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遭遇

ティアラは拘束した六人の傍らで、どうやってトロールを運び出すかを画策していた。


これだけの大事件を起こした以上、レオが動く可能性は極めて高い。ロート内への強行突破など論外だ。


城壁を登っての潜入も、単身ならまだしも巨大なトロールを背負っての帰還となれば目立ちすぎて不可能に近い。


(……穴を掘るしかないのかな)


トロールが通れるほどの地下道を掘り進める必要がある。だが、それには膨大な魔力を消費する。今後、不測の事態が起きた際の余力を削ることになるのは手痛い。


十秒ほどの熟考の末、ティアラは穴掘りが最適解であると結論を下した。


方針が決まれば、次は後腐れの処理だ。


彼女は何の躊躇もなく、口封じのためにアブルス家次男の心臓を突き刺した。


その後、カモフラージュとして残る五人と、一つの肉塊に無数の切り傷を刻んでいく。


裂傷の激痛で意識を取り戻した彼らは、パニックに陥りながら命乞いや悲鳴を上げる。だが、ティアラは一言も発さず、淡々と傷を増やし続けた。


(まあ、怖いよね。いきなり誘拐されて、しかも隣に死体がある上で自分も斬られてるんだから)


実行犯でありながら、他人事のように軽い同情を寄せて、カモフラージュを完了させる。


五人は生かしておくつもりだが、万が一にも声で正体が露見しないようにティアラは徹底して沈黙を貫いたままその場を後にした。


(まだ夜は始まったばかりだけど、急がないと。トロールをどこか手頃な村まで運ぶ手間もあるんだし)


灯りを持っていない彼女は、川沿いを辿ることでロートへ帰還する算段だった。


しかし、遠くの暗闇に炎球が浮かび上がった瞬間、ティアラの脳内は恐怖で埋め尽くされた。


(レオさん……!? いつ嗅ぎつけられたの? まずい、まずいまずい……)


炎球は正確にティアラを捉えて飛来した。標的は自分だ。


反射的に踵を返して逃走を図るが、即座に立ち昇った炎の壁に退路を断たれる。


「次は逃がさない」


響いた声を聞き、ティアラは心の底から安堵した。


(良かった……レオさんじゃない!)


声の主は、近頃ティアラがその扱いに頭を悩ませていた少年、ハンスだった。


死の恐怖から解放され、生の実感を噛み締めた後、ティアラは改めてハンスを観察する。


ハンスは炎球をチャージしたまま、警戒を解かずに構えていた。


ティアラはハンスから目を離さず、思考を纏める。


逃げること自体は不可能ではないが、この夜の森で遠回りをすれば大幅なタイムロスになる。いつレオが動き出すか分からない以上、一刻も早く片を付けるべきだ。


しかし、相手がそこらの雑兵なら即座に仕留めて済む話だが目の前の少年を殺すわけにはいかない。


そして生かす以上、この「黒ローブの人物」の正体がティアラであると悟らせることも許されない。


(魔術は使わない。剣術のみで、手足を切って放置がベストかな)


だが、その制約で本当に勝てるのか。ティアラの胸に不安がよぎる。


ハンスは強い。火力だけで言えば、本気を出したティアラさえ殺しうる相手なのだ。警戒しない理由がない。


(……でも、これしかないんだよね)


心の中で深いため息を吐き、ティアラは決意を固めた。


覚悟と共に水面を蹴り、激しい水飛沫を上げながら間合いを詰める。

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