第61話
「テン、この状況をどうにかできないか?」
「ノベト様が満足しているようでしたら、このままでも問題ないかと」
テンの言葉に少し棘を感じる。
「冗談はやめろ。こっちは真剣なんだ」
「それなら“熟睡超回復”をお勧めします」
「そうだった、あれがあったな」
俺は“熟睡超回復”を使って、リアネットを眠らせた。
人型でもある程度使えるんだな。
「テン、今の俺の状態ってどんな感じだ?」
「ノベト様の人型は、すべての生命体を惑わすオーラを発しています」
「カルロスと戦ったときはそんなのなかった気がするけど?」
「魔道書内での一連の出来事で、ノベト様は“存在進化”を果たしました。その結果です」
「困るな。抑える方法はないのか?」
「提案:体を覆うこと。例:鎧」
「どこにある?」
「すぐ隣の部屋にあります」
テンの提案に従い、リアネットを壁際に安全に寝かせ、
隣の部屋にあった鎧を着込んだ。
「これで問題ないだろ?」
「誰かが鎧を無理に脱がせようとしない限り、大丈夫です」
まぁ、その程度なら大丈夫だろう。
そう思ってドアを開けた。
「うわっ! 鎧が動いてるぞ!」
「誰だあいつ! 怪しいやつだ!」
「リアネットお嬢様が気絶してる!」
「犯人はあいつだ! 捕まえろ!」
俺は慌ててその場を離れた。
「彼らに捕まれば、確実に鎧を脱がされるでしょうね」
「お前、わかってて言わなかっただろ?」
「いえ、知りませんでした」
「嘘つけ!」
俺は2階の手すりを越え、1階に転がるように着地。
「なかなか身のこなしがいいな!」
「捕まえたら、鎧も皮も剥いでやる!」
「前からその鎧、気に入らなかったんだ!」
「壊れたって報告して、スクラップにして売ってやろう!」
ペレオラ領主様、この鎧を選ぶときに他人の目も気にしてくれたらよかったのに……。
どうやら領主のセンスは少し独特だったらしい。
さて、状況を整理しよう。
俺は新しい能力を試そうとしただけ。
なのに誤解されて、今追いかけられている。
前にも似たようなことがあったような……。
まぁいい。
今やるべきことをやるだけだ。
追手をかわしながら、屋敷の壊れた場所を巡る。
「テン、俺の収納空間にある木材や石材の破片で、壊れた部分を修復できるか?」
「分析中:熟睡超回復(LV.10)の応用で可能です」
「それって、普通の回復魔法みたいに即時効果あるのか?」
えっ、熟睡超回復ってそんなにレベル上がってたの?
「たぶん、魔道書での接触によって、ノベト様の状態が大きく変化したのでしょう」
「とりあえず、やってみるぞ!」
「使用する場所に手を伸ばして、意思を込めてください」
走りながら、崩れた壁に向かって叫んだ。
「直れっ!!」
叫んだ瞬間、手の前の空間が波打った。
収納していた石材の破片が次々に飛び出し、
壊れていた壁が元通りに修復されていく。
成功だ。
収納空間のゴミを捨てるくらいなら、“熟睡超回復”で人を治すように、
物を治すことに使えないかと考えていたが、まさか本当にできるとは。
「今、鎧が壁に何かしてたぞ!」
「あれはきっと呪われた鎧だ!」




