第40話封印獣の咆哮と交錯する運命
第40話:封印獣の咆哮と交錯する運命
咆哮が、空気を裂いた。
森を震わせるその叫びは、ただの魔獣のものではない——まるで、長い時を経て積み重なった苦悶と怒りが一体となったような、魂の悲鳴だった。
「……あれが、封印獣……」
セレスが小さく呟く。彼女の声は恐怖ではなく、哀しみに満ちていた。
「セレス、下がってろ! 俺たちがやる!」
俺は剣を構え、前に出る。クロウとエリスも、それに続いた。だが、封印獣は狩人たちにすら目もくれず、まっすぐにセレスを見据えている。
「……“歌い手”に、執着してる……?」
クロウの声に、エリスが答える。
「たぶん……セレスの歌が、封印を解いたせいで、自分を閉じ込めた存在だと勘違いしてるのかもしれない」
「でも、そんなの……!」
俺は歯噛みした。セレスは何も悪くない。彼女の歌は、誰かを傷つけるためにあるわけじゃないのに。
だが——封印獣が大きく口を開いた。
次の瞬間、漆黒の魔力が奔流となって放たれる。
「エリス!」
「任せてっ!」
エリスが即座に結界を展開する。その魔力は間一髪で俺たちを守ったが、辺りの木々がなぎ倒され、地面はえぐれた。
「こんな力、正面から受けたらひとたまりもない……!」
クロウが冷静に状況を分析する。
そのときだった。セレスが、前に出た。
「……私が、歌う」
「なに言ってんだ、セレス! 危険すぎる!」
「でも……あの子、苦しんでる。きっと、封印されて、ずっと孤独だった。私、わかるから」
彼女の声は震えていた。でも、その瞳はまっすぐで——俺は何も言い返せなかった。
セレスがそっと目を閉じ、歌を口ずさむ。
その旋律は、悲しみを優しく包むように森を満たしていく。
——封印獣の動きが、止まった。
狂気に満ちていた瞳に、一瞬だけ、曇り空に光が差すような色が宿る。
「……届いてる……?」
だが、そのとき——狩人の一人が動いた。
「チッ、厄介なことを……!」
セレスに向けて放たれた暗器。それに気づいた俺は、即座に体を飛ばす。
「セレス!!」
そして、次の瞬間——
俺の視界は、真っ白に染まった。
---
次回:「白の深淵と目覚めの予兆」




