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転生した勇者が、同じく転生した魔王に世界を救えと催促される件について(仮)  作者: ふぉるてっしも
元勇者は絶対に目立ちたくないけど、元勇者だから目立っちゃうよね。な件について(仮)
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第十九話 元勇者は逸材を見つける件について(仮)


 まあ当然といえば当然なわけだが、俺はもちろん次の干渉力などを見る検査でも軽くSSS評価をもらった。

 何か途中で俺の力を縛る力が働いてきたが、そんなものは軽くあしらってやった。おそらくそれがミアの力なのだろう。

 ちなみに、ミアはA評価であり。俺の次にいい成績である。シャルは控えめにB評価にしていた。

 一方ユリアは検査を受けていなかった。

 彼女が検査を受けていない理由は一つ。高級貴族であるからだ。つまり、取り巻きの検査を見るためにここに来ているというわけらしい。

 俺はそれを取り巻きの会話から知った。

 まさか貴族の中でも高級貴族と揉めているとは正直気が重くなるが、一応勝利すれば不問にしてくれるらしいしな。まあ、貴族がどこまで庶民との約束を守るのかは知らないが。

 ―万が一のときはやっちまおう。畑のために。

 俺たちは最後の検査場である第二訓練場へと向かった。俺たちの動きに合わせて大勢の群れが同時に動く。


「ええ、では、ここで行うのは、剣術の適正を見る試験を行う。私たち聖騎士が君たちの相手をして、君たちの現状がどれだけのものなのか、それと剣術に対しての筋なんかを見るわけだ」


 俺たちが入ると、おそらくこの検査の責任者であろう聖騎士の男が説明を開始した。

 男は、筋肉隆々であり服の上からでもその主張は激しいものである。髪は角刈り。背は俺よりも頭一つ分は高い。

 うん憎たらしいな。

 俺は基本的に自分より背の高いやつが嫌いだ。だって、そういうやつは何をしてもある程度格好が付くからだ。せこいよね。

 そして、とりあえず俺みたいな中途半端な背の人間よりかモテる。俺が勇者だった時代も結局背の高い剣士と魔法使いのほうがモテてたもん。

 したがって、俺はなんとなくその聖騎士にメンチを切ることにした。


「それで、まずは誰から行くかね?」

「ちょっといいかしら?」


 ユリスが聖騎士に近寄る。


「私は訓練生二人による模擬戦を行いたんだけど」

「そんな勝手なことは――」


 筋肉聖騎士の目がユリスの胸元へと向かった。

 これは彼が別にむっつりスケベというわけではない。いや、そうかもしれないけどおそらく違うだろう。

 理由はユリスの胸には彼女が高級貴族であるということを示す胸章があるからだ。金でできた輝く五つの星とその下に湾曲したリボンがあしらわれている胸章。

 なんともダサいと思うが、それが高級貴族だけが付けることが許されたものなのだ。


「し、失礼しました! 模擬戦ですね。すぐに準備いたします。おい! お前らすぐに動け!」


 筋肉聖騎士が、その筋肉が一瞬で収縮したかのように縮こまり。部下に素早く指示を向けた。


 ―おいおい。その筋肉はなんのためにつけたんだよ。こういう貴族に対して鉄拳制裁を行うためじゃないのかよ・・・。


 俺は心の中で心底あきれ返った。

 聖騎士ともなれば、貴族とそうでないものの差はなくなり実力主義に変わるのではと淡い期待をしていたが、見事に裏切られた。一回り近く離れている小娘に指示され、へいへいと従うとは……。情けない。

 そんなことを俺が考えていると、模擬戦の準備は粛々と進められていた。

 そして、あっという間に準備が整う。

 ユリスが俺たちに嫌らしい笑みを向ける。


「じゃあ、これからミアとその男で模擬戦をやりましょう。それで最後の勝負を決めるわよ」


 ―へ?


