01【キサラとアカリ】放課後の秘密(学園GL)
【登場人物】
キサラ:本作の語り手。金髪ピアスな女子高生。
アカリ:キサラと親しいクラスメイト。小動物系。
※本エピソードにはGL描写が含まれます
※本作は文章表現の練習を目的とした習作・掌編です。本エピソードは一場面を切り取ったものです。
忘れ物に気づいて戻ってきた私は、教室の扉に手をかけたまま、こっそりと聞き耳を立てていた。教室の中から緊張を孕んだ澄んだ声が聞こえる。すぐに私の一番大切な人の声だと分かった。扉を静かに開け、教室に足を踏み入れる。
夕陽に染まる教室。アカリちゃんは誰もいない空間に向かって、胸に両手を置き、何かを訴えている。
「――その気持ちだけは誰にも負けない。そんな私を受け入れてくれませんか?」
情熱的な言葉を言い終えると、アカリちゃんは切なげにため息をついた。わざと音を立てて扉を閉めると、アカリちゃんは驚いた顔を私へ向けた。
「え、キサラちゃん!? いつからそこにいたの!?」
「今さっきだよ。忘れ物を取りに来たの。ごめん、真剣そうだったから声をかけ辛くてさ。……劇の練習?」
「そ、そう! 文化祭で劇をするんだけど、ヒロイン役を押し付けられちゃって! クライマックスの告白の練習してたの! こ、これ台本!」
視線を彷徨わせ、手をばたつかせている。すると台本の一枚がするりと抜け、私の足元へと流れてきた。アカリちゃんはまだ弁明を続けている。
足元の台本に目を向ければ、白紙だった。
「私が相手役になってあげる。何を演じればいいの?」
「え!? じゃあえっと……、先輩役、かな?」
「どんな先輩?」
「えっと……」
口元に手を当て、私を見つめる。私も視線を外さず、見つめ返した。
「ヒロインが悲しんでいるときに側にいて守ってくれる、優しくて強い人」
いつか聞いた、アカリちゃんの好きなタイプだ。冗談で私にそっくりだねって言ったら、恥ずかしそうにはにかんでたっけ。
「わかった。適当に演技するから、それに合わせてね」
一度咳ばらいをして声を整える。折角だから、男性の声を意識してみよう。
「アカリさん。放課後に呼び出して、僕に何か用?」
「う、かっこいい……!……んん! あなたを呼んだのは、私の想いを聞いて欲しいからです」
アカリちゃんが『演技』を始める。アカリちゃんの顔が赤いように見えるのは、夕陽のせいだろうか。それだったら私の顔も赤いはずだから、お互い様かな。
「……想い、ですか?」
「はい」
アカリちゃんが目を閉じ、小さく息を吐く。
教室に校庭の音が響く。野球部の掛け声、ボールを蹴る音。
アカリちゃんはすーっと息を吸い、ゆっくりと、目を開いた。
「あなたへの憧れは、気づけば恋になっていました」
アカリちゃんは胸の前で両手を組み、まるで祈るような姿勢になる。
「あなたの側に、隣にずっといたい。あなたがいない人生なんて、星のない夜空のようなもの」
教室に、アカリちゃんの澄んだ声だけが響く。ロマンチックなアカリちゃんらしい。
ふと、「キサラちゃんは、わたしにとっての一番星」と言われたことを思い出し、恥ずかしくなって鼻を掻いた。
「私があなたに捧げられるのは愛だけだけど、その気持ちだけは誰にも負けない」
違うよ。私は、誰よりもあなたの魅力を知ってるよ。
アカリちゃんは顔を伏せ、息を整えている。私はじっと、アカリちゃんの言葉を待った。
アカリちゃんの顔があがり、潤んだ瞳が夕陽を浴びて美しく光る。
「そんな私を、受け入れてくれませんか? 」
アカリちゃんの、愛の告白。
『演技』だけど、気持ちは本物だよね。
告白の相手が誰かを考えて、にやけそうな口元を我慢する。……自惚れじゃなければ、いいんだけど。
「……いいよ。これからよろしくね。アカリちゃん」
アカリちゃんはほっと息をつき、柔らかな笑みをこぼした。恥ずかしくなって、私も笑い返した。
「ところで、キスの練習は要らないの?」
「それは…もっと雰囲気のいいところでお願いします」
「劇の練習ってことじゃなかった?」




