ力なら、その力を打ち破る俺の力は頂点の頂点の力ってことになるのか? だとすると、どんな風に表現をしたらいいんだ? 神の力か?」
「流石に減らず口が過ぎるぞ」
ネリの足が、先ほどと同様に踏み出される。
しかし、先ほど対峙したときにくらべて、倍ほどの速さだった。おそらく俺を本気で倒しに来たのだろう。
――まあ、今度は見えるけどな。
毛穴の数まで認識できるわ。
ネリの太陽の力とやらを込めた右拳が、俺の顔面に来る。
俺は避けることなく、それを受けた。
「なんだよ。受けてみると、そこまでじゃねえな」
「なに!?」
「お返しだ。耐えろよ?」
言って、俺はネリの顔面に、拳をくれてやった。
ネリは、そのまま、数百メートル吹っ飛ばされていく。




