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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第二節

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現にピエロが空回る


 さて、たった一声でも割り込んでしまったのなら後には引けない。


 公共の場にて視線の数は数多だが、至近の気配は数える程度。ならばハッキリと向けられた声と意識に気付かないはずもなく、俺の方へ一斉に三対の目が向いた。


 然らば、距離おおよそ五メートル強。数歩で踏み潰せてしまう些細な距離を()()()()()()()()()()……数秒後。俺は「失礼」と一言断りつつ、


「────……あぁ、やっぱり・・・・


 意表を突かれたような顔で固まる勇者君たちを遠慮なくド真ん中から搔き分けると、即興で用意した言葉を呟きながらポケットに入れていた片手を出した。


 握っているのは、スマートフォン。その画面をチラリと確認・・して、


なにしてんだよ・・・・・・・こんなとこで・・・・・・()()()()()()()()()()()


 まるで、その画面に映っているのが『家族からの連絡』であるかのように……ポケットの中、非目視ブラインドで打ち込んでおいた『不要?』の三文字を少女だけに向けた。


 現在進行形で一体なにやってんだ俺と世界の誰より俺自身が思っているが、やっちまったもんは致し方なし。瞬時のアドリブで最も平和的な解決策を模索した結果、パッと浮かんだ案が家族の介入・・・・・とかいうアレだったというだけの話。


 既に声を挙げてしまっていたのだから、協議の時間など皆無であった。……とはいえ、結局のところ俺は詳しい状況を知り得ていない。ゆえに、


「──────……」


 ……なんだろうな?


 いやまあ、ナンパ現場に乗り込んできた俺も俺で現代ではギリ不審者認定やむ無しか。割り込み第一声の直後から驚いたように目を見開き俺を凝視する少女へ、


 言葉と態度を付け足して、是非を問う。


「ったく……まあ、いいや。それで────」


 なにこれどうしたものかと立ち尽くす、両脇やや後方の二人を振り返り……。


「────……どちら様? もしかして邪魔したか?」


 一言、そして一言。前半は彼らへ、後半は首だけ振り返りつつ彼女へ。


 こんだけ演技を重ねれば、流石に『とりあえず割って入りましたけども、必要なければ退散しますよ』ってなニュアンスは伝わるだろう。伝わってくれ頼む。


 俺だってテンパってんだ。別にナンパ男×2の眼前に立ちはだかる程度どうってことないが、この状況が『お節介』であるゆえに不可避の羞恥が蓄積していく。


 高確率で空回り、高々確率でイタい・・・立ち回りを披露してしまっているという自覚はある。善意の押し売りですらない、自己満足なのは理解しているのだ。


 だからこそ「むしろ俺を助けてくれ」くらいの勢いで肩越しに視線を送る。


 然らば、そんな俺へ向けて。


「………………………………、っ……」


 少女は小さく、首を横に振ってみせた。


 ……それ、不要って意味? もしくは邪魔じゃないって意味?


 よしわかった、オーケー、もういい。相も変わらず声を発さず、ギリギリどちらとも取れる反応だけを返してきた少女が悪いのだと開き直るとしよう。


 然らば、ここからは────



「あっそ。────だそうです。申し訳ありませんが、お引き取りを」



 本当に、好き勝手に、失礼をさせてもらうぞ・・・・・・・・・・と。



「………………ぁ? あー、えー……っと?」


「そっちこそ、どちら様……あ、え、ご家族?」


 困惑しつつも、ここまで行くとガッツがあるというより見苦しいが勝り始めているナンパ勇者たちは場に縋る。やはり引っ込みがつかなくなっている様子だ。


 おそらくだが、二人とも俺より年上。同じ大学生の高学年か、下手すりゃ新社会人くらいにも見える。……つまり、対人スキルは推定それなり・・・・


 面倒な絡み方を続行されて、更に状況が混沌としたら面倒が面倒で面倒だ。


 ならば────



「〝兄〟です。妹が困っていますので、お引き取りを」



 意識を()()()()()()()()()()()()()()()に瞬間シフト。


 彼らでは真偽の判断できない戯言を堂々と宣いつつ、いつもの笑顔・・・・・・を披露解放。


 そして片手には、いつでも三桁の数字を打つこと叶うスマホが一丁。不意を突かれテンパっているのは向こうも同じだろう、怯んだ様子を見せた勇者たちは……。



「「ぁっ……し、失礼しゃっしたぁー…………」」



 そそくさと、そして、しょんぼりと。


 根は良い奴らなんだろうな思わせる素直さを見せ、退散していった。




 斯くして、


「「…………………………」」


 取り残されたのは、兄でも妹でもあるわけのない他人同士が二人きり。


 ホッと胸を撫でおろして息をつく俺。


 そして、相変わらず俺を驚いたような目で見つめ続ける少女……さもありなん、俺自身も己の成るように成せ精神に驚いたから仲間だ。馬鹿だよねコイツ。


 とかなんとか、全てが終わってから自重は間に合わず自嘲する馬鹿に、


「…………………………────ぁ、……あ、の」


 初めて聞いた、見知らぬ少女の硬い声音は。



「………………つ、次の、ナンパさん、ですか……?」



「違います」



 やはり聞き知らぬ、綺麗で澄んだ音鳴りであった。







悉くを斃せし黒滲(レプ=ラ・ノウバディ)】とのソロ対面を想起リコールして微笑んだそうです。

そりゃ逃げるでしょ。

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― 新着の感想 ―
そんなレベルが必要な人間が存在するか
これが兄を名乗る不審者ムーヴですか。 妹を名乗る不審者アイドルが名乗りを上げそう。
なるほど、場当たり的にしては上手く介入したな >あとがき こわ…
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