 いや、まあわかってたよ? 多分そうなんだろうなあってことは、でもさ。どうして、何の確認もしないで勝手に決めるわけ? 馬鹿なの? これだから貴族は嫌いだ。

 俺は少し感情が高ぶってきた。これは最愛のものが人質に取られているために起こっている不安からだろう。

 ああ、今すぐにでも戻りたい。そして土をいじってやりたい!


「まあ、安心しなさい。真剣で行うわけじゃないわ。木刀よ」


 そういうと、ユリスは俺に一本木刀を放ってきた。俺はそれをキャッチする。


「話は簡単。相手の急所に先にダメージを与えたものの勝ちよ。寸止めでもいいけど、勢い誤っても仕方がないわね」


 そこでまたユリスの嫌らしい笑みが出た。


「ちなみに審判はこの人がするわ」

「喜んで!」


 ユリスにそう言われたのは、先ほどの筋肉聖騎士だ。お前ほんと何やってんだよ!


「心配しなくても大丈夫よ。ちゃんと剣術に関しての適正はしっかりと審判が見てくれるから。でもすぐに負けでもしたら判断できないから最低評価だろうけれどね」


 ユリスがそう言うとケラケラと笑った。

 おそらくミアという女性はかなり剣術ができるんだろう。

 そして、魔眼で見た俺のステータスから俺が剣術ができないと判断したわけだ。

 俺はユリスのような魔眼を持っている人間から己の力を偽る術をしっている。そのため、ユリスは本当の俺のステータスを見ることはできない。

 しかし、俺はそんな中でミアよりも圧倒的な力をこれまで見せた。なので、まだそれに固執している理由はプライドだろう。だから、自分の意地を通してしまっているわけだ。

 そして、他にも理由がある。

 俺が圧倒的な魔力と干渉能力を持っていることは先ほどの検査から疑う余地はない。平民風情がそんな力を持っているのは確かに特殊だ。

 だが、それが今までなかったわけではないのだろう。一芸に秀でている人間なら平民からでも出てくることはある。そういった類のものは例外なくどれかがまったくできないものだ。そんな人たちを俺も今まで見てきた。

 どれだけ鍛錬をしようとも所詮は平民、血や権力に勝り、誰よりも自分の力を効率よく鍛えることができる貴族には最後には負ける運命だということだ。

 だからユリスは俺を魔法使い型だと判断した。

 魔法使い型は、体を使うことが不慣れである。だから、剣術ならば自らの配下のものが勝つと判断したのだろう。

 そして、今までコケにされた恨みをここで晴らす目的である。それが言葉と態度からひしひしと伝わってきていた。


 ―はあ、このくそ貴族が!


「俺はここでもある程度力を出して勝てばいいのか?」

「そうね。だけど、あのミアって子はあまり傷つけないであげてね。ご主人が無能だからってあの子は何も悪くないから」


 俺もミアには同情する。

 彼女はかなり素質がある。これから適切に鍛えればかなりの位まで行く人材だ。

 だから、こんなところで折れなければいいが。


「はあ、わかったよ。俺も畑のためなら、馬鹿でもご主人様の言うことをなんでもしてやるよ」


 その言葉にシャルがにっこりと微笑んだ。まるで自分が褒められたとでも思っているみたいだ。うん。俺の言葉は嫌味だからね?


