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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第二節

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交流部隊移動中


 【岩食みの大巣窟】と比べれば劣るといえど、良質な鉱物資源が望める【嘘泣きの岩窟】を訪れるプレイヤーは少なくない────とはいえ、だ。


 アルカディアに存在するダンジョンは、数が数・・・。既存のオンラインゲームで言う『人気スポット』ほどの人口密集過多が発生するのは、サービス開始から四年を経て多くの〝遊び場〟が認知されている現在に至り相当に稀有な例。


 たとえば誰かさんの影響で今なお連日の賑いを見せている【螺旋の紅塔】や、誰かさんと誰かさんの影響で挑戦者が爆増したという【影滲の闘技場】などがソレに当たるが、言わずもがな例外中の例外である。


 つまるところ、アルカディアで言う『人気スポット』とは即ち『他のパーティと遭遇するのが珍しくはない場所』程度のモノであるために……。


「今日は人が少なくて助かった」


「あんだけ自重ナシで大暴れしといて何を言っとるか」


「ご、ごめんなさい。加減ナシと言われたので……」


 アレやコレやから、十数分後。


 ネネが随行していた五人組────ネネを除けば紅一点こと【あねもね】がリーダーだという仲良しパーティと共に、三人娘は他のプレイヤーと遭遇することもないまま平穏に岩山地帯を離れていた。


 然して、ガタゴト・・・・賑やかながらも軽快な音を鳴らし荒野を駆けるのは、


「やー、あたし『従車くるま』初めて乗った。結構いいねコレ」


 ニアが言う『従車』……即ち、地上棲の大型【星屑獣リム】に引かせる個別交通移動手段。現実で言う馬車に類する形状をしたアルカディア史上初の車両。


 ……正しくは『プレイヤーが実用化した初の車両』ではあるものの、快挙であることは間違いない。出回り始めたのは去年の暮れ頃からだが、こうして一般層の元へも行き届いているところを見るに普及は順調であるらしい。


 とはいえ、仮想世界どこかの最速の移動手段だれかさんと親しいソラおよびニアは縁も必要も在りはせず。本人スペックで走った方が基本的に早いアイリスも、また同じく。


 ゆえに三人とも、今回が初乗り。


 木組みの荷台に幌の屋根。意図しての雰囲気重視なのだろう、コテコテなデザインの従車を走行中の台上よりツンツンつつくニアの言葉に、他二人も無言の肯定。


 ソラがふんふんと頷き、アイリスが静かに穏やかに瞬けば、


「んでぇっへへ……」


「そ、それほどでも……」


 即座にデレつく、悲しき生き物が約二名。それぞれ回避盾役双剣士の【レフト】および遊撃役大剣使いの【ライト】が謙遜してみせるが、然り。


 従車を引いている二匹の大トカゲ型【星屑獣リム】の主が、この二人であるゆえに。


 ────まあ、なんと言うべきか、それもいささか……。


「……馬車というより、人力車だけれど」


 アイリスが零した言葉通り、格好良いというよりは〝愉快〟の二文字が合う様相。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()大トカゲ二匹が前脚(手?)で持ち手を掴み爆走する様は、控え目に言ってエンターテイメント。


「あ、はは……で、でも、速いですよっ」


「速いねぇ。こんなデコボコ道なのに」


 しかしながら、二頭の【星屑獣リム】が出力する馬力もとい蜥蜴力および従車の性能は見事だ。どこぞの流れ星と比べてしまうのはタブーとして、労を要さず時速二百キロ近い速度で安定行進が望めるのはアルカディアにおいて革命的な進歩である。


「以前までは、難しかったんですよね?」


 と、ソラが知ってはいても覚束ない知識の詳細を問えば。


「んだね。プレイヤーの走行速度を上回れる馬力を望めるようなエンジン、アルカディアの多様な環境デコボコみちを分け隔てなく踏破するためのタイヤ、そんで多少のトラブルに遭っても壊れない耐久性とかとかとか……まあ、なんというか」


「それぞれの実現は可能だけれど、全てを集約して実用的な物を作り上げることが困難だった。────特にエンジンは、小型化に難航していた上に……」


 ニア、アイリス、そして……。


「っこ、コスト面の問題が、計り知れずっ……万能貨幣触媒ルーナを直利用するとなれば破産も待ったナシ、他資源を活用してみようとなれば、動力変換や抽出のために更なる機構や設備が必要となり、また小型化実現が遠のいていくといった形で……」


