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第63話

「……何か一気にいろいろ変わった気がするな」


「“安息の精霊”ってどういうこと? 俺、もう精霊になったってこと?」

「その通りです。ノベト様は単なるベッドではなく、精霊に昇格されました」

「それに、“人族変換”って、俺そんなの選んだ覚えないぞ?」

「一連の出来事によって不可避的に開発された魔法です」

「……そうか。完全に理解した」

「嘘ですね?」

「そういうことにしてくれ。頭が痛い」


考えるのはやめた方がよさそうだ。


「なあ、人型になったら、食事とかできるのか?」

「可能です。食事によって魔力と体力の補充が可能になります」


いいぞ、それなら人型を維持しながら回復もできる。


「今、人型になったらどのくらい維持できる?」

「検討中……通常維持時間は約一日。激しい行動時には消費が早くなります」


悪くない。これなら単独行動も可能だ。


「それと、一つ気になることがあります」

「なんだ?」

「近くで魔物と交戦中の人族が確認されました」

「状態は?」

「人族側が劣勢です。このままでは魔物の餌食となるでしょう」

「……見捨てるのもなんだし、助けに行くか」

「さすがノベト様。お見事です」


俺は人型に変化し、鎧を装備。

戦闘の現場へと駆け出した。


「くっそ、話が違う! こいつ、強すぎるだろ!」

「そんなこと言ってる場合じゃない! ファイアボール!」


そこには剣を構えた若い少年と、杖を持った少女がクマ型の魔物と戦っていた。

クマ型魔物は無傷に見え、むしろ少年と少女は泥と血でボロボロだった。

明らかに危険な状態だった。


「レイナ、君だけでも逃げろ!」

「バカ言わないでよ! アイク、君を置いていけるわけないでしょ!」


ああ、若い二人の甘酸っぱいけど不器用な恋心か。

俺には縁がないがな。


「今からでも遅くありません」

「余計な助言はいい。急ぐぞ」


俺は地を蹴って、クマの魔物にドロップキックを叩き込んだ。


「グオッ!?」


俺の攻撃は不意を突いたのか、魔物は驚いて吹き飛んだ。

倒しはしなかったが、牽制にはなった。


「君たち、大丈夫か?」

「……あなたは?」


アイクという少年が警戒しながら訊いてきた。


「ノベトだ」

「た、助かりました、ノベト様……!」


レイナという少女が深く頭を下げた。


「まだ来るよ! ダークベアが来る!」

「魔物か?」

「ああ、こんな場所にいるようなやつじゃない、Dランクの魔物だ」

「Dランク、か……」


試してみるか。

ダークベアは俺のキックに怒ったのか、牙をむき出しにして殺気を放ってきた。


「テン、魔物とのテレパシー通信ってできるか?」

「不可能ではありませんが、推奨しません」

「なぜだ?」

「テレパシーは高知性体間の意思疎通手段であり、魔物には知性が不足しています」

「試すくらいならいいだろ?」

「先に警告しましたからね」


俺はダークベアにテレパシーで語りかけた。


「やあ、ダークベアさん?」


反応はない。


「こんな状況だけど、退いてくれないか?」


やはり無反応だった。

次の瞬間、ダークベアが咆哮した。


「ニク! クウ! サキ、コロス!」


「お腹が空いていたのか。ハチミツでも取ってきたら許してくれるか?」


「タノシイ! エモノ! コワシテコロス! タノシイ!」


……ダメだな、こいつ。

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