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魔眷のミナト  作者: 少佐
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聖騎士の思い

「……ぉ……ミナ……ミナト!大丈夫か!」



 重いまぶたを、こじ開ける。


 血が滲む視界の中に、ライトさんの顔があった。



「ライト……さん……」


 喉が焼けるように乾いている。


「勝ち……ました……」



「よくやった。」


 肩を支えられる。




「すぐにセレナーデのとこに連れていく」


 意識が、落ちた。


  









 目を覚ましたとき、天井は白かった。


「……ここは」



「あら、起きたのね」



 柔らかい声。


 横を見ると、ひとりの女性が立っていた。



「ここはギルドの病室よ」



「……腕が」



 触れる。折れていたはずの左腕。


 痛みが、ない。



「私の治癒魔法のおかげ……と言いたいところだけど」



 肩をすくめる。



「ほとんど、あなた自身の回復力ね」



「……どれくらい寝てたんですか」



「二日」



 ありえない。



「骨が折れてたのよ。普通なら一週間はかかるわ」



 じっと見られる。




「あなた……何者?」




「俺は……」




 脳裏に、よぎる。



 ――黒い猫。



 何度も、何度も。



 瀕死だったのに、目が覚めたあの森。自分だけの特殊な能力なのか...



「お、起きてたか」



 通りすがりのライトが顔を出す。



「もう動けるのかよ。化け物だな」



「はは……」



 乾いた笑いが出る。



「……あの、俺」



「……卑怯な手、使いました」



 視線を落とす。



 あのとき。ナイフは、敵ではなく―― 子供の近くへ投げた。



「仕方ねぇよ」



 ライトはあっさり言う。



「あれはミナトが正面から勝てる相手じゃねぇ」



 それでも、と続けようとして――やめた。



「……あの人たちは」



「全員捕縛した」



 簡潔な答え。



「ギルドで仕事回す。ガキは保護だ」



 少しだけ、間を置く。



「まともに生きられるようにはしてやる」



 その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。



「……聖騎士の人は」



 沈黙。



 ミナトは、顔を伏せた。



 膝に額を押しつける。







「生きてるわ」



 セレナーデの声。



「まだ療養中だけど……あなたに会いたいって」



 顔を上げる。



「……本当ですか」



「ええ」




 ミナトは聖騎士の居場所を教えてもらい飛び出していった。横ではケタケタと笑うライトさんをセレナーデさんが叩いていた。








「……来たか」




「もう大丈夫なんですか」




「ああ。お前ほどじゃないがな」




 わずかに笑う。




 疲れた顔だ。




「……ウィンブルクは、どこも同じだと思っていた」



 天井を見る。



「どこも、腐っていると」



 目を閉じる。



「だが……違った」



 ゆっくりと、ミナトを見る。



「助けられたよ」




 その言葉に、ミナトは何も返せない。



「俺の名はガイアード」



「元聖騎士だ」



 自嘲気味に笑う。



「……不名誉な肩書きだがな」









 豪族と聖騎士。



 金と力で押さえつけられる民。



 スラム。



 奴隷。



 逃げ場のない世界。



「……だから、連れ出した」




 静かに言う。




「守れる分だけでも、守ろうと思った」








 食堂へ向かう足取りは、重かった。



 中に入ると――



「ああ、来たか」



 鍛冶屋のおじさんロリポップがいた。



「どうだった」



 腕を組み、こちらを見る。



「聖騎士は」



 全部、知っている目だった。



「……強かったです」




 短く答える。




「実力じゃ、全然届かない」




 少しだけ、言葉を選ぶ。




「だろうな」




 ロリポップはあっさり言う。




「だからこその――これだ」




 ぽい、と投げられる。



 受け取る。




 布越しでも分かる、あの感覚。




 魔剣。



「貸しといてやる」



「最後の依頼だ」



 目が、わずかに細くなる。



「終わったら、好きにしろ」






 ――ドンッ!!



 銅鑼の重い音が響く。




 空気が、一変する。




 ざわめきが、消え



 高台に立つ男。



 ギルド長――ゼルグラード。



「ギルドの連中、よく聞け」



 低く、響く声。



「力を貸せ」



 一瞬の静寂。



 そして――



「東ウィンブルク、聖ナルディウス教へレイドを行う」



 ざわめきが爆発する。



「目標は――」


 わずかに、間を置く。


 その一言。







「敵の殲滅だ」


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