 ネネ────どうもアルカディアにおける鉱物資源やら、エネルギー関連の研究を専門にしているという魔工師が、僭越ながらといった具合で解説に乗った。


「はぁ……凄く、なんというか…………」


「もう普通に科学とかの分野、だよね。実際、現実で科学者とか技術者とかやってるヒトたちが従車コレの開発に携わったみたいだし。ニアちゃんの知らない世界だぁ」


 ソラとニアが感心の意を示し、アイリスも仮想世界の技術者たちに対する敬意のソレか、小さくも確かに頷く。そして、そういうことならと当然の流れ。


「……もしかして、あなたも開発関係者?」


「へぁっ、ぇ、やー、あのぅ……」


 知識、そして有する技能。そうであっても不思議ではないとアイリスが問いを投げてみれば、ネネはビクリと肩を跳ねさせつつ数秒アワアワした後に。


「ちょ、ちょっと、だけ……? いえあの、本当にっ、ちょっとだけ……ですが」


「「おー」」


「違うんです本当に大したことしてないんです滅相もございません(?)ッ!」


 小さく小さく小さく頷き、ソラとニアに再び感心され、再びの再びアワアワはわはわ取り乱すまま両手で顔を覆い蹲った。挙動不審極まれり。


 有名人を前に緊張しているからなのか、先の出来事による動揺を引き摺っているからか、はたまた普段からこんな感じ・・・・・なのか……知る由もないが、中々に愉快な人物像であることを察し始めた三人娘が生暖かい視線を向ける……と、


 そんなタイミングだった。


「────ほぅらアンタたちぃ。いつまでもデレデレ見惚れてないで、()()()()()()()()()よ。いいとこ見せたきゃ気張りなさいな無理だろうけど」


 馬車で言う御者台に当たる位置。パーティメンバーもとい、本人曰く『部下ども』を纏める女性リーダーが声を上げた。如何にも姐さん的な喋り方に反して、なんとも可愛らしい声音がアンバランス……なんてことは置いておき。


 警戒役を果たしていた彼女が意味ある声を発したのならば、状況は自明の理。


「…………狼、です?」


「【放浪する灰色狼群グレイヴァ・ウルフズ】ね。神創庭園全域の荒野エリアでランダムエンカウントする通常エネミーよ。……ん? ソラ、見るの、初めて?」


「初めて……かもしれない、ですね…………」


「そう…………その、そこまで稀少なエネミーではないはず、だけれど」


「えと、多分、私…………()()()()()()()()()()()から、かなって……」


「…………そうね」


「…………はい」


「あのー、平和そうにしてる場合かな? いッッッぱい見えるんですけども」


 ────と、そんな具合。


 頻繁に旅や遠征をしているプレイヤーであれば馴染みの友と言って差し支えない狼の群れ。数十、大きなものであれば百に届く場合もある放浪型エネミーの姿が、ニアの言う通り『いッッッぱい』……真っ直ぐに、従車へと迫っていた。


 然らば、と。


「え、と────」


 対大群を得意分野と自覚するソラが、腰を上げようとした折。


「いやいやいや座っていてくだせぇッ!」

「披露するのも恥ずかしい至らぬ凡人ではありますがッ‼︎」

「労を要さぬ旅路を皆様に提供するくらいのことォッ!!!」

「やったろうぜ野郎どもァ‼︎ さっさと片付けて楽園おしゃべりに帰還せりッ!!!!!」


 飛び出していくのは、哀しき生き物が約四名。


 それぞれの得物を手に従車を飛び降りていった男性陣が、意気揚々と狼の津波に立ち向かっていく……その背中を、ポカンと見送ったソラの隣。


「まあまあ、お任せしましょうぜ」


 ニアが同じく呆れたような顔をしながら、腰を浮かせた少女を席へ引き戻し、


「見守ってあげるのが、彼らへの礼かしら」


 スンと無表情で落ち着くアイリスが、果敢な勇者たちを言葉通り見守り、


「お、落ち着いてますね……二人とも…………」


 ぽすっと再び座らされたソラは、どんな顔をすべきかと苦笑いを浮かべ、


「全く……馬鹿な男どもで申し訳ない、お恥ずかしい」


 あねもねが溜息をつくと共に、


「ひ、ひぃい……」


 やはり心を揺らしまくることに余念がないネネが、戦闘開始を眺め慄いていた。






平和だなぁ。


なお随分前にガッツリ地上移動でお送りした虎姉弟との遠征で遭遇する可能性はあったものの、虎の持っている威圧系スキルが作用していたためエネミーとのエンカウント率そのものが激しく低下していましたとさ。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 狼より鳥の方が馴染み深いと思われる 人気になってしまったダンジョン、地図の人以外に踏破者いるのかな?
女の子の前で気張るのは男の子の特権
うーん、相変わらずの物語の主人公っぷり。いやまぁ実際に主人公なんですけどね。例外さんのストーリーがまさにと言った感じですし人気も併せて激混みなんでしょうね…。なお、未だに次クリア者は(自身の力で行けた…
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