8日目 接触
夢を見ている。ような気がする。
五感が鮮明だ。
気がつくと、白い何もない空間に立っていた。音も匂いもない。何かの気配もない。
目が見えなくなってから、久しぶりに光を感じた。
光!!見えている!!
久しぶりにものを見たせいか、自分の両手がまだぼやけている。
目をシパシパこすっていると、ヴン!という聞き慣れない音がした。
見あげると、いつの間にか目の前5mぐらいに、黒い長い髪をまとった女性が立っていた。
見慣れない奇妙な服を着ている。年の頃は俺と同じぐらいか少し上かな、20代後半といったところか・・
「初めまして。イングさん。私は、アオイ・ヒューミットと申します。」
その女性は凜とした口調でそう言うと、頭を下げて一礼した。
・・・・怪しい。怪しすぎる。
なぜ、見知らぬ女性が俺の名前を知っている??
しかも、家名付きの女性が。
貴族じゃないか・・メンドくさいな・・。さらに、頭を垂れるときた。・・怪しいな・・・。
まぁ、夢ならありえるか・・・夢・・だしな・・。
「なぜ俺の名前を知っているんですか?アオイ嬢。」
興が乗った俺は、貴族の礼節は知らないが、マネをしていた奴のマネをして一礼してみた。
「あなたは私の上官だからです。管理者イング。」
そう言うと何かのポーズだろうか、カッ!という音が彼女のかかとからして、右腕を横に肩の高さにあげて肘を曲げて、指をピンとまっすぐにして彼女自身の額に付けた。
変なポーズだな。
俺は彼女の上官か・・そうか上官か・・変な夢だな。まぁ夢は大抵変か・・・
ここは一つ、夢の設定に乗ってやろうか。
「あなたの所属はどこなんだ?見慣れない服装だが。」
自分で言ってみて、砦の守備隊にいた頃に懐かしさを覚えた。
「現在は非常事態のため、ソル系連邦海軍第23次植民旅団 ケプラー派遣艦隊 司令官臨時代行。階級はAI大佐。旗艦である重巡洋艦サルタヒコの艦長代行も兼務しています。」
彼女はさっきのポーズから姿勢を変え、足を肩幅に開き、両手を後ろ手に組んでしゃべっている。
・・・う~~ん、そうきたか・・・知らない言葉ばかりだな。設定も何も支離滅裂だな。夢にしても。
「しかし、これじゃぁ何を言っているのか、さっぱりわからんな。」
つい、考えが口に出てしまった。
「了解。基礎的科学知識および一般情報、これまでのログ情報をナノマシンを介して海馬と大脳言語野にダウンロードを開始します。マスター・イングのナノマシンが体構成の32%しかないため、完了まで7200標準秒。深層への書き込みのため、一旦意識をシャットダウンします。」
その声が聞こえると同時に、全てが真っ暗になった・・・・




