ハルソラ配信中:Part.2
──────……
────……
──……
「はい。とまあ……」
配信開始から暫し経過。開幕から約十二時間も続いた無限マラソン第一部のダイジェストから繋がる見せ場その一……つまるところ、第一の試練。
『原初の四塔』に連なる東の〝剣〟────【勇者】様との奇跡が介在しない人外膂力&技術vs連携&技術というガチ殴り合い一幕が了を見たタイミング。
「そんな感じですわ」
ここまでも『一人称視点?』『なにゆえのFPSなんです?』『ちょっと待ってクラウン視点とか人の心がないんですか』『とりあえず洗面器用意した』などなど散々ツッコまれているものの、意図的にスルーしている全編俺視点映像。
即ち今の〝決着部分〟も、まるで自分で『刀』を振るい【勇者】様との一騎打ちを斬り抜けたかのような迫力を提供できたことだろう。
そんな自信半分と願望半分の心持ちで一言、区切りの意を零してみれば────
『そんな感じですわ?????』『どんな感じですわ???????』『はい』『( ゜д゜)⇐視聴者一同こんな感じですわよ???』『( ゜д゜)゜д゜)゜д゜)゜д゜)゜д゜)』『よし、いつも通りだな』『なにもわからないことがわかった』『おかしいな……普段と違って目で追えたのに一つも理解できなかったな……』『最後でこチューされてましたよねぇ??????????????』『「なにしてくれやがる」は俺たちの台詞なんだが???』『誰かコイツ処してくれ』『エネミーも誑かすんですか。そうですか』『アレは果たしてエネミーなのか?』『最後の素顔解禁メッッッッッッッッチャ美人さんでしたねくらいしか理解が追い付いてないんですが』『必死の言い訳タイム草草の草』『視点の動きからガチ焦りが伝わってきますねぇ』『爆発しろ。爆発して?』『ニアちゃんかわよ。相変わらず顔見えないけど』『絶対ジト目で睨んでる絶対かわいい』『結局なにがどうなってなにしてたん?』『いやもうずっと「なにしてるんですかコレ」なのよ』『情報が……情報が無限に散らかっていく……』『──────』『────』────…………
と、そんなこんなコメントの反応は手本のような阿鼻叫喚。
俺が前にしているモニターはソラのとは違い視聴者の反応を伺えるように設定されているが、一応リアルの動体視力でギリ追える程度の数に絞られてはいる。
それで、コレだ。実際の総数が如何なる量かなど考えるだに恐ろしく、もっと言えば現在の同時接続数など知りたくもない。心を守るためにも知らぬが吉だろう。
……ともあれ、それら全体の様子をザックリ雰囲気だけ察する材料としてなら十分な『声』を眺め、おおよそ予測通りの流れにあることを確かめつつ。
「あー……アレです。言っちゃうと、今回は全編コレ。謎、謎、謎、そのまた謎ってな具合で、終始お送りすることになるんだけども……────」
『マジかよ』『マジで言ってる?』『えぇ……』『頭が爆発してしまう』『実況解説配信で解説放棄は新し過ぎません???』『────』『──』……。
チラり、隣を確認。
……オーケー。まだガッチガチだな俺に任せとけ。
「────まあ、ただ、つまりそれ攻略中の俺たちと全く同じ視点になるってことでもあって。わかると思うけど、俺たちも何一つ理解できてないのね。当時」
『それはまあわかる』『全員もれなく困惑してるもんね』『ずっっっっっと質問してるもんなぁ……誰かに』『それもまた〝謎〟って理解でいいんでしょうかね』
「そういうことだね。なので、映像を通した共感体験を提供すると共に当時の俺たちが脳内一杯に抱えていたハテナの洪水も諸君に体感していただこうと思い……」
『そこみちづれにする必要ありますー???』『なにその親切な道連れ案内』『ありがたくて涙が出てくる』『手の込んだ道連れで草』──────
「ってことで基本、拾う質問と拾わない質問があると思うけど、拾わないのに関しては『今じゃないんだな』と察していただければ幸いっす。よろしく」
