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魔眷のミナト  作者: 少佐
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正義の盗賊

 最後の依頼書。




 内容は、単純だった。




 鉱石および魔物素材の奪還。


 ならびに、盗賊の捕縛。



 指定された場所は、中都市の外れ。


 森を抜けた先。











「……っ」


 ミナトの口から血がこぼれる。




 膝が地面に沈む。




 佇む男。


 刃こぼれした剣でなければ、もう死んでいた。



 油断じゃない。



 ――格上だ。





 勝てないと心底震える。

 

 的確な間合い。


 無駄のない動き。




 その背後。

 

 

 子供が、膝を抱えて震えている。




 守るように、男は立っていた。



 何度も致命の一撃が迫る。




 当てるための斬撃では、皮一枚しか裂けない。




 しかし、重撃を入れるにはその隙が命取りになる。



 ライトさんが戻るまで。耐えられるか...









 時は遡り1時間程前



「この依頼、恐らくだが...今のミナトより強い相手がいる。」



「推測だが、東ウィンブルクで指名手配されている元聖騎士だ。さらに、最強パーティーの一員だった男だ」



「……俺では、勝てませんか」



「勝算がないわけではない」



 短く言い切る。



「そいつはスラムの連中を連れて逃げてきてる。つまり――守るものがある」



「……人質、ですね」




「そうだ。だが殺すな。あくまで捕縛だ。俺は周りを抑える。終わり次第、お前に合流する」









 森を抜けた先



 粗末な拠点。




「話した通りだ。聖騎士は任せる」



「わかりました。」





 短く頷き。



 二人は、動いた。










 ――現在



 片膝をつくミナトの前に聖騎士は立っていた。



「あんた聖騎士なんだろ。何で盗賊なんか...」



 血を拭い、睨む。



「盗賊、か。貴様には何もわからんだろう。」



 軽く振り上げた大剣から放たれる重い薙ぎ払い。



 空気ごと、押し潰すような圧。



 ミナトが振り上げた剣に火花が散り、押し負ける。



「俺は民を守るために戦っていた」



 足元が砕ける。



 後方へ、弾かれる。



 着地と同時に、聖騎士が大剣を地面へ突き刺した。



「グランドスパイク」




 地面が、唸る。隆起し迫る。



 巨大な土の棘が、一直線に突き上がる。


 吹き飛ばされ転がる。


 ミナトは体勢を立て直すも左の腕に力が入らない。折れている。



「守るためだと……?」



 低く、吐き捨てる声。



 怒りが滲む。



「だったら、なんでこんなことしてんだよ!」




 聖騎士は、間を置かない。





「ストーンランス」





 大剣が半円を描く。



 次々と丸太のようなサイズの槍状の岩が作り上げられる。


 地面から、岩がせり上がり、無数に丸太のような槍が生成される。


 轟音と共に放たれる。



「貴様の知っている世界と一緒にするな!!」



「力があっても、金があっても何も救えない」



 大剣を握りしめる。



 力が、こもる。




「狂った世界で生きてきたんだ!!」




 岩槍が降り注ぐ。




「常識も!!正義も!!」




「全部ッ!!通じない場所で!!」




 巨大な岩槍が振り下ろされる一撃。




 ミナトは横へ走り、岩槍を避ける。突き刺さった岩槍で聖騎士の視界から消える。



 その瞬間ミナトは聖騎士へナイフを投げた。





 ナイフは、聖騎士の横をかすめ。



 そのまま、背後へ飛んだ。



 ピクリと、反応する。



 ほんの僅かに。



 視線が動く。



「貴様っっ!」



 聖騎士は大剣を、再び地面へ突き刺した。





「アースウォール」





 背後に、巨大な岩壁が生成される。


 守るための、反射。


 その“守り”の選択。





 ――そこが、隙。



(……今だ)



 ミナトは、踏み込む。





 岩の槍を、すり抜けるように回避し。


 一気に、間合いを詰める。




「だからって!!奪っていい理由にはならないだろ!!」



 聖騎士の懐。





 死角。




 渾身の一撃。





「オラァァァ!」





 雄叫びと共に確かな手応えが、刃に伝わった。



 勝った。立っていたのはミナトだった。

 

 聖騎士は、血を吹きながら崩れ落ちた。



 地に叩きつけられる音が、やけに重く響く。


―――勝った。


 はず、なのに。


 胸の奥に、妙な違和感が残る。




 真正面から打ち倒したわけじゃない。卑怯な手を使い。



 それでも。


 格上だった。



 だからこそ――


 この勝利は、掴み取ったものだ。



 上等だ、と。

 そう思うしかなかった。



「……はぁ……っ、はぁ……っ」



 血の混じった呼吸が、喉を焼く。



 肺が痛い。

 視界が、滲む。



 足に力が入らない。



 そのまま、ミナトは地面に崩れ落ちた。


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