第十三話 元勇者は、昔懐かしむ件について(仮)
周りの霧を腕を軽く振って、一瞬にしてその場から消す。
業火に焼かれて生きているはずのない俺に対して、周りの人間は全員が驚愕の眼をこれでもかというほど見せる。
「さあ、早く次だ次!」
俺は、周りの人間をせかせてやる。
先ほどの一撃はいい一撃だった。流石に俺も無傷というわけにはいかなく、右腕の半分ほどが焼けどによって赤く染まっている。
周りの人間が考えているのは、俺が魔力を使って先ほどの攻撃を凌いだではないかということだろう。だが、残念ながらそんなことはしていない。
気を流すと書いて、流気法。
それが俺が魔力を使わなくても先ほどの天からの光の塔を最小限のダメージで耐えた技の名前だ。
攻撃をそのまま受けるのではなく、自身の周りに渦巻く気、また空気の流れというものを操り、また身を任せることによって、すべてを流す技だ。
――流石にちょっとなまったかな。
心の中で、自分の感覚の鈍さに苦笑する。
すでに第三闘技場の半分は半壊している。この半壊の責任はどこが取るのだろうかと思っていると、おびえていた周りの中で一番の勇者が、閃光一撃、突撃して来た。
見たところ、近接部隊の中でも上のほうだとすぐわかる。
俺は突撃してきた相手の剣を首を横に曲げることで軽く避けて、それを戻す反動を利用して、相手の左の頬に綺麗な右フックを見舞ってやる。
ドン!
という大きな音と共に、相手は地面に突き刺さった。
――まずは一人と。
それを見て、残ったメンバーは各々に実感するだろう。
俺という人間の怪物度合いってやつを。
だが、相手は昨日相手をしていた甘ちゃんたちではない。それなりに訓練を積んできた精鋭部隊だ。
一人の人間が大声を上げて、周りを鼓舞する。
――まるで俺が悪者みたいだな……。
それからは、一人ずつ、おそらくそのとき出すことができる最強の攻撃を俺に向かって放ってくる。
問題なのは一発の威力ではないのだ。
これまで誰一人俺に直接的に攻撃を当てることはできていない。
つまり、大事なのはここでは速さである。一発の重みではない。
――って言っても、相手の攻撃を予測して避けてるから、そういうのもかわいそうかな。
自然と俺は笑みが出た。
剣士、やり使い、双剣使い、アサシン、弓使い、それぞれの相手と戦闘をしていると、かつての仲間たちを思い出す。
世界での役目を終えて、その世界からは自動的に退場となるのが、俺のお決まりだった。
だから今思い出すのは、一つ前の世界での仲間たちだ。
いつもは別れを言ってから世界を去るが、あのときは急すぎてそうはいかなかったから、もしかすると自分の中で少し悔いがあるのかもしれない。
計25人の人間を仕留めた。体感的には約三分ほどの時間が開始から経ったと思う。
――近接部隊は、もう終わりかな?