「じゃあ、両者位置について」


 筋肉聖騎士の言葉で俺とミアはお互いに5メートルほど離れた位置にて対面する。


「あんたも災難だな。こんなのに巻き込まれて、いやほんと申し訳ない」

「私は、お嬢様の言うように動くだけです」

「ふーん」


 典型的なご主人様に使える執事やメイド、いや奴隷に近い感じだな。二人がどれほどの信頼関係で成り立っているかしらないがかわいそうに。


「でも、君は気が付いているんだろ? 俺が君より剣術も強いってことは」

「ええ。今ここで対面しただけで私は逃げ出したいほどに圧力を感じています」


 そう。俺はミアにだけ圧を掛けていた。

 これで、棄権でもしてくれたらと思ったが、この感じでは無理そうだな。


「そんなにあのユリスの命令が大事なのか?」

「あなたには関係がありません」


 それもそうだな。

 ここで変に相手の家の関係性に口を出しても火に油を注ぐ結果になるだろう。


「そうだな。すまん」

「いえ」


 二人の間に筋肉聖騎士が入ってきた。


「それでは、ただいまより模擬戦を行う。あくまで生身の肉体で戦うことを主としているので、魔法や魔術による身体能力強化などは禁止とする。それが発覚した場合。その瞬間にその者の敗北とする。いいな?」


 俺とミアは首肯した。


「よし」


 筋肉聖騎士は、それから二歩ほど下がった。

 そして、片手を高く上に上げる。


「では、はじめ!」


 腕が勢いよく下ろされた。

 仕方がない。やるか。

 俺はまず相手の力量を測るために、あえて攻撃をある程度受けることに決めた。

 開始の合図と共に、ミアが身を低くして俺に向かって高速で移動してくる。普通ならこの距離では捕らえるのも困難な速さだ。聖騎士への入隊が決まっているとはいえ、まだ正式に聖騎士に入隊していないにも関わらずこれだけできるとは。おそらく幼いときからかなりの訓練を積んできたのだろう。

 だが、相手が悪い。

 俺は軽く、それを見切って、ミアが最初に狙った俺の足への攻撃を、軽やかな脚裁きを使い半歩下がる程度でそれを避けた。

 ミアは一瞬目を見開いたが、すぐに冷静さを取り戻し、空を切った木刀を胸の前まで持っていき突きの体制に入る。

 俺はまだ、特に行動を開始はしない。

 ミアの後ろで「いけえ!」というユリスの叫び声が鳴り響いていた。意外に熱いところもあるもんだな。

 ミアがそこから高速連撃の突きを放ってくる。

 右、左、上、下と、縦横無尽に木刀の剣先が向かってくる。


 ―うん。いいセンスしてるな。


 俺はそれを最小限の動きで避ける。体にぎりぎり当たらない距離だ。

 俺の動きに、ユリスをはじめ、流石に群衆も驚きの表情を見せていた。

 俺はミアの攻撃を避けながら周囲を目を向けて見ている。ちなみにシャルは間抜けな顔をしていた。


「君いいセンスしてるよ」

「それはどうも!」


 ミアは突きでは相手を捕らえられないと見て、突きを放った体勢から木刀をそのまま俺に向けて放とうとする。

 木刀が俺にわき腹に迫って来た。


「その攻撃はあまりお勧めしないな。特に自分より強者と戦うときはやめたほうがいい」


 俺は、ミアとの距離を一瞬でつめた。俺にはもう木刀は届かない。

 ミアはそこで止まる。


「その攻撃は突きの体勢から力をこめて剣を横に振らないといけないから、一瞬の硬直ができる。だから今みたいに懐に入られる危険性がある」

「くっ!」


 ミアが俺から距離を取るために後退した。


「それに、腕を伸ばした状態で懐に入られたら、攻撃のしようがないからな。しかもあの攻撃はもし成功しても大した有効打にはならない。剣を加速させる距離がないからな。まあ加速系の魔法とかが使えたら話は別だけどね」

「ご忠告ありがとうございます」


 ミアは木刀を構え直した。

 俺はそこで微笑んだ。いやあ、いい素材に出会うと少しテンションがあがるもんだな。

 あれだけの突きを放っておきながら息切れを起こしていない。体力も十分といったところか。


 ―なら、俺も少し力を出すか。


 俺は木刀を自分の正中線の前に両手で構えた。


「ふん。木刀ごときを両手で持たないといけないくらい、貧弱なわけね。情けない男だわ」


 ユリスがそういうのが聞こえてくる。

 まあ、大体は片手剣が主流だろうな。俺もそれができないわけじゃないが、これはミアに対しての、土産だ。こういう戦い方をするやつもいるんだということを伝えるために。

 ミアは俺の構えに、油断することはもちろんしない。それよりか、より一層集中しているように見えた。


「来いよ」


 ミアが今度は大きな横ぶりの攻撃を俺に放ってくる。

 スピードで追い詰められないならパワーということだろう。そして、俺が構えたことで避けはしないと踏んだのだろう。

 その予想通り。俺はこの攻撃を受けるために、体ごと俺に向かってくる木刀にこちらも木刀を向けた。

 俺が持っている木刀と相手の木刀が衝突する。

 ミアの木刀は適切な距離による加速により、その威力は先ほどまでの非ではない。そして迎えた俺は少し体を横に動かしただけだ。

 つまり、その場にいる誰もが、俺が持っている木刀がミアの木刀の攻撃により吹っ飛ばされると思った。


 ―が、そんな予想は見事に俺が打ち砕いてやる!

 ガコン!……。


 木刀がぶつかる音がして、ミアの腕が止まる。


「いい攻撃だったけどな。残念」


 対する俺の構えはそのままだ。

 今、ミアの攻撃により吹っ飛ばされると思われた俺の木刀は、動くことなく俺の構えの一部のままであった。一方ミアの木刀は俺の木刀に当たって加速をやめ動きを止また。

 俺の木刀と触れたとき、ミアにとってはものすごく太い大木を思い切り叩いたような衝撃が跳ね返ってきたはずである。


「覚えておくといい。正中線をしっかりと見極めることができれば、力がなくても大抵の攻撃は受けきることができる。そして――」


 俺はミアの木刀を軽くいなし。その剣先をすっとミアの首元に触れさせた。

 普通なら、こんなに簡単に首元など取れない。


「相手の呼吸を盗むことができれば、こんなに簡単に相手の急所を突くことができる」

「はは」


 そこで初めてミアが人間らしい表情を見せた。苦笑いという形でだ。


「私の師匠と同じことをいいますね。……完敗です」


 ミアは手から木刀を離し、両手を挙げた。


 うおおおおおおおおおおおお!


 それを合図に第二訓練場は大きな歓声に包まれる。

 まさかの田舎者が、高級貴族の従者にすべての適正検査で圧倒しただけでなく。その直接対決をも完勝した。しかも相手から吹っかけた勝負である。ということは不利であるはずの状況を引っくり返したわけだ。しかも正々堂々と。

 その事実が、今まで高級貴族に対して不満のあった連中を中心に、テンションを上げる要因となったのだろう。

 まったく、当事者からすれば盛り上げて欲しくはないんだがな。だが、悪い気はしない。


「お疲れ様」


 シャルが俺にねぎらいの言葉を掛けてきた。


「お前の言う通りにしたんだ。休みの日は畑に戻るからな」

「ええ、いいわよ」


 なんか。完全にシャルの思い通りになってしまっている気がしなくもないが仕方がない。


「俺はもう帰るからな?」


 適正検査は終えたものから順々に帰宅してもいい決まりである。

 そして明日。適正検査を踏まえたクラス振り分けの結果が発表されるわけだ。


「ええ、私はちょっと用事を済ませてくるわ」


 ―うわあ


 俺はシャルの顔を見て核心した。

 こいつ絶対ユリスに何かするつもりだ。彼女の顔は、魔王時代のそのときと同様のものだった。ああ、かわいそうにユリス・オリビア。ご愁傷様……

 俺はシャルがあらゆる拷問をユリスに行っている図を想像しながら、静かに手を合わせてその場から静かに去った。

 その日、シャルは夕方に帰ってきた。


お読みいただきありがとうございます!

他の作品もぜひ!

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