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ある備忘録  作者: おおぞら
覚醒
17/17

8日目 追憶

ー西暦2892年。

人類は遂にカー・ニューマン・ブラックホールの生成と制御に成功し、宇宙空間における重力勾配航法を手にした。

この航法は、宇宙船の前方や後方の一定距離に極小のブラックホールを常に発生させ、そのブラックホールに向かって宇宙船を常に「落とす」形で推進力を得、また、逆方向に「落とす」ことでブレーキ力を得る画期的なものだった。


これで、宇宙船の燃料や船体にかかるGの問題が無くなり、やっとこさ開発できていた月や小惑星帯より遠く、早く、より安価に開発することが可能になり、人類は惑星間文明時代に入った。西暦2902年、人類は宇宙歴を宣言した。


300年ほど、人類はソル系(太陽系)の開拓と進出に明け暮れた。巨大なフロンティアを前に、いつしか国家は形骸化していゆき、人類全体の連邦制へと取って変わり、宇宙空間の人口の方が多数を占めるようになっていた。


「フロンティアがある国は強く、またよく団結する」とは古来からの格言ではあるが、この頃は特に活気があり、人々は「前へ! より遠くへ! より外辺へ!」という機運が高かった。そんな中で、その進出を支える為に、様々な分野で技術革新が起こった。


ナノ技術はその代表例で、有機物と無機物の融合体であるナノマシンは人体のDNAを模倣し、体細胞に取って変われるようになり、この頃以降の人類は体構成の97~100%をナノマシンに置き換えていることが一般的になった。ナノマシンの寿命は日進月歩でどんどん伸び、使用頻度にもよるが約200年前後が当初一般的だったが、最終的に自己補修が可能になると、ある種の有機化合物といくつかの無機物さえあれば、事実上半永久に使用が可能になった。


それは、原料さえ補給し続ければ、病気・けが・老化・寿命を克服することを意味し、人類に福音を与えると同時に、人口爆発という業(ごう)をもたらした。


ソル系の開拓が外惑星系を超えオールトの雲まで到達すると、人口も400億近くに達していた。

この頃、通信も光速を超える量子EPR通信が普及し、ソル系内はリアルタイム・リンク網が整備された。


オールトの雲まで開拓したということは、フロンティアが枯渇し、資源が有限だと人類に再認識させた。


人類は、ここで恒星間開拓に乗り出す。人口対策、食料対策の側面が強かったが、種(しゅ)の存続としても星々に種(たね)をまく政策が取られた。


宇宙歴312年、第一次開拓植民団が連邦政府により編成され、αケンタウリAbへと旅立った。

10年後、無事到着との知らせが入り、恒星間開拓時代が幕を開けた。

無限のフロンティアが、人類の前にその扉を開けた。



しかし、ワープ航法は遂になし得なかった。

膨大な予算を食っても、物質の消滅はできても任意の座標で再構築ができなかった。

人類の移動速度は、光の速度にいかに近づけるかに重点が置かれた。


αケンタウリAbへは約4光年の距離を、光速の約90%で航行し、片道で船内時間で約8年、外界時間で10年を要した。


これ以上速度を上げると、船内時間と外界時間の差が激しくなり、恒星間開拓は人類社会とのつながりがなくなってしまう。

なんせ、光速の99%では船内時間1年(1光年の距離に同等)が外界では7年、99.9%では1年が22年、99.99%では71年になってしまう。


そこで人類は、種(しゅ)としての種(たね)を、全宇宙に蒔くことに恒星間開拓の目的を定めた。

というのは建前で、実際のところ、深刻になってきたソル系の人口爆発で、養い切れない人口の口減らしが真の目的だった。


宇宙歴312年以降、約10~20年おきに開拓団が送り出された。また同時期に星系外の国家樹立も視野に、約300年ぶりに軍が再創設され、「ソル系連邦宇宙海軍」が発足した。


目的地までの距離が100光年以内の開拓団は、民間主体で編成され、軍は入らなかったが、それ以上の距離の開拓団は、今の人類文明とのつながりが無くなる事も想定し、軍が主体となって編成された。


私(・)た(・)ち(・)、第23次植民旅団 ケプラー派遣艦隊は、宇宙歴772年に小惑星帯のニュー・チェンマイ海軍基地から約1400光年のケプラー452bに向けて、光速の90%の速度、船内時間にして約1500標準年、外界時間約2800標準年かけてやってきた。

全員ナノマシンをディープスリープモードにし、航行中の管制・維持はAIが中心になって航行した。


旗艦の重巡洋艦サルタヒコを筆頭に、巡洋艦サスケハナ、シヴァ、ンツゥオの軍艦と、4隻の開拓母艦、同じく4隻の小惑星をくりぬいて動力をつけただけの資源船の計12隻、総勢軍民合わせて11万人の開拓旅団は到着すると早速、惑星452bへのテラフォーミングを開始し、宇宙空間設備の建設に取りかかった。この頃、ソル系連邦海軍本部とは連絡がついていた。ノイズが多々入ったが、決して多くないデータ量の中には、人類文明は未だ健在であり、通商可能な近傍の星系が23星系にまで人類の版図が拡大していた。


到着後100標準年ほどで、惑星452bは大気中装備なしでの活動が可能になり、3つある大陸に地球産の植生が繁茂し、陸上・海中の生態系が花開いた。到着後110標準年に大気圏内の開発が始まり、初期コロニーは北西象限の第一大陸中央部の湾内に建設された。


70標準年ほどは開発が順調に進み、第一大陸のほぼ全域に居住地と道路が整備され、総人口は80万人になっていた。


このまま開発が順調に行き、いずれは連邦議会から惑星名をもらい、星系が独立するものと誰もが思っていた。





・・・・到着後202標準年目の反乱までは。

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