後は中距離と遠距離の人間だ。
遠距離部隊は、今度は先ほどよりも強力な魔術を行使しようとしているのが見える。総勢十二名ほどだ。
――ってことは今回りにいるのは15人か……。
いいウォーミングアップにはなった。
これからは、相手が中距離タイプ、つまり魔術と魔法を行使しての攻撃が多くなる、となると、魔力が使えない俺は、今度はこちらから攻撃をしに行かないといけない。
「サンダーライジング!!」
飛んできた雷は俺を避けて地面に落ちる。
――ふむ。
俺は一瞬で、先ほど攻撃を放ってきた人物の目の前に移動する。これは身体能力を使っての移動だ。
俺の足腰は普段の農業でここまで鍛えられた。(流気による作用もないことはない)
「ひっ!」
「また来年!!」
相手の首元に軽く手を入れると、白目をむいて倒れた。
――また来年あったら、嫌だな……。
自分の言葉が要らぬフラグになりそうだったので、そこからは無言で攻撃することに決めた。
それから一分もしないうちに、中距離部隊も一層する。
――残りは遠距離か。
見ると、まだ先ほどの攻撃の半分も魔力が溜まっていなかった。
「く、くそ!」
「化け物目!!」
「もう、これで打つか?」
「駄目だ。さっきのやつ以上じゃないと!」
「だけどどうするんだよ?」
魔力を溜めている状態では、あちらから俺に攻撃をすることはできない。
――はあ、仕方ないか……。
「おい!」
俺の言葉に相手は見るからにおびえる。
それが少し不憫に思える。
「いいぞ。待ってやる。その代わりさっきの攻撃の二倍以上の威力にしてくれよ」
先ほどの攻撃でも腕にダメージを負った姿を見ていたものは、俺のこの発言が愚かなものだと思うだろう。
俺もそう思う。
だけど、少し自分の力を試してみたい気持ちになる。
初撃を喰らったときに比べれば、かなり良い感じに身体があったまってきた感じがある。
流石にノーダメージとはならないだろうが、魔力を使わずに、腕一本で凌ぐことができれば上出来だろう。
しばらくしてから、目視でも、さっきの2倍、いやもしかすると3倍くらいの魔力量を感じることができる。
「いいねえー」
「調子に乗ったことを、後悔させてやる」
一人の男が言う。
「今から放つ攻撃は、三大神撃のうちの一つ。神の天撃だ。これを凌げるものなど居ない! ましてや魔力のないお前に凌げるはずはない!」
「そこまですごい攻撃だったら、お前らも危ないんじゃないのか?」
「覚悟はできている」
「そりゃ、結構、それじゃいいフラグと立ったところだし、さっさと打てよ。その攻撃を」
「死ねえええええええええええ!!!!!」
神の天撃!!
上空に黄金に輝く巨大な大砲が出現した、
それがゆっくりと俺に向けてその砲先を向けてくる。
神の力を実現するといわれる神撃。
俺はツバを飲み込んだ。
その砲代がゆっくりと輝きを放つ。
まるで太陽がその場に、出現したかのような光が照りつける。
目を一瞬細めた瞬間、砲台から巨大で強大な砲撃が、俺に向かって放たれた。
俺はそれに向けて手を掲げる。
「流気、秘儀の段、奥義、流水のごとし」
すべての世界の気を操る意識を持つ。
それにより、俺は空間を掴むことができるようになる。
黄金の砲台から放たれた黄金の砲撃を、砲撃ごと上空に向きを変える。
上空が光り輝き、その光は、すべてを照らした。
振動により、鐘がなる。
しばらくして、通常の景色へと戻った。
――危なかったあああああああああ!!!!
調子に乗るのは本当によくない。
もしもこのままあの攻撃が地面に落下でもしていたら、俺は無事に自分を守ることはできたかもしれないが、辺り一体は火の海だ。まずこの学園は崩壊し、もしかすると王都そのものがどうなっていたかわからない。
何も考えないで何かを発言するべきではないな。と反省する。
――というか……。
俺は目の前で尻餅を付いて、腰を抜かしている魔術師たちを睨む。
こいつらもこいつらだ。
いくらなんでも、煽られたからって限度は考えなあかん!!
そういうところ弁えないと、将来は生き残って行かれへんからね!!
という思いを込めて、軽く成敗をしてやった。
「さてと……」
――のこりは一人か。
先ほどの砲撃に関しては気になることがあったが、それは一先ず後回しだ。
「さてと、約束通り、最後の猛襲を抜けてきましたよ」
後ろを振り返ると、一人たっているものがいる。これまで成り行きを遠くから見ていた人物だ。
「正々堂々一騎打ち、しますか?」
「面白い冗談を言うね」
ユージンは微笑んだ。
「正直、君への評価をかなり間違っていたみたいだ。君と戦って一秒でも立っていられる想像が浮かばない。私の負けだよ」
ユージンはそう言うと、剣を置いた。
「ふう……」
――最後のは疲れた。