……と、こんなところか。
他ならぬ世界に向かって話しかけてんだ。反応なんて大体おおよそ大雑把かつ俺個人の勘その他で適当に読み取るのがやっとだが、トータル反応は悪くない。
今じゃないと言葉にもしといたことで早速、後の解説があるものと察してくれた者も多く見受けられる。ひとまず『疑問に首を傾げながら見るのが正しい視聴方法』というスタンスは伝わったものとして……まあ、一旦ヨシとしておこう。
そしたら、うん。とりあえず────
「といったところで、ちょっと早いんだけど『お断り』させていただいて……」
『?』『なんでしょ』『おことわり?』『どのお断り?』『どしたん』『???』
「相棒が目を回してると思われるので、一回目の小休憩を頂戴します」
『ぁっ』『ぁっ』『ぁっ』『はーい』『いくらでも!』『どうぞどうぞ!!!』『ごゆっくりー!』『大休憩でも全然ええんやで』『ソラちゃん最優先でおk』『無理せんといてもろて』『息継ぎ大事』『かわいい』『ずっと可愛いやん国宝認定はよ』『──』『────』『──────』『────』────……
「あざっす。こっから暫く休憩駄弁りだの鬼ごっこ第二幕だので繋ぎのシーンが続くんで、映像は流したままにするから皆さんで楽しんでいただいて」
────はい、オーケー。決まり切っていた次なるタスクの了解は、断りを入れるや否や全世界から秒で取れてしまった。平和な世界で心が温まるね。
然らば、ありがたいなと思う反面『ウチの天使どんだけ世間に愛されてんだ』と恐々の慄きから来る苦笑いを密かに滲ませつつ……ぁ密かになってねぇわバッチリ立ち絵に反映されてるわ。まあいいわ俺で良ければ好きに弄れハハハ。
「ではでは、最長十分以内に戻りますゆえ────……、」
改めて、然らば。
挨拶を挟んで視線を投げるのはブース外。勿論のこと最初から今まで同室内に控え、配信機器のチェックなど諸々の雑事を担当していたチームメンバー各位。
その内、ある意味で最も重要かつ慎重な操作判断が求められる『音声』を受け持つはプロデューサー……つまり、美稀とのアイコンタクトが通り────
「………………っふは……!」
ハンドサインを見て取り数秒後、俺は世界には届くことない息を吐き出した。
音声以外でも『俺たち』を伝える視覚情報、即ち立ち絵の方も休憩モードへ移行。隣り合って目を瞑り、ほのぼの昼寝でもしているような『俺』と『ソラ』の絵を見て性懲りもなくコメント欄が阿鼻叫喚の様相を呈し始めている。
元気だね、諸君……────さて。そんなことより、だ。
一旦、配信のコントロールは美稀を始め頼もしくアレコレ働いてくれている我が友たちに丸投げ。十分程度の持ち時間にて、俺が成すべきミッションは一つ。
即ち…………コンコン。ノックの後、返事を待たずにお邪魔します。
「────ソラさん。大丈夫か?」
「……………………………………」
おそらくは、緊張が一割の羞恥が一割。
俺は相棒のことを……少なくとも、こういうところは、よくよく知ってんだ。
つまるところ、残りの感情……──意気込みに反してガチガチにフリーズしてしまい最後の方など気配を消滅させていた己に対する、不甲斐ない思い八割強。
実は筋金入りの負けず嫌いかつ、真面目で責任感の塊なんだ。この美少女。
それによって、まさしく『合わせる顔がない』とばかり。両手で可愛い顔を覆ったまま配信椅子の上で撃沈している超初々しくて超可愛いが過ぎる相棒様を……。
「ほら、元気出せって。大丈夫だって。まだ始まったばかりだぞ」
「……………………うぅ……っ! うぅうぅっ……!!!」
「唸ってないで。ほれ、お菓子あるぞ。食べるか? 食べれ?」
「うぅうぅうぅうううぅっっっ……!!!!!」
どうにかこうにか、復活させねばってなわけだ。
初陣が対世界とか無理に決まってんだよなぁ?
だからこそ伝説に成り得る配信なんだけどなぁ?




