表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/64

第15話 技術は通じますが、意味は変わりませんわ

 西方街道、さらに奥。


 荒れた地形が続く中、空気の質が再び変わり始めていた。


「……来ますね」


 ノエルが低く言う。


「はい」


 リリィも頷く。


「さっきより強い……」


 気配は複数。


 しかも統制が取れている。


「まあ」


 セリアは穏やかに周囲を見渡す。


「少し多いですわね」


 その一言で、全員の感覚がずれる。


 少し、ではない。


 明らかに異常な数だ。


    ◇


 地面が揺れる。


 次の瞬間。


 森の奥から、魔物の群れが一斉に現れた。


 獣型。


 昆虫型。


 混成。


 数は二十以上。


 しかもすべてが強化個体。


「……これは」


 レオネルが息を呑む。


「意図的だな」


「はい」


 カイルが即座に答える。


 その目は、すでに状況を分析している。


「誘導されてる」


「統制あり」


「指揮個体がいるはずだ」


 短く、正確に。


「上だ」


 視線を森の奥へ向ける。


「……なるほど」


 レオネルが頷く。


 同じ結論。


 だが。


「では、どうする」


「分断して――」


 言いかける。


 戦術はある。


 勝てない相手ではない。


 だが。


「まあ」


 セリアが一歩前に出る。


「まとめてでよろしいですわね」


 その一言で。


 戦術が無意味になる。


    ◇


「……待て」


 カイルが手を上げる。


 止める。


「少し試させろ」


 セリアが足を止める。


「?」


「こいつら、普通じゃない」


 短く言う。


「術式で制御されてる」


「まあ」


 セリアは興味深そうに見る。


「でしたら、壊せばよろしいのでは?」


「それをやる」


 カイルは一歩前に出る。


 指先に、淡い光が集まる。


 複雑な術式。


 精密な制御。


 空間に干渉する技術。


「……なるほど」


 レオネルが目を細める。


「高度だな」


「ああ」


 カイルは短く答える。


「これは、俺の領域だ」


 魔物の動きが一瞬だけ鈍る。


 干渉。


 成功している。


「今だ」


 レオネルが動く。


 剣を振るい、一体を仕留める。


 連携。


 成立している。


「……やるじゃねえか」


 カイルが小さく笑う。


 だが。


「遅いですわね」


 セリアの一言で。


 空気が変わる。


    ◇


 次の瞬間。


 すべてが終わった。


 振る。


 それだけ。


 二十を超える魔物が、同時に崩れ落ちる。


 術式も。


 干渉も。


 連携も。


 すべて無視して。


「……」


 沈黙。


 風だけが通り過ぎる。


「これで大丈夫ですわ」


 セリアは穏やかに言う。


「指揮個体は――」


 カイルが言いかける。


 だが。


「消えておりますわ」


 セリアが先に答える。


「まとめてですもの」


 その言葉に。


 カイルは苦笑した。


「……そうかよ」


 理解する。


 自分の技術は、確かに通じている。


 だが。


 意味がない。


 この存在の前では。


    ◇


「……興味深いな」


 レオネルが静かに言う。


「何がですの?」


「差だ」


 短く答える。


「我々は、対処している」


「君は、終わらせている」


 セリアは少し考える。


「同じではありませんの?」


「違う」


 即答だった。


「決定的に」


    ◇


「まあ」


 セリアは微笑む。


「でも、皆様がいらっしゃると楽しいですわ」


 その一言で。


 空気が緩む。


 緊張が消える。


 戦闘の余韻が、日常に戻る。


「……厄介だな」


 カイルが小さく呟く。


「何がですの?」


「いや」


 首を振る。


「何でもない」


 だが、内心は違う。


 理解している。


 この令嬢は。


 戦闘でも。


 技術でもない。


「……環境を変える」


 ぽつりと呟く。


 それが結論だった。


    ◇


 そして。


 その戦闘の結果は。


 すでに、どこかで観測されている。


 森の奥。


 さらにその先。


「……確認」


 低い声。


「制御個体、全滅」


「干渉、無意味」


 一瞬の沈黙。


「……計画を修正する」


 静かに。


 確実に。


 次の段階へと